壊れた少女は
病んでますた。
「いぁぁああぁああ!」
頭を抱え、頭を掻き毟り、あちらこちらに体をぶつけ、目には何かが滲みながら、言葉でない声をあげた。
『壊れた少女は』
少女は自分以外からもたらされた自分の変化が嫌いだった。
好きな服を着て、好きなことをしたかった。
少女のいない時には少女の部屋には誰もいれたくなかった。
その誰かが無断に少女の部屋に入って中の物を壊してしまうかもしれない、移動させてしまうかもしれない。
あると思っていたものが見つからない。それが怖かったのだ。
ある日部屋に戻ると小さな机の位置が変わっていた。
少女は少し"むっ"とした。
ある日部屋に戻ると本棚の本が1冊無くなっていた。
メモ書きに姉が少し借りているとあった。
少女は少し腹が立った。
ある日部屋に戻ると床に置いていた漫画が全て本棚へと戻されていた。
少女は怒りのようなものに襲われた。戻された漫画を全て出し、床に置いておいた。
今日はそれだけですんだ。
ある日部屋に戻ると床に置いておいた漫画は本棚に入れられていた。
昨日のように全て取り出すと、帯やページが折れているものが見付かった。
少女は怒り恐れ恐怖哀しみ憎しみ傷み等がどろどろに混ざりあったものに襲われた。
少女のそれら以外の感情は消滅した。
「あ…ぁ…ぅ…が…ぃやぁぁぁあああぁぁああぁあ」
少女は頭を抱え、頭を掻き毟り、あちらこちらに体をぶつけ、目には何かが滲みながら、言葉でない声をあげた。
少女は必死でそれを制御しようとした。
しかしそれは制御しようとすればするほど少女に襲いかかった。
少女は自分は壊れているのだと思った。叩いて直るようなことはなかった。
少女は自分が何かに乗っ取られる気がして恐怖に震えた。
少し落ち着いて、自分で感情を制御出来ないなんてそれは自分は自分でなかったからだと考えた。
壊れてしまったのだ、そう考えた。
謎のどろどろの感情に襲われて乗っ取られることは日に日に増えることとなった。襲われていないときも、いつ何処で襲われるのか怖くなった。
少女はさらに壊れてしまったのだと思った。
これからもっと壊れていってしまうのだろうと思うと、どろどろの感情は襲ってきて少女を蝕んだ。
少女はさらに壊れてしまったのだと思った。
少女はこれ以上壊れるのだろうか、と考えた。
少女はいつまでも壊れるのだろう、と考えた。
少女は自分以外からもたらされた変化が嫌いだった。
少女は壊される前に自分から壊してやろうと考えた。
少女が手っ取り早く自分を壊す方法として選んだのは、
もちろん、
「 」。
少女は笑って飛びたった。