第二話
体長は3mほどでしょうか。ハーブはイルカに詳しくありません。良く見るタイプのイルカ、バンドウイルカじゃないかと勝手に判断しました。
イルカは、小太郎と名乗りました。
「コタロウ、小さいに、太い、一郎、次郎の郎で、小太郎だよ。よろしく。アンタの名前は?」
小太郎と名乗ったイルカは、どうやら漢字にも精通しているようです。
「あ、オレはハーブ、ハーブだ」
「ハーブハーブ?変な名前だな」
「いや、ハーブだって。ベタな間違いをするんじゃない。いやいや、違うぞ。問題はそこじゃない。オレは今、夢でも見ているのか?それともここはあの世か?」
「ああ、ハーブね。スマンね、間違えて。
夢じゃないよ。それにあの世でもないよ。ここは地球の上には違いないよ。オレの見たところ太陽も同じだし、月も上がってた。星も見てみたけど、ちゃんと北斗七星があったぞ」
「いやいや。地球のイルカは葉巻を吸ったりしないし、空を飛んだりしない。それに、しゃべったりもしない。違うか?」
「それは認めよう。ただひとつ訂正するとな、オレはしゃべっている訳じゃない。精神感応、いわゆるテレパシーってヤツさ」
「テレパシー?そんなアホな」
「信じる信じないはアンタの自由だけどな。じゃあ、オレがここにいるのはどう説明する気だ?アンタが言った通り、葉巻を吸ったり、空を飛んだりするイルカがいるんだぜ。テレパシーぐらい信じろよ」
「オレの夢。もしくは妄想」
ハーブは断言しました。
小太郎は黙ってハーブに近づくと、いきなり彼を尻尾ではたきました。
「ズェッ!」
変な声を上げてハーブは転がり、呻き声を上げました。
「な、夢じゃないだろう?」
「他にやりようはないのかよぉ!」
ハーブは激しく文句を言いました。しかし、どうやら小太郎と名乗るイルカが彼の夢でも妄想でもないことは理解しました。
「判った。とりあえずお前のことは信じよう。コタ」
「急に馴れ馴れしくなったな」
「オレのことも馴れ馴れしく呼んでくれていいぜ、コタ。まぁそれはそれとしてだ。何があったか教えてくれんだろ?」
「驚くなよ」
「何を今更」
「海とな」
「うん」
「陸がな」
「うんうん」
「ひっくり返ったのさ」