風使い
あとはポケットから手を出した。
「そろそろ本当の能力者の戦いってやつを教えてやるよ。坊や」
青柳の掌に空気が集まる。
まるで小さな渦巻きが青柳の掌で作られるように風が巻き上がり、風は青柳自信を包み込む。
「ははは。どうだい坊や。俺は風使い。お前の攻撃は俺には届かない」
先ほどクッションのような感触だったのは風の固まり殴ったということらしい。
「そういうことですか」
僕は種明かしに少しがっかりする。
もっと凄い能力者を求めていたのに……
「では、始めましょうか」
「ほう。能力を聞いても退く気はないか……お前本当に面白いな。どうだうちに来ないか?」
「お誘いありがとうございます。ですが、あなたの器では僕を扱いきれません」
「はっ。言うね」
青柳は腕を振る。
風は刃物のように空気を切り裂き、僕に迫る。
「鎌鼬ですか……」
「そうだ。攻撃は遠くから、近づかれても防御は風の壁がある。どうだ俺こそが最強だ」
青柳の発言に僕は溜息を吐きたくなる。
「単なる旋風に何を喜ぶのか……」
僕は迫る鎌鼬を避けずに歩き始める。
「おいおい。自殺志願者か」
鎌鼬が僕にぶつかる。体に切り傷はつくが予想通り対して痛くない。
「本当に自殺志願者か?体が切り取られて行っちまうぞ」
「それぐらい凄い攻撃を期待しますよ」
正面までたどり着いた僕はゆっくりと腕を振り上げる。
「だから効かねェって」
青柳は風を纏う。
「無駄はどっちでしょうね」
ゆっくりと振り上げた拳を勢いよく振り下ろす。
風を切り裂き、全てを吹き飛ばす拳は風の壁を突き抜ける。
「なにっ!」
青柳の腹に僕の拳が突き刺さる。
「スゴイですね。風の壁を完全には破壊できませんでした」
蹲る青柳に感心したことを伝える。
「お前……」
「あなたは面白いけど。僕をイジメた人に容赦するつもりはありません」
僕は足を振り下ろす。
事切れた青柳を踏み台にして、青鬼会のビルに歩み寄る。
「てめぇ!よくも兄貴を……グハッ」
「俺達が相手だ!ブフォ」
チンピラさんたちが向かってくるがワンパンで終わらせて、ビルの中に入っていく。
中央にある柱に近づいて、拳を叩きつける。
「やっぱりコンクリートは固いな」
そう言いながらも柱に拳を叩きつけ続ける。
次第にビル全体が揺れ始め、崩壊を開始する。
一つが終わればいくつかある柱と外側にある柱を破壊しる。
内部も外部も破壊することで支えを失ったビルが崩壊していく。
「う~ん。自分のしたことだけど、信じられないな。人が素手でコンクリートのビルを倒せるとか」
この仕事を選んだときに、自身の能力を確かめたかったと言うのが一番だが、ここまで規格外だとはおもっていなかった。
「あはっ。バックン凄いね」
いつの間にか隣に立っていたマシロが、崩壊するビルを見つめて笑っていた。
「しかも容赦ないところがいいね」
「そうですか?僕的には十分容赦しましたよ。逃げる者は追いかけていませんし」
「あはは。大型新人だね君は……」
完全に崩壊したビルを見つめているとスマホが鳴った。
「メールか?」
メールが来ていたので開くと、ミッション達成の文字が書かれていた。
「あれ?どうやってわかったんだ?」
「ああ。それはそういう能力者いるんだって神楽ちゃんがいってたよ」
僕の疑問にマシロが答える。
「そうなんですか?まぁどうでもいいか」
メールにはミッション達成したので、成功報酬の15万が電子マネーで入金されますと書かれていた。
スマホ内にある電子銀行のアプリを開くと、確かに15万の預金がされていた。
「一日で余裕ができたな」
朝に決めた節約をしなくていいと思うのは嬉しいが、なんとも呆気ない仕事だと思った。
「普通は一週間で達成するだけどね」
「マシロさんでもですか?」
「どうかな?私の力なら簡単だけど、人それぞれ能力が違うからね」
マシロは青柳をつんつんしていた。
「そろそろ帰りますよ」
「そうだね。帰ろうか」
崩壊したビルをそのままに二人はのんびりと帰路に着いた。
「あっ、スーパー行きたいんですけどありますか?」
「いい店あるよ。案内してあげる」
マシロにも慣れてきたものだと、自分の順応性にあきれながら、スーパーへ向きを変えた。
ここまで読んで頂きありがとうございます\(^o^)/