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世界が終わる日、きみが微笑むなら  作者: 坂元たつま


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第一章  十三話 君を救うたび、世界は壊れる

崩れゆく白い世界の中。

 湊はユイナを庇うように腕を広げ、迫る黒い刃を弾き返した。


 アルメリアの姿は、もはや巫女とは呼べないものに変質していた。

 黒い霧をまとい、理性の欠片すら見えない。

 全身が「呪い」の塊だった。


「……アルメリア」


 その名を呼んでも、彼女の瞳は応えない。


「巫女は祈るために生まれた!

 勇者は巫女を殺すために生まれたァ!!」


 耳を裂く叫びとともに、黒い触手が四方から湊へ殺到する。


「湊さん!」


 リィナが駆け寄り、杖を構える。

 祈りの光が湊を包み込み、触手を焼き払った。


 アルメリアが怯えたように後ずさる。


「祈り……巫女の光……?

 あなた……どうしてまだ形を保っているの……

 本物はそこにいるのに……!」


 指先が震え、怨念が渦巻く。


「代わりものがぁああああ!!!」


 再び襲いかかる闇。

 それを湊は大剣で裂き返す。


「俺は……誰も捨てない。

 ユイナも、リィナも。

 どちらも守る!!」


「偽善者……!!」


 アルメリアの叫びに、ユイナが反応した。

 震える指で湊の背を掴む。


「湊さん……どうして……

 どうしてそんな言葉を言えるの……?」


「俺は、間違えたくないんだ」


「でも――世界が壊れるんだよ……

 私が祈りをやめたら……

 湊さんがここに来たら……!」


「世界より、お前の笑顔が大事だ」


 ユイナの瞳が揺れる。

 泣き崩れそうな顔で湊を見つめた。


「……そんなこと、言わないでよ」


 リィナが拳を握りしめた。

 苦しそうに、でも強い決意で。


「私は……世界も救いたい。

 ユイナ様も救いたい。

 湊さんも……守りたい!」


 彼女の言葉が光を生む。

 大地が震え、天に光柱が昇る。


「これは……?」


「私の祈り……!

 本物じゃなくても、祈りは生まれる!」


「そんなはずはない!!」


 アルメリアが絶叫する。

 黒い霧が渦巻き、暴風となって吹き荒れた。


 湊はリィナの腕を引き寄せ、ユイナを背負うように庇った。


「大丈夫。俺がいる」


 その言葉。

 その温度。

 その背中。


 二人の少女が同時に震えた。



 闇の中心に、アルメリアの本当の声が隠れていた。


「お願い……

 私を……忘れないで……」


 その声を聞いた瞬間、湊の胸が締め付けられる。


(そうだ……アルメリアは)


 湊の記憶に、焼けただれた村の景色が蘇る。

 瓦礫の中で泣き叫んだ少女。

 助けられなかった巫女候補。


 世界のために捨てられた少女。


(俺は……また、見捨てていたのか)


「湊さん! 前を向いて!」


 リィナの声が現実へと引き戻す。


 黒い刃が湊の胸を狙う。

 それを剣で受け止めるが、衝撃で膝が折れそうになる。


「このままじゃ押し負ける……!」


「なら、祈ればいい」


 か細い声が背中から聞こえた。

 ユイナが湊の肩に手を置く。


「私たち、三人とも……

 同じ想いで祈れたら……

 きっと……!」


「ユイナ様……?」


 ユイナの瞳が、リィナに向けられる。

 敵対ではなく、共感を求める眼差し。


「私……あなたに嫉妬してた。

 湊さんと一緒にいられるから。

 笑っていられるから。

 湊さんに“選ばれた”みたいで――」


 リィナは首を横に振る。


「選ばれたのは、ユイナ様です。

 だから私は……私の願いを選びます」


 震える声で続けた。


「私は湊さんと……生きたい。

 誰の代わりでもなく、私として」


 ユイナが泣きそうに笑う。


「……そうなんだ」


「うん。私の願いです」


 湊は二人の手を取り、力を込めた。


「なら三人で生きる世界を作ろう。

 祈りも、犠牲もいらない未来を」


 ユイナの瞳が輝く。

 リィナの祈りが膨れ上がる。


 三人の想いがひとつに結びついた時――


「お前たちの希望はァァァ!!!

 世界の終わりだぁぁあああ!!!!!」


 アルメリアの絶叫が響き、

 世界が完全に崩れ始めた。


 空が割れ、地が消え、光が炸裂する。


 祈りと呪いが衝突し、暴発したエネルギーが

 三人の身体を吹き飛ばす。



 視界が真っ白になる。


 どこか遠くで、二人の声が聞こえた。


「湊さん!!!」

「湊!!!」


 伸ばされた手。

 離れていく温度。


(俺は――また)


 救えないのか


 愛せないのか


 約束できないのか


(もう二度と、誰も)


 ――失いたくない。


 その叫びと共に、湊の意識は闇へと沈んだ。


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