7追撃
「それじゃぁ、僕にも使えるかな?」
「サンタなら大人も使えるよ」
ヒューイはそう答えると説明を始めた。
「いいかい。まず袋に手を入れて欲しいオモチャをイメージしながら光を掴んで取り出す」
言われた通りにすると、シェーンの手のひらに幾つものブロックのセットが現れた。
「おお、上手いじゃないか!」
ヒューイは拍手をしてシェーンを褒めると言葉を続けた。
「ただし、これには出してはいけない物があって…」
そう言いかけたとき、後ろから大きなエンジンの音が近づいてきた。
「黒サンタだ!」
ヒューイの声に振り向くと爆音に後押しされるように突っ込んでくるスノーモービルが見えた。
ヒューイは手綱でトナカイに合図を送る。
全速力で駆け出すトナカイは見る間に黒サンタのスノーモービルを引き離す。
「えっ、ええ?」
驚くシェーンにヒューイは自慢げに言った。
「こいつは伝説の赤鼻の血統なんだよ。な、ディスポイント」
そう呼ばれたトナカイのディスポイントは更に加速して夜空を駆けた。
次の瞬間、ディスポイントの脚が止まった。
シェーンは勢いでソリの後ろから前に座るヒューイの背中に向けて吹き飛んでぶつかる。
ヒューイの「ぐえ」と空気の漏れだすような音のような声を聞いた。
「待ち伏せだ」
喘ぐように言うヒューイの言葉に何とか首だけ動かして前を見ると幾つもの光がこちらに向けられていた。
スノーモービルのヘッドライトだった。
そして後ろにも1台。
追いつかれた黒サンタは真後ろで空ぶかしを始める。
強かに打ち付けた身体の骨にまで響く爆音は威嚇に十分だった。
「クソっ」
シェーンは小さく吐き捨てると辛うじて届いた袋に手を入れた。
気付かれないようにそっと。
そうして引き抜いた手に握ったそれの引き金を引いた。
モーターのような音の後に連続した破裂音が夜空にこだまする。
それに呼応してヘッドライトの数が爆発音と共に消えていった。