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辺境伯令嬢は薬草園でまったりスローライフ ~追放?破滅?いいえ、今日もハーブティーが美味しいです~  作者: 和三盆


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第91話 「戻る場所の変化」

辺境へ続く道は、思ったよりも短く感じられた。


馬車の揺れの中で、アメリアは何度か外の景色に目を向ける。

王都の石畳から、土の道へ。

整えられた風景から、自然のままの起伏へ。


その切り替わりが、妙に心地よかった。


「帰ってきたな」

馬車を降りたルシアンが、そう言う。


「ええ」

アメリアは、深く息を吸った。

土と薬草の匂いが、はっきりと分かる。


薬草園は、変わらずそこにあった。


畝は崩れていない。

棚も整っている。


……だが、どこかが違う。


「……動いてる」

アメリアは、すぐに気づいた。


作業の流れが、少しだけ変わっている。

指示がなくても、次の手に移る人がいる。


「アメリアがいない間に、話し合った」

ルシアンが言った。

「誰が判断するか、どこまで任せるか」


セイリウスも頷く。

「“不在”が、考える時間になった」


集会所で、簡単な報告会が開かれた。


誰かが主導するわけではない。

だが、意見は出る。


「この作業、分けた方が早い」

「薬草棚の管理、当番制にしよう」


アメリアは、口を挟まなかった。


必要が、なかったからだ。


「……もう、手を離しても大丈夫そうね」


自分でも、少し驚く。


夜。

薬草園で、一人になる。


外を見てきたからこそ、分かる。


ここは、閉じた場所じゃない。

外に依存してもいない。


「……育ったのは、薬草だけじゃない」


人も、流れも。


アメリアは、静かに笑った。


ルシアンが、後ろから声をかける。


「安心したか?」


「ええ」

「ちょっと、寂しいくらい」


「それでいい」

彼は肩をすくめる。

「居場所ってのは、独り占めするもんじゃない」


セイリウスが、夜空を見上げる。


「戻る場所が変わるのは、前に進んだ証だ」


辺境は、静かだった。


だが、止まってはいない。


アメリアは、薬草の葉に触れる。


ここにいても、外を知れる。

外を知っても、ここに戻れる。


その循環が、ようやく形になった。


「……次は、急がなくていい」


焦る必要はない。

流される必要もない。


ここは、選び続けられる場所だ。


夜風が、穏やかに吹き抜けていった。

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