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辺境伯令嬢は薬草園でまったりスローライフ ~追放?破滅?いいえ、今日もハーブティーが美味しいです~  作者: 和三盆


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第82話 「静かな辺境が、狙われる理由」

異変は、音もなく近づいていた。


村の朝は変わらない。

畑を耕す音、井戸の水音、子どもたちの笑い声。


だが、その裏で――

“外の視線”が増えていることに、アメリアは気づいていた。


「最近、行商人が多いわね」

薬草を仕分けしながら、アメリアが言う。


「しかも、薬草棚をやけに見て回る」

ルシアンが頷いた。

「値段じゃなく、“量”をな」


セイリウスが地面に触れ、目を細める。

「人の流れが変わっている」

「静かな土地は、狙いやすい」


アメリアは、手を止めた。


(……自立し始めたから、か)


頼らなくなった。

外からの支援を必要としなくなった。

つまり――“干渉しやすい”と見られる。


昼過ぎ、見知らぬ一団が村に入ってきた。


衣服は整っている。

だが、どこか統一感がない。


「辺境伯令嬢、アメリア様だな?」


先頭の男が、にこやかに名乗った。

近隣領の“調査役”だという。


「この辺りで、独自に医療行為をしていると聞いた」

「正式な管理下に置く必要があるのでは?」


アメリアは、一歩前に出た。


「医療ではありません」

「生活の知恵です」


男は笑みを崩さない。

「なら、なおさら」

「資源として、保護が必要だ」


その言葉に、村人たちの空気が張りつめる。


「保護、ですか」

アメリアは静かに繰り返した。


「干渉の、言い換えですね」


男の眉がわずかに動く。


「我々は、善意で――」


「善意なら」

アメリアは遮った。

「判断は、ここに住む人がします」


彼女は、後ろを振り返る。


村人たちは、すぐには答えなかった。

だが、誰も下がらない。


一人の農夫が、ぽつりと言った。


「……俺たちは、今で足りてる」


それが、合図だった。


「薬も、知恵も、ここで回ってる」

「困ったら、頼む先も分かってる」


調査役の男は、言葉を失った。


引き際は、意外と早かった。


「……今日は、ここまでにしよう」

そう言い残し、一団は去っていく。


完全に、諦めたわけではない。

それは、誰の目にも明らかだった。


夕方。

アメリアは、村の外れで立ち止まる。


「支えなかったから、立てた」

彼女は、静かに言った。


ルシアンが腕を組む。

「皮肉なもんだな」


「いいえ」

アメリアは首を振る。

「これが、正しい形」


自立は、守りになる。

依存しないからこそ、奪われにくい。


セイリウスが低く言う。

「だが、次は“試す”だろう」


「ええ」

アメリアは頷いた。

「だから、備える」


前に出ない。

だが、引きもしない。


橋は、ここにある。

渡るかどうかは、相手次第。


辺境は、静かなまま――

だが、もう無防備ではなかった。

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