第八話:最終話・うちのまる
「いやー、見つかってよかった!」
びしょ濡れの飼い主は、びしょ濡れのまるをタオルケットで拭いている。
「それって、よだれまみれの臭いタオルケットですよね?」
「いいんだ。拭ければ。でなければ、あんたのマント貸してくれてもいいぞ」
「いや、それは……」
「川に入っちゃったから、どうせ家で風呂入れなきゃだし」
そのタオルケットで自分も拭く飼い主。
「オエ!くっさ!」
「でしょうね!」
拭き終わると、
まるの首輪をしっかりと締めて、リードをつける。
村の中心部まで戻る。
きなこがしっぽを振りながら寄ってきた。
「わん!」
(訳:まるさん、飼い主さんと会えたんですね!よかったです!なんだか濡れてますね!焼き芋食べますか?もうお腹いっぱい?もう帰るんですね。きっとまた来てくださいね!いつでも歓迎しますよ!)
まるときなこはふんふんと匂いを嗅ぎあっている。
「ありがとう、きなこちゃん。まるが見つかったのは、君のおかげかもしれない」
それを聞いた騎士三人
「それじゃあ、私達の意味は……」
騎士達の様子に気づいた飼い主。
「あ、ごめん。あんたらもいてくれてよかったよ。特にパンフが役に立った」
フォローしているような、していないような。
──ポクポク歩いて村を出るまる一行。
ポクポク…ポクポク…
濡れてしっとりしていた飼い主とまるが乾き始めた。
「オエ!生臭っ!」
「風向きでこっちにも臭いが来る!」
「風上にいないでください!」
隊列変更。
飼い主とまるが一番後ろ。
ふと、飼い主が騎士達に尋ねる。
「そういえばさ、この世界って魔法とかないの?」
「ありますよ。今回使う機会が全くありませんでしたけど」
「例えば…火の魔法とか、風の魔法とかです」
「頭洗った後、乾かすのに便利ですね」
「マジかよ!タオルケット使う前にその魔法使ってほしかった!」
「すいません。てっきり、その臭いが好きなのかと」
「そんなわけねえだろ!」
──雑談をしているうちに、城へ戻ってきた。
宰相が駆け寄ってくる。
「おお!まる様。よくぞご無事で!くっさ!」
「臭いだろう。汗と焼き芋とよだれと川の臭いだ。まるにとっては大冒険の証だ」
飼い主はなぜか誇らしげだ。
まるもドヤ顔をしているように見える。
「んじゃ俺達、帰るから」
宰相が慌てて止める。
「待ってくれ!国王様はいなかったか?」
「いなかった。近所の村にいるような人なの?」
「いる場合もある。バカなので」
「自分とこのトップをバカって言っちゃったよ!」
「まる様、探してきてもらえませんか?」
「やだよ。これから家帰って風呂入るんだ」
「風呂入ったら戻ってきて。お願い」
「知るか!あんたらの問題だろ!」
「頼む!私は明後日から長期休暇なんだ!この問題を誰かに引き継ぎたいんだ!」
「俺に振るな!っていうか、王様いないのに休暇入るのかよ!」
「ちなみに騎士団は明後日から社員旅行です」
「社員旅行!?」
宰相も、騎士団も、懇願するような目で飼い主とまるを見ている。
「絶対に、嫌だ!」
──この騒動で一番厄介だったのは、休暇目前のサラリーマン(?)達だった。
かなり強引に引き留められたが、無理やり帰ってきた。
うちの物置小屋には、まだ異世界に通じる光が残っている。
「いつでも戻ってきていいからね(はぁと)」
だってさ。
戻るつもりは、今のところない。
光が見えないように段ボールを積み上げて隠してある。
さて、今日もまるの散歩に行くとするか。
──おわり(たぶん)




