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魔界への誘い

「蓮くん、わたしと付き合ってください」


バイトも終わり、帰路につこうと思っていた時、俺はあの由奈ちゃんから告白された。由奈ちゃんは背こそは低いものの、その愛嬌のある性格とルックスから周りからの人気はとても高い。


「も、もちろん。こちらこそよろしく」


「やったー!じゃあ蓮くん一緒にホテルいこ!」


え?そういうのには順序ってものがあるんじゃ?でも...由奈ちゃんとのせっかくのチャンスを逃したくない!


「よし!じゃあ行こうか...」




うほほほほほ。うほほほほほ。

俺の目覚ましの音が聞こえた。そうだよな。なんだかおかしいと思った。いや、目覚ましの音じゃなくて、夢だったということだぞ。


「そもそも俺があの由奈ちゃんに告白されるわけないか。」


由奈ちゃんはバイト先の超可愛い大学生。俺、神谷 蓮 〔かみや れん〕は彼女いない歴=年齢の28歳。フリーターだ。あまりにも俺と彼女は釣り合わない。俺は一言で表せば「地味」だ。寝癖こそないものの、整髪料もつけずに整えられていない髪型。身長は背の高い女性とどんぐりの背比べのようなもの。職もないのだから、もちろんお金もない。そんな俺がどうしてモテようか。


「そこのおにいさん。おにいさん。」


どこかから可愛い声が聞こえる。きっと幻聴だろうな。俺も末期だ。多分死を予兆するものか何かだろう。ありがとう。1話で速攻で死ぬ主人公として名を残してくるよ。


「だからおにいさんってば。」


やっぱあんな目覚まし買った時点で耳がおかしかったんだ。早く気付けばよかった。


「あー。もうめんどくさいな。ファイア」


なんだか背中が熱いよ。俺死ぬのかな。もう寝起きから未知数のことが起こりすぎて到底状況が処理できやしない。


「て?ん?ガチで背中が燃えてる!!ちょ、水、水」


俺は慌てて立って水場に行こうとした。すると、ドアの前に30センチほどの可愛らしい生き物がいた。金髪で肩までかかる程度の長さの髪。長いまつげに可愛らしく大きな黒目のある目。まるでお人形のようだ。


「おにいさん?わたしサキュバスのミーナともうすっちゃ!」


サキュバス?あーそうか。ついに俺の頭もいかれたか。もう燃え尽きて死にそうだし。うん。死んだらおれのこと悲しんでくれるやつなんているのかな?あー。うん。いたね。いっつも餌あげてた野良猫は悲しむだろうよ。餌もらえなくなるから。


「おにいさん!なに死を覚悟してるんだっちゃ。火は今消すっちゃ。


そういうとミーナの指からは水が勢いよく出てきた。


「え...。本当にそんなことできるのかよ。」


ミーナは得意げな顔をして答えた。


「当然だっちゃ。これで信じてもらえたっちゃ?」


正直信じられないことの連続すぎる...当然返事などしていないのだが、それでも構わずミーナは話を続けた。


「おにいさんの名前は神谷蓮だっちゃね?そんな蓮にいいお知らせがあるっちゃ。」


俺は頭の中が真っ白であったため、おぼろげな返事しかできなかった。


「うん...?」


「蓮に可愛い女の子を紹介するっちゃ。」


ん、まてよ。こんな不思議なことを起こせるやつだ。本当に紹介してくれるような気がする。とてつもなく彼女が欲しいし、周りが羨ましい。


「本当か?紹介してくれよ!」


ミーナは嬉しそうに微笑み、そしてこういった


「なら、魔界にくるっちゃ!魔界には可愛い子がいっぱいいるっちゃ!そして、みんな男に飢えてるっちゃ。」


なんでも魔界にはそりゃthe魔物の様な容姿の気持ち悪い男が多いという。だから人間の容姿は人気があるらしい。


「どうするっちゃ?いくっちゃ?」


蓮は思った。女の子と戯れたいと...。


「よし!魔界に行くっちゃよー!とりあえず魔界の入り口に行くっちゃ。転送魔法を使うっちゃよ!それ!」




「ここが魔界っちゃ。」


ついた先の魔界にはいわゆる建物というものが1つもなかった。それだけではなく、異常に空気がもやもやとしている。まさに魔界というような目に痛いようなものがないのはいいが、逆に何もなさすぎる。


「随分と殺風景だな。」




「そうなんだっちゃ。実は昔の魔界は文明も栄えて、建物もちゃんとあったんだっちゃ。でも魔王の力が弱まって、魔界がバラバラになったから文明が崩壊したんだっちゃ。」


意外と重い話だな、それにめんどくさそうだ。


「それで、蓮を連れてきたのには彼女紹介以外にももう1つ理由があるっちゃ。」


ほら、いかにもめんどくさそうな出だし。


「それってめんどくさいことじゃないだろうな?」


やけにミーナはニヤニヤしている。嫌な予感しかしない。


「蓮には魔王になって欲しいんだっちゃ!」


その言葉を理解するまでに30秒を要した。いや、それでも理解ができなかった。正直今までの話が夢だと思い、頬をつねってみたが痛かった。


「は...?」


ミーナは困った様な顔を全力で演じて言う。それはもう、オーバーすぎるほど。


「魔王の権力が弱まった今、このままじゃ魔界の秩序が崩壊してしまうっちゃ。しかし、次期魔王予定者だった王子はどこかへ逃げ出してしまったっちゃ。まぁ、それだけが理由じゃないんだけど...」


ああ。そういうことね。おおかたの事をその言葉で理解したよ。


「まさか...。 そいつの代わりに俺を魔王にするってことか...?」


ミーナは満面の笑みでこちらを見て答えた。


「そういうことだっちゃ。ちなみにわたしの力がないと、現実世界に帰れないから、拒否権はないっちゃ。」


なんと強引な。というかなんでわざわざ俺がならなくちゃいけないんだ?



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