金髪美女登場!!
梅雨の時期は嫌ですね・・・。
湿気に悩まされる(あと洗濯物)今日この頃です。
「3人でこうやってお茶を飲むのも久しぶりね。とても嬉しいわ。ティファナはたまに顔を出してくれるのに、エリオットは全く顔を出さないし・・・。」
「私もこのように過ごすことが出来て幸せですわ」
「まぁ、本当に可愛いわね。今すぐにでも娘にしちゃいたいくらいだわ」
「ありがとうございます。そのように言っていただけると私もとても嬉しいです。」
「・・・・」
目の前ではお茶を片手に和やかに会話をする美女と美少女。一人はもちろん俺の婚約者のティファナ、そしてもう一人は・・・。
俺と同じ金髪を緩やかに巻き上げ、コバルトブルーの瞳は俺よりは薄いが、まるで澄み渡った青空のような柔らかい色をしている。子供を2人も産んだとはとても思えない若々しい容姿の美女。
想像の通り俺の今の母親。つまり、この国の王妃だ。
そして、ここは王妃の私室。ここには俺とティファナ、そして部屋の主である王妃しかいない。
ことの始まりはなんてことのない母からの誘い。さっき言っていたように俺はほとんど城に帰ることはなく学園に滞在している。
王子の立場とはいえやることだってないわけじゃない。けれど、そういったことはジャックなどに持ってこさせ、学園で行っていた。
半年近くそんなことをしていれば、国王の父親はともかく子供二人をとても愛している母親からしてみれば、半年もほとんど会わないなんて・・・と寂しかったらしい。
そう半年・・・
本当に色々あった・・・。
サフィールのあのイベントの後、俺だったりアデルだったりルイだったりと次々とイベントが起きた。いや、正しくはイベントは起きたがゲームでいうところの好感度が上がることはなかった。
例えば留学生ルイ。
彼は隣国の王子なわけだけど、それを知るのは極少数。
ここより南に位置する国は常に常夏で、ほとんどの者が日に焼けた肌をしている。
ルイも例に漏れず肌は程よく日に焼け、白い髪にエメラルドの瞳も相まってエキゾチックな雰囲気を醸し出している。性格も穏やかだから、男女共に人気がある。
そんなルイのイベントで彼の正体がヒロインにバレるというものがある。もちろんそこに至るまでに他のイベントを起こし、好感度を上げていかなければいけないのだが、何故かルイだけではなく他のイベント含めバンバンイベントが起こった。
イベントが起こった結果は・・・まぁ、そうなるよなって感じ。
好感度が高いからこそ許されることも、好意的に捉えられることもあるわけだが、その好感度が高くない時点でゲームと同じようにイベントが進むわけがないのだ。
ルイのイベントだって、隣国の使者とルイが密会している所にヒロインが通りかかり話を聞いて隣国の王子であることがバレる。
ゲームだったら、あなたが周りに言いふらすような方でないことは知っているとか、この事は内緒ですよと言って口元に指を当て微笑むとかあるのだが・・・。
実際は・・・
「もしかして、王子なんですか?」
と聞くマナミに対し、ルイは一瞬見定めるようにマナミを見た後、いつもの微笑みを浮かべてマナミに近づいていく。
「もしそうなら、なんですか?」
「えっ?」
マナミは困惑気味にルイを見るがルイは変わらずその顔に微笑みを浮かべている。
「異世界から来たというあなたには関係のないことです。この国に保護されている身ですから、全くの無関係とは言いきれないかもしれませんが。それとしても、あなた自身には関係ないことですよね」
「あ、えっと」
そこで、関係あります!なんて言えるはずもなく、ただ困惑するマナミに対しルイは変わらずの笑みを浮かべている。
「それでは、これで失礼します」
そう言って去ろうとするルイになんとか引き留めようと考えている様子で「あの」「えっと」を繰り返すマナミ。
「あぁ、そうだ」
マナミの横を通りすぎようとしたルイはわざとらしく、思うが思い出したと言うように立ち止まり声に出す。そんなルイに違和感を感じる様子もないマナミはただ、声を懸けられたことに嬉々として返事をしている。
