イベントは全力で防ぎます!フラグは立つ前に潰します!
突発で書き始めたので、終わりが見えません・・・。
ついでに書きたいこともまとめきれません。
「そこまで!」
教師の声で俺は身構えていた姿勢を戻し、持っていた剣も下ろす。
同じように目の前にいる黒髪の男アデルも同様に剣を下ろす。アデルの赤い瞳と目が合うとお互いに口元に笑みを作る。
「さすが殿下ですね。あと少しあれば俺が負けていましたよ」
「そんなことはないさ。アデルの力強さには今も手が痺れているよ」
お互いが笑ってそんな話しをしていると、近くにいたティファナが近寄ってくる。
「殿下、華麗な剣捌きさすがでございましたわ。」
ティファナは口元に笑みを浮かべながら、話しかけてくる。俺は口元がにやけそうになるのを押さえながらありがとうと返事をする。
「アデル様も力強く的確な動きでしたわ」
ティファナはアデルにも声を掛ける。アデルも丁寧に返事を返す。
ここは学園の訓練所ともいえる場所。今は剣術の時間の為、俺たちの他にも多くの男子生徒がここにはおり、周りでは俺やアデルと同じように2組で練習用の刃を潰した剣を交えている。
女子生徒はほとんどいない。希望すれば受けることもできるが、そもそも貴族の女性が進んで剣術を習うことはない。ここにいる女性の大半は、家柄として最低限必要な剣術を習うという理由で授業を受けている。もちろん例外もある。
ティファナは王族に嫁ぐにあたり必要な為、剣術を習っている。
王族なんてものは、裏を覗けばそりゃ口では言えないことがほとんどで、もちろんその為の騎士や護衛もいるが、最後は自分頼りだ。その為、最低限自分の身は守れるようにと剣術の授業にも参加している。
拒否することも出来るが、ティファナは俺の足手まといにならないようにと進んで授業に参加している。本当に最高の婚約者だよ。
そして、もう一人の例外が・・・。
「エリオット様もアデル様も格好良かったです!」
そう、ヒロインのマナミだ。
俺は嫌な感情を顔に出さずに、とりあえず返事をする。アデルは騎士らしく丁寧に返事を返している。
俺たちが終わったので、次はティファナとマナミの番だ。二人は剣を持って先ほどまで俺とアデルがいた場所まで移動する。
そして、教師の掛け声と共に二人が動き出す。ティファナはさすが美しい剣捌きだった。まるでダンスでも踊っているかのように動きは軽やかで、しかししっかりと剣を持ち相手を見据える様は覚悟の表れが見られる。
兄よりは少し明るめの青い長い髪が動きに合わせて動き、紫の瞳は日の光を受けて時折アメジストのように輝き、むしろティファナ自体が宝石のように輝いていた。婚約者としての欲目だけではない。
いや、ちょっと宝石は言い過ぎかもしれないけど。
それでも惚れ直してしまうくらい俺にはティファナは美しく見えた。
対するマナミは動きがぎこちなく、なんとか剣を振っている。そりゃ剣なんて縁のない世界で生きてきた者がすぐに使いこなせるわけはなく、当たり前といえば当たり前の結果だ。
それから数回剣を交えるとマナミの手から剣が滑り落ち、そのまま膝から崩れる。
勝負ありだな。
マナミが肩で息をしているのに比べ、ティファナは息一つ乱れてはいない。剣を下ろすとマナミに対し『何も言わず』礼だけをして、そして俺を見てニコっと微笑みを向けこちらに歩いてくる。
さっきまでの凜々しいティファナも綺麗だけど、今の笑顔もマジ可愛い!
そのまま俺の腕の中に飛びついてくれたら思う存分抱きしめられるのにっ!
ティファナがそんなことをしないと分かっていても、想像するくらいは許してほしい。
俺はティファナに対して笑い返すように笑顔を向ける。だがその笑みに別の意味も含まれていることに、俺以外は気がつかないだろう。
ちらっと視線をティファナの後ろに向けると、マナミはまだ膝を着き下を向いたままだった。
あぁ、残念だったね。
そこで待っていても、ティファナは君に言葉を掛けないし、俺も君の所にはいかないよ。
ティファナに対し「お疲れ様」と声を掛けると、その声が聞こえたのかは分からないがバッと勢いよくマナミが顔を上げる。上げた顔は嬉しそうだったが、次の瞬間には間抜けな表情をして何が起こったか分からないようだった。すぐに周りを見回し、俺をアデルやティファナの近くで見つけると驚愕の表情になる。
俺は気づかれないようにマナミを視界の端で見ながら、ティファナやアデルと話す。すると、何を思ったのかマナミが一瞬下を向いたかと思えば、立ち上がりこちらに向かってくる。
おいおいおい、何する気だよ。
イベントは起きない。お前が何をしてもな。
つーか、ティファナが何も言ってないんだから、起きるわけないだろ。
もちろんこれもイベントの一つ。
本来はティファナとヒロインが対峙して、剣で負ける。ここまでは先ほどの流れと一緒。でも違うのはゲームだと負けたヒロインに対し、ティファナがヒロインの普段の行動について忠告をする。それに対してヒロインは負けた悔しさと合わさって泣きそうになる。そこで俺ことエリオットが様子がおかしいことに気がつき、ヒロインの傍に行き声を掛けまだ近くにいたティファナに対して厳しいことを言うな的なことを言って、ヒロインを庇うものだった。その後はヒロインを連れて落ち着くまで一緒にいるという流れだ。
ティファナには俺から話しをしているし、現に作法の教師からも注意していることを知っているので、何も言わない。もちろん俺がヒロインに近づく理由もない。
しかもこれで確定したことがある。
マナミは「エリオットルート」又は「ジャックルート」に入ったんだってこと。
本来はエリオットルートなんだけど、隠しキャラのジャックルートに行きたい場合だと途中までエリオットルートが入ってくる。
気がつくとマナミが俺たちの前まで来て足を止める。いつの間にか涙目だ。
「あの!わ、私、確かにまだこの世界に来て、慣れないことも多いですし、勉強不足な部分も多いと思いますけど、でも、でも、私、頑張りますから!だから・・・」
そう言って俯いてしまうマナミ。
え、何したいの?
俺はもちろん、ティファナもアデルもきょとんとしている。当の本人は「だから」「あの」と繰り返している。
続きねぇーのかよっ!!
っと突っ込みたいのはやまやまだが、このままでは埒があかない為、俺はため息をつきたいのをぐっと我慢して口を開く。
「マナミ」
「っはい!」
いや、なんか期待に満ちた目で見られても・・・。
「お疲れ様。慣れないことも練習していけば、なんとかなるだろう。そろそろ授業も終了のようだし、疲れたなら休んでおけ」
「・・・え。・・・・あ、はい」
俺の定例文のような言葉に、初め何を言われたのか理解出来ない様子だったが、とりあえず返事をしなければと思ったのか返事をしてくるが、今だ状況の理解が出来ていないようだ。
げー、俺かジャックかぁ。
最悪だ。
いや、逆に阻止しやすいのか?
そうだな、そういうことだよな!
何事もポジティブに考えよう!
都合良く教師が授業の終了を伝えている。
俺がそんなことを考えているとは夢にも思わないだろう友人と婚約者を促し、次の授業へと向かった。
そして思った。
ゲームでは純情だとか言われてたけど・・・ヒロインあれ狙ってやってるよな。
ヒロインに対して更に好感度が下がった今日この頃。
そういえば、ティファナの描写がなかったことに気がつき、今回加えてみました。