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辺境伯令嬢は薬草園でまったりスローライフ ~追放?破滅?いいえ、今日もハーブティーが美味しいです~  作者: 和三盆


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第90話 「受け取るもの、拒むもの」

二日目の朝は、曇っていた。


王都の空は高く、重たい。

辺境の澄んだ朝とは、まるで違う。


アメリアは研究院の会議室に入り、席に着いた。

昨日よりも人数が少ない。

だが――その分、顔ぶれは絞られている。


「本日は、具体的な提案をさせてください」

研究院長が、そう切り出した。


来たな、とアメリアは思う。


提示された案は、三つだった。


一つ目。

辺境で成果の出ている薬草を、研究院で再現・量産する計画。


二つ目。

アメリア本人を、特別顧問として迎える話。


三つ目。

辺境を“モデル地区”として指定し、継続的な観測を行う案。


「……なるほど」

アメリアは、すぐには答えない。


全て、理屈としては理解できる。

悪意も、乱暴さもない。


だからこそ――

線引きが、必要だった。


「一つ目は、受けられます」

アメリアは言った。


会議室が、わずかにざわつく。


「種子と基本的な栽培理論の共有は可能です」

「ただし、現地の環境差を無視しないこと」


研究官の一人が、安堵したように頷いた。


「二つ目は、断ります」


今度は、はっきりとした沈黙。


「私は、どこかに所属するつもりはありません」

「必要なら、意見交換は続けますが――肩書きはいらない」


「では、三つ目は?」

院長が慎重に尋ねる。


アメリアは、少しだけ考えた。


「……条件付きで、拒否します」


「拒否、ですか」


「“モデル”にされると、判断が遅れます」

「辺境は、実験場ではありません」


その言葉に、誰も反論できなかった。


代わりに、アメリアは言葉を続ける。


「ただし」

「困ったときに、相談できる窓口としてなら、関係は持てます」


上下でも、管理でもない。

横のつながり。


それが、彼女の出した答えだった。


会議の終わり。


院長は、深く息を吐いた。


「……正直に言いましょう」

「我々は、もっと多くを引き出せると思っていました」


「でしょうね」

アメリアは、穏やかに返す。


「でも、それでは壊れます」

「私も、辺境も」


院長は、しばらく黙ってから笑った。


「欲張りすぎました」


帰り道。


研究院の廊下は、昨日よりも少し柔らかく感じられた。


「全部、断ると思ってました」

若い医師が、小声で言う。


「全部、拒めば簡単です」

アメリアは答える。

「でも、橋は残したかった」


「……難しいですね」


「ええ」

「でも、慣れてます」


宿に戻り、荷をまとめる。


明日には、辺境へ帰る。


外に出て、確かめた。

そして、必要なものだけを持ち帰る。


それでいい。


アメリアは、窓の外を見た。


王都は相変わらず、忙しそうだ。

でも、もう引き込まれない。


「帰ろう」


その言葉は、自然だった。


橋を渡るのは、一時でいい。

住む場所は、もう決まっている。

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