お前のイベントじゃねーの?!
お久しぶりです。
ブックマーク沢山つけていただいて、驚いています!!
ありがとうございます(*^^*)
俺は今、とても混乱している。
俺はどこ?ここは誰?状態。
いや、マジでなんなの??
俺の目の前には理解不能な光景があった。
場所は学園内にある図書室、宰相の息子で俺の友人の一人であるサフィールがここにいるのも可笑しくはない。なんせあいつは暇さえあれば図書室に来ては時間ぎりぎりまで本を読んでいる。いわゆる本の虫だ。
そう、可笑しくはないんだ。
ただ、サフィールの隣にヒロインのマナミがいること以外は・・・。
あっれー?
お前、俺かジャックルートに進むんじゃねぇの??
なんで、サフィールの隣に座ってんだよ。
んでもって、なんでサフィールはマナミになんか勉強教えてんの??
別に勉強教えること自体は可笑しくはない。
あいつは銀の髪に琥珀の瞳、ほとんど笑うこともないような一見冷たそうに見えるけど、本当は面倒見がいいってことは俺がよく知っている。知っているけど、なんで今?
校内での学術のテストが後数日で行われる。だから、俺も調べ物をするにも最適な図書室に来たわけだし、2人がテスト勉強の為、ここにいるのも可笑しくはない。
可笑しくはないんだ。ただ・・・。
一瞬サフィールのイベントっぽく感じてしまっただけ。
定番と言えば定番のイベント。しかも攻略者の中で特に知識力が高いのがサフィールだから、なんら可笑しくはない。
あ、俺、何回「可笑しくはない」って否定してんだろ・・・。
でも、否定したくもなるわっ!
俺かジャックルートに入ったマナミの動きに注意しつつも、ある程度いつイベントが起きるかは分かっていた為、他の人間の動きまで細かく見ていなかった。だから、サフィールがマナミに勉強を教えるほど仲良くなっていたなんて知らなかった。
いやいやいや、だからってありえないだろ。俺のイベントがあった後にサフィールのイベントとか・・・・・・・・・・・・・
あ、もしかして俺のイベントカウントされてない?
も、もしそうなら、マナミは俺もしくはジャックルートを諦めてサフィールルートに行ったってことかーーー!?
待て待てまだサフィールルートとは言い切れ「サフィール様の髪、優しい色をしていますね」・・・イベントきたぁぁぁあああ!!
「・・・」
サフィールは少し驚いた表情でマナミを見ている。
イベント通りに進むなら、普段冷たいと言われるサフィールが会って間もない少女に優しいという自分には不似合いな言葉を言われ驚き、その後「あなたは不思議な人ですね」と微笑みと流し目でヒロインを見る。それがスチルとなっていたはず。
まだ、二人とも俺には気がついていないようだが、とりあえず割り込もう。
「あなたは「サフィール何をしてるんだ」
って、アホか!どう見ても勉強してるとしか見えないだろ。
「え、エリオット様!」
マナミは驚いた様子で俺を見てくるが、サフィールは少し呆れた表情で俺に視線を向けている。
「何と言われてもマナミさんに勉強を教えていたのですが」
「そ、そうか。」
・・・はい、そうですよね。
とりあえずで、割り込んでしまった為、この後に続く言葉がすぐに出てこない。
頑張れ俺!王子として養ってきた知識をフル回転させろ!!
「あ、良かったらエリオット様も一緒に勉強しませんか?」
「・・・そうだな。・・・隣に座っても良いか?」
「えぇ!是非」
まさかマナミにフォロー(?)されるとは。しかも俺が立っているのがマナミ側だったことと、サフィールが窓際に座っていた為、マナミの隣に座る形になってしまった。
マナミは嬉しいのか笑顔で返事をした後もずっとにこにこと上機嫌だ。
だが、これで邪魔することは出来た。結果オーライということだろう。
ふぅと俺が心の中で一息ついていると、「あ」と隣で声がする。
「そういえば、先ほどサフィール様は何か言いかけていませんでした?」
・・・・忘れてなかったのか。どうするか、ここで遮るのも不自然すぎるし。
全然結果オーライじゃなかった。
「あぁ、あなたは」
そう考えている間にサフィールが話し出してしまう。
まずい!あぁ、もうこうなったら、言った後に別の方向に持っていくか!?
「ちゃんと人の話を聞いているんですか?」
「え?」
「は?」
サフィールの言葉に俺とマナミはほぼ同時に声を出す。間抜けな顔でもしていたのか、それとも本当に呆れているのかサフィールはため息にも似た息をつき、もう一度口を開く。
「ですから、人の話を聞いていたのかと言ったのです。あなたが、授業だけでは分からないことが多いからと言ってきたから、わざわざ図書室まで来て勉強しているというのに、あなたは私が話していたことよりも私の髪なんかを見ていたのですか?そもそもきちんと教師の話を聞いているんですか?基礎さえなっていないとは。普段から集中出来てないんじゃないですか。今も勉強に集中できないというのであれば、私がここにいる意味もありませんね。あぁ、殿下も隣にいては集中できないのでは?でしたら、どうか別の場所で勉強なさった方が良いですよ」
そこまで一息で話すサフィールにマナミはポカンとした表情でただただサフィールを見ている。俺は初めは呆気にとられていたが、途中からサフィールがそういえば毒舌で、不真面目なやつには特に厳しかったことを思い出した。
ってか、あれ?これお前のイベントじゃねーの?!
マナミは未だ訳が分からないという顔をしていたが、サフィールが席を立とうとしたのを見て慌てて止めに入る。
「あの!すみません!ちょっと余所見してたのは、謝ります!だから、勉強は教えて下さい!!」
「・・・」
サフィールはマナミの顔を見て溜め息をついた後、浮かしかけた腰をもう一度下ろす。
それにホッとした様子のマナミだが、次の瞬間再度固まることになる。
「次はありませんよ。・・・あぁ、それとこれだけ私の時間を使ったのですから、今度のテストで無様な点数を取ることはないでしょうね」
最後に微笑みながら言うサフィールは確かに窓際を背にしてこちらを見ているスチルと同じポーズだった。
・・・だが、その場の気温が数度下がった気がしたのは俺だけではなかったはず。
その証拠に運悪く通りかかった生徒が、その微笑みを見て「ヒッ」と短い悲鳴を上げたのを聞いた。
マナミはどこまで分かっているかはわからないが、その後余所見をすることもなく黙々と勉強していた。
テストの結果は俺たちはいつも通り。
一番成績が良いのがサフィール、次いで俺、ティファナ…と続いていく。
マナミは…とりあえず最下位ではなかったとだけ言っておく。
毒舌ってなんでしょう…。
難しいです(/_;)