第四十八話 対ティアマト作戦会議
場面は再びロンディアの宿屋。
「それでは対ティアマト作戦会議を始めたいと思います」
それぞれの情報を共有した後、レイが発した一言がこれだ。
「そうさね……相手はあのバケモノ。無策で戦っても勝ち目はないからね」
「ですが、どうやって戦うおつもりですか?相手は鋼鉄以上の固さを持ち、高速で飛び回りながら、光のブレスで相手を焼き払う怪物なのでしょう」
「う~ん、一応イフリートの炎は通じたけど、アタシの魔力じゃ一発しか打てないし……」
強大な敵を前に早くもお通夜状態のアヤメ、クオン、トワ。重苦しい空気の中、レイはいつもの鉄面皮で言葉を紡ぐ。
「その事については少し考えがあります。AS03」
『了解、マスター』
「!!!」
「!!!」
「…………」
レイの服から聞こえる機械音声。
驚きの表情を浮かべるアヤメとクオン。
そして一人、トワだけが呆れ顔。
「今、服から声が……」
「どうなってんだい⁉一体!」
「落ち着いて、今説明するから……」
当然の事ながら、クオンとアヤメはレイに詰め寄る。
そんな二人をたしなめるのは最年少のトワ。
トワ先生のルミナス人にも分かりやすいAI講座が完了するまで待つことしばし……
「AS03。分析結果を……」
『了解、マスター』
レイの仕切りで作戦会議再開。
抑揚のない機械音声がレイ達の状況を語り出す。
『まずは敵に情報から……』
AS03の無機質な声で長々と語られた内容を要約すると以下の通りだ。
一つ、敵の名前はシーサーペントで、全長五百メートルの巨大な潜水空母。
一つ、敵の攻撃手段は主砲のフォトンキャノン(巨大な光線砲)と副兵装の魚雷、五百機ほどの無人艦載機ブラックファルコンによるレーザー。
一つ、敵の装甲はギラニウム製で、こちらの有効攻撃手段はレイのビームブレイドとトワのイフリートのみ。
一つ、敵の索敵手段は、光学センサー(光を探知)と熱源センサー(熱を探知)とソナー(超音波探知機)の三つ。
一つ、敵の本体はそれほど速い動きは出来ないが、巨大である為、耐久性が非常に高く潜水されたらこちらに攻撃手段は無い。
「どうやって戦うの……ますます勝てる気がしないんだけど……」
「そうさね。いくら相手が空の悪魔で、王国の魔法使いを全て使えたとしても勝ち目はないよ」
「レイ様。何か策があると仰っていましたが……」
室内の空気がますます空気が重くなる中、真剣な神官の顔つきでクオンが問いかける。
「確かに敵は強大ですが、いくつか弱点があります」
レイは相変わらずの鉄面皮で問いに答える。
「まず、射程が短く動きもそれほど速くないという点。艦載機は無線で操作している関係上本体からそれほど離れられない。おそらく飛行距離は長くて十キロと言った所でしょう」
「根拠は?」
「王国内でのヤツの被害が海岸から十キロを越えていないからです」
レイの回答にクオンは目を瞑りながら頷いた。
「次にヤツのセンサーが非常に単純でかく乱しやすい点。これは先日の戦いでトワの炎によるかく乱が有効だったことから実証済みです」
「なるほど……そういう事ですか」
クオンは感心したように目を細め、小さく息を吐く。
「ちょっと!勝手に納得するんじゃないよ!」
「そうだよ!アタシ達にも分かるように説明してよ!」
勝手に通じ合う男二人に女性陣が声を荒げた。
そんな彼女達に対してレイが答える。
「つまり奴には遠距離からのかく乱が有効だという事です」
三人の視線がレイに集まる。
レイは深呼吸を一つ。
頭の中で自身の考えをまとめながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「作戦の概要ですが、まずトワの炎魔法で敵をかく乱。その後に自分が敵本体に近づき撃破。アヤメさんにはトワの補助を、クオンさんには自分の補助をお願いします。次に詳細についてですが…………」
この日、レイ達の対シーサーペント討伐作戦会議は夜まで続いた。
会議が終わった所でトワが「お腹が空いた」と拗ねて、それをなだめる為に最高級レストランでたらふくご馳走をする羽目になったのだが、それはまた別の話。




