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辺境伯令嬢は薬草園でまったりスローライフ ~追放?破滅?いいえ、今日もハーブティーが美味しいです~  作者: 和三盆


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第5話 「再会、そして芽吹く想い」

薬草園の奥に、小さな研究小屋が建った。

王都から運ばれてきた魔導器と、私の作業台が並ぶ光景を見て、胸が高鳴る。


「……やっと、ここまで来たわね」


棚には乾燥させたカモミール、ミント、セージの束。

隣には、セイリウスが用意した魔法触媒の青い石。

まるで科学と魔法が出会ったような、不思議な空間だった。


「アメリア嬢、こちらの調合液は“魔力伝導率”を高めるらしい。

だが、比率を誤ると暴発するかもしれん」


「なるほど。じゃあ、少しだけ“鎮静作用”のある薬草を混ぜて……

ミントを粉末にして、カモミールの蒸留液で薄めてみましょう」


「……そんな発想はなかったな。やはり君の知識は興味深い」


セイリウスの金の瞳が淡く光を宿す。

魔力が液体の中でゆらりと揺れ、やがて淡い緑の輝きを放った。


「成功……?!」


「いや、まだだ。これを人に試すには――」


その時だった。

外から馬の蹄の音が響いた。

マリアが慌てた様子で駆け込んでくる。


「アメリア様! 王都からの使者が! それと……殿下が!」


「……殿下?」


胸の奥が静かに高鳴る。

扉の向こう、陽光を背に立っていたのは――レオンハルト・フォン・アークライト。

前よりも少しだけ柔らかい表情をしていた。


「久しいな、アメリア」


「お久しぶりです、殿下。お元気そうで何よりです」


「辺境の噂は王都中に広がっている。

“薬草と魔法を融合させた癒しの研究”だとか。

……まさか、本気でやっているとは思わなかった」


「ええ、本気です。

人を癒すことに、身分も場所も関係ありませんから」


レオンハルトは少しだけ目を細めた。

「昔のお前なら、そんなことは言わなかっただろうな」


「昔の私は、“周りの評価”ばかりを気にしていたんです。

でも今は、誰かの笑顔のために動くことが楽しいんです」


沈黙が落ちる。

外では風が薬草を揺らし、優しい香りが流れた。


「……お前は、変わったな」


「変わらなければ、生き残れませんでしたから」


その言葉に、レオンハルトはわずかに眉を寄せ、そして静かに息を吐いた。


「……実は、王都で疫病が流行っている」


「疫病……?」


「まだ初期段階だが、治療法が見つからない。

医務院は混乱している。

王は、君の“薬草研究”に協力を要請したいと考えている」


セイリウスが驚いたように目を見開く。

「それは……我々が試作している“癒光液”の出番かもしれないな」


私は唇を噛み、決意を込めて頷いた。

「わかりました。

王都に届けましょう。

一人でも多くの命を救えるなら、私の薬草園の意味がある」


レオンハルトは、しばらく私を見つめていた。

やがて静かに、微笑のような表情を浮かべる。


「……強くなったな、アメリア」


「殿下が婚約を破棄してくださらなければ、

私はこの景色にも、この薬草たちにも出会えなかったでしょうから」


「それは……皮肉か?」


「感謝ですわ」


二人の間に、やわらかな沈黙が流れる。

かつて冷徹だった彼の瞳に、今は温かな光が宿っていた。


そして、セイリウスが静かに言う。

「アメリア嬢、殿下。

もし本当に王都で疫病が広まるのなら、時間は限られている。

“癒光液”を完成させるには、三人で協力するしかない」


私は力強く頷いた。

「ええ、やりましょう。

この薬草園から――人々を救う光を」


夕陽が研究小屋を照らし、薬液の瓶がきらりと光を反射する。

それはまるで、希望そのものの輝きだった。


夜、窓の外を眺めながら、私は小さくつぶやいた。


「……運命なんて、変えられる。

だって、私たちは“癒す力”を手にしているんだから」


その言葉に応えるように、風が薬草を揺らした。

まるで未来の芽吹きを祝福するかのように。

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