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第五十一話 再戦その三

 シーサーペントが浮かぶ海岸。

 彼我の距離はおよそ五キロ。


(AS03、フライトパック展開)

(了解、マスター)


 レイは脳内でAS03に命令する。

 AS03の返事と共に透明なままのレイの背中に全長二メートルほどの翼が生えたジェットエンジン付きのランドセルが展開される。

 見た目のイメージとしてはロボットアニメで空を飛ぶときに背中からジェット噴射を出す装置の様な感じだろうか。

 フライトパックは元々宇宙船の船外活動用に作られた飛行装置でパイロットスーツに内蔵された機能の一つ。

 尤も地上用には出来ていないので、重力下で空を飛びたいと思うならリミッターを外して、使い捨て同然で使用しなくてはならない。


「クオンさん。回復魔法の準備を」

「承知しました」


 淡々としたレイの言葉に、クオンは諦観したような声で応える。


「では秒読み開始します。五・四・三・二……」

「〈召喚ラファエル〉」


 レイの声が淡々とカウントダウン。

 その隣でクオンの身体が白く光り輝く。

 光はクオンの目の前に収束し、背中に四枚の羽根が生えた美しい男性の天使へと姿を変える。


 天使ラファエル……神と呼ばれる超巨大な魔素の集合体の一部。

 この世界最高の癒し手クオンの力の源泉であり、四大精霊に匹敵するエネルギーを秘めている。


「……一・〇・発射!」


 召喚が完了すると同時にカウントダウンも終了。

 合図と共にレイのフライトパックが轟音を上げて爆ぜる。


 レイは爆音と共に前方へと()()()()()


 フライトパックの地上使用の問題点。

 それは飛行装置とは名ばかりの使用者を人間砲弾にしてしまうという点にある。

 爆風の衝撃でレイの背骨と肋骨が砕ける。


「ラファエル!」


 激痛の中、レイの耳にクオンの声が届く。

 主の命令に従いラファエルは回復魔法を行使。

 四枚羽の天使から光が溢れ出す。

 光はレイを包み込み、砕けた骨を瞬時に癒す。


「うぉぉおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」


 レイ=シュートはその名の通り光の弾丸(鉄砲玉)と化して、シーサーペントに突っ込む。


「オーバーリミットモード展開!」


 パイロットスーツが眩い光を放つ。

 レイは自身の身体能力を数百倍に高めるオーバーリミットモードを発動する。

 その両手にはビームブレイド。

 極限まで高められた筋力による斬撃が巨大なシーサーペントの船体に穴をあける。


「……潜入成功」


 腕の骨が折れる痛みを感じながらレイが突入した先は、ブラックファルコンの格納庫だった。


(ん?痛みが消えた)


 レイは心中で感嘆した。

 これだけ離れた距離でもクオンの魔法は自分を癒し続けている。

 この能力は銀河同盟の医療用ナノマシンを大きく上回っている。

 恐るべき逸材に感謝しながら、レイはまだ稼働していないブラックファルコンをビームブレイドで切り裂いた。


(痛みは一瞬……これなら)


 レイは自身の骨が砕ける痛みに僅かに眉をひそめながら破壊の限りを尽くした。

 オーバーリミットモードで強化されたレイの前ではギラニウム装甲も紙屑同然。

 鳴りやまない爆発音の中、レイはシーサーペント中枢へと向かうのであった。

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