第十三使徒
目の前にはシスターの衣装を纏った絶世の美女が微笑んでいる。
背筋が凍るような恐怖が僕を包み込む。
「凄いな。あんたは本物だな」
「本物?どういう意味かしら?」
「あんたは何の能力者なんだ?あんたの前にいるだけでスゲー恐いよ」
本物の災害級能力者が目の前にいる。
「ふふふ。あなたには私の力が分かるのかしら?この神の力が」
「神の力?」
「ええ。私は神から人を救う力を授かったのです。あなたにも救いが必要なようですが?」
シスターはニッコリと笑う。
それと同時に目映い光が僕を包む込む。
「なるほどな。精神汚染型の能力か……」
一瞬だけ目映い光を浴びて、急いで離脱する。
「どうして神の威光が届かないのですか?」
シスターは驚いた顔をしているが、余裕をなくした様子はない。
「精神汚染型なんだろ?精神を犯される奴は弱い奴だ。俺は強くなりたい。だからあんたの精神汚染に逆らえばいい」
「そう簡単な話ではないのですが」
シスターは困った子供を見るように僕を見ていた。
「ふふふ。あなたは大分悪い子なのね。いいでしょう。あなたは私が救います。イノセント教団第十三位使徒である。このマリア・アリステルによって」
「仰々しい名乗りをどうも。俺は骸骨の仮面をつけた能力者それでいい」
「骸骨とはある意味悪魔。神の使徒である私とあなたは巡り合うべくして会ってしまったかもしれないですね」
マリアは先ほどまでの目映い光ではなく。
光の刃が無数にマリアの周りに浮かび上がる。
「あなたが悪いのですよ。私の救いを受けないから、痛みをおって知りなさい」
光の刃が僕に向かって飛んでくる。
走りながら光の刃を避けていく。
「素早いのね。でもこれならどうかしら」
光の柱が地面から立ち上がり高熱の光が放出される。
柱は徐々に僕を追い込むように範囲を狭める。
「高熱を柱のようにして、道を塞ぐか」
三つの能力を見せてもらって能力の検討はついてきた。
「触れれば一瞬で溶けますよ」
マリアは高みの見物をするように光を操る。
「まだ方法はあるけどな」
僕は地面に拳を叩きつけ、コンクリートを砕いて光の柱に投げつける。
光の柱にコンクリートがぶつかった瞬間、一瞬にしてコンクリートが溶ける。
「そんなもので防げるとでも?」
「さぁやってみないとわからないだろ」
僕は強く拳を地面に叩きつける。
コンクリートは砂のように粉々に砕け散り、光の柱を吹き飛ばす。
巻き上がる砂で一時的に吹き飛んだ光の間を走りぬける。
「なんという力技で」
「それでも神の力に対抗できたようだ」
あと一歩で拳が届く距離まで近づいていた。
「どうするんだい。俺の拳はこのままでも届くぜ」
「そうですね。でもあなたでは私を救えない」
「やってみることにするよ」
腰の高さで拳を構える。
居合いを放つようにタメをつくって拳を突き出す。
「確かに強い。でもそれだけ」
拳が届くよりも前にマリアと僕の間に光の壁が生み出される。
「ホーリーシールド」
高熱は感じない。
しかし、僕の拳で砕けるイメージをもてない。
「終わりにしましょう」
僕の拳を受け止めたマリアは、断罪の一撃を繰り出す。
「ジャッジメントホーリー」
マリアを中心とした高熱の光が爆発する。
咄嗟に後ろに跳びながら攻撃を回避しようとするが、光はあっという間に僕を包み込み全てを無に帰す。
「あらあら。次から次へと」
光に追いつかれたはずだった。
しかし、僕は誰かに抱きかかえられて、意識を失った……
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