「僕のこと周りに言いふらすようなことはしないでくださいね。あなたの言葉を鵜呑みにするような人は多くはないと思いますが、面倒なことになれば」
そこでルイは言葉を区切り、先程の笑みをマナミに向ける。
「国と国の問題になりかねませんよ。そうなれば、あなたは元凶としてどうなってしまうか。・・・わかりませんよ?」
「は、はい!」
ようやく自分が危ない立場になってしまっていることに気づいたのか、慌てて返事をするマナミに対し満足そうに頷いて今度こそルイは去っていった。
いや、あれは焦ったなぁ。
あの場面で俺が出ていくのも、面倒なことになりそうだったし。
なんとかマナミが、あの状況を少しでも分かってくれたから良かったものの。冷や汗ものだった。
だが、少し安堵したこともある。既に半年も経っているが、俺も含め誰一人好感度が上がってないという事実。つまり、ここまでくれば誰かと結ばれることはほぼ限りなくゼロに近い。
それでも気は抜けない。
好感度が上がってなくてもイベントは起こる。そのことで一度はティファナが不安に感じさせてしまうことがあった。
もちろんすぐに気がつき、そんなことはないと言葉で態度で示し事なきを得た。
俺がこの半年のことを振り返っていると、ティファナのダンスのレッスンの時間になったらしい。ティファナが少し残念そうに俺や母を見た。
「名残惜しいですが、そろそろ行かなくては。それでは王妃様、殿下失礼いたしますわ」
完璧な淑女の礼を取り、部屋を出ていくティファナを見送ると、母からの視線を感じる。
俺がそちらを向くと視線が合い、母はニッコリと美しい笑みを浮かべる。俺は分からず首を傾げるが、母は変わらずニコニコと笑みを浮かべて俺を見ている。
「どうしたんですか?」
「あなたたちは、本当に仲の良い二人だと嬉しくなっただけよ」
目の前の母もこの場にはいない父も俺の婚約者であるティファナをとても気に入っている。
自分の両親と婚約者が仲が良いことは純粋に嬉しい。
マナミという存在もいるが、このままいけば特に問題なく学園を卒業できるだろう。
卒業さえしてしまえば、マナミは国の中に住まいを与えられ城ではない場所で暮らすことになる。定期的には城に顔を出すことにはなるだろうが、それでも今のように会うこともなくなるだろう。
そう思うと後半年の我慢だと頑張ることも出来る。最近はジャックにマナミの行動を見張らせ、何かあれば伝えるように言ってあるし、教師も後半年と最近では更に力を入れている。特にマナーやこの世界の一般教養の教師は。
そんなことを考えながらお茶を飲んでいると「ところで」と、それまでニコニコとしていた母が少し笑みを押さえて声を掛けてくる。
「あの子、マナミ・・・といったかしら?は、どんな様子なのかしら?」
?何故、母がそんなことを聞くのだろう。学園での様子は教師など学園関係者から報告は受けているはずだが・・・。
とりあえず、本人の様子を伝える。
「頑張っていますよ。ただこちらの貴族社会や礼儀、作法については理解が遅いようですね」
「そういうことではなくて、友人関係などの人間関係はどうなのかしら?」
「・・・良好ではないですか。見た感じ友人と呼べる人も出来たようですし」
「恋人などは出来たのかしら?」
先程からなんだろう?
今まで母に感じなかった違和感を感じる。半年も会っていないからだろうか?
それにしては、マナミに関することだけだし・・・。
俺は恋人はいないようだと伝えると、母は何故か安堵した様子に見えた。
まさか・・・ね。でも、もしかして??
俺は賭けに出た。
「母上・・・転生って知っていますか?」
俺がそう言うと母は、目を見張って驚いた顔をする。
「え・・・まさか・・・?」
やっぱりだ!!
俺は母の言葉に確信を得た。
母は、この国の王妃は俺と同じ転生者だ!
ゲームでは顔も名前も出てこないキャラです。
第三者視点も好きなのでいつか書きたい・・・。