1話 クライマックス・ガール 前半
「うーん・・・」
意識を失っていた真世が目を覚ますと、そこは見果てぬ荒野であった。真世は、荒れた大地の上で一人で倒れていた。
「あれ?圭衣ちゃんがいない?おーい」
ともに謎の光に巻き込まれたはずの後輩の姿が見当たらず、見知らぬ土地に放り出され、更には夜を迎えようとしていた。そんな状況で不安に駆られない訳が無かった。
「ふぇ・・・ここ、どこなの?どっちに向かえば誰かいるの?」
涙声になりながらも、真世は誰か人と出会うため歩きだしたのだった。
太陽が沈み、月が綺麗に見える夜。真世はせめて固くない地面で眠りたかったが、辺りには草すら生えておらず、荒れ果てた大地が続くのみであった。灯りも食料も持たず疲れ果てた少女は、諦めてひとまず夜を越そうとどこか眠れそうな場所を探していた。ふと耳を澄ますと、どこからともなく動物の鳴き声が聞こえてくる。
「グルル・・・」
「近くに何かいるの?」
生まれてから長らく平和な世界で過ごしていた彼女は、野良犬程度のものが近くにいるのかと思い、あたりを見回した。すると、それらはすぐに見つかった。
「ええ?」
真世は思わず驚きの声を上げてしまう。人より一回り大きい、狼のような頭部を持つ獣人の群れに囲まれていたのだ。彼らは、自分たちの領域に入り込んだ見知らぬ存在に警戒していた。そうとも知らない真世は対話できないか試みるため、彼らのうち一匹に近づく。うなりながら睨みつけてくる獣人に対して真世は話しかける。
「ねえ」
「・・・」
「あの」
「・・・グルル・・・」
「聞こえてますか?」
「・・・」
「ねえってば!」
心身ともに参っていた真世が大きな声を上げてしまうと同時に、獣人は真世を掴み、群れの中央へと放り投げた。獣人のパワーに、勢いよく転がされてしまう。
「いったた・・・」
腰を抑えながら立ち上がる彼女に、近づく獣人たち。その目は、血に飢えていた。
「え・・・?」
獣人達が遠吠えを上げ始める。群れの中でも最も大きな一匹が、爪を振りかざしながら真世に近づいてくる。
「ええっと、どういうことなのかな・・・?」
立ち上がった真世の目の前まで来たその獣人は、ニヤリと口角を上げ、爪を振り下ろす。
「キャアアアアア!」
「オルァあああああ!」
その瞬間、ボゴォ、と、鈍い音が荒野に鳴り響く。
「え・・・?」
「大丈夫かい、お嬢ちゃん」
バイクにまたがった金髪ロングの少女が、尻もちをついた真世に手を差し伸べて、ニコリと微笑んだ。