表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境伯令嬢は薬草園でまったりスローライフ ~追放?破滅?いいえ、今日もハーブティーが美味しいです~  作者: 和三盆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/102

第92話 「任せるという選択」

朝の薬草園は、静かに動いていた。


アメリアが畝の間を歩いても、誰も作業を止めない。

声をかけなくても、手は迷わず動いている。


「……本当に、変わったわね」


それは、寂しさよりも安堵に近かった。


集会所で、自然と人が集まった。


議題は決まっていない。

ただ、話したいことがある人が来る。


「薬草の乾燥、担当を分けたい」

「天候次第で、収穫時期を調整したい」


意見が出る。

調整される。

決まる。


アメリアは、聞いているだけだった。


「……いいの?」

ルシアンが、小声で聞く。


「いいの」

アメリアは頷く。

「全部、私が決めなくても」


昼。

セイリウスが、静かに提案した。


「薬草の管理と、治療用の配分」

「役割を、明確に分けよう」


反対は、出なかった。


むしろ――

安心した顔が、多かった。


「判断基準が、見える方がいい」

誰かが言う。


アメリアは、その言葉を噛みしめる。


夕方。


帳簿の前で、アメリアはペンを置いた。


「……私の名前、減ったわね」


署名欄に、他の名前が並んでいる。


責任が、分散している。

決定が、共有されている。


それは、弱体化じゃない。

成熟だ。


夜。

ルシアンと並んで、外に出る。


「怖くないのか?」

彼が、率直に聞く。


「少しは」

アメリアは笑う。

「でも、全部抱える方が、ずっと怖い」


セイリウスが、遠くから声をかける。


「手放した分、見えるものも増える」


アメリアは、薬草園を見渡した。


ここは、彼女一人の場所ではなくなった。

だが、奪われたわけでもない。


任せる。

信じる。

それもまた、選択だ。


「……これでいい」


そう呟いた声は、確かだった。


夜風が、穏やかに流れる。


辺境は、今日も動いている。

誰か一人に頼らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