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第二十四話 遺跡探索その二

 夕日に照らされた山肌。

 鬱蒼とした森の中。

 苔むした門扉。

 レイ達はお目当ての遺跡の入り口までやって来た。


「今日はここで一泊だな」


 レイは入口のそばに佇む打ち捨てられた山小屋を眺めながら呟いた。


「うへぇ、なんか虫とか居そう……」

「贅沢は言っていられない。雨風凌げるだけマシだと思わなくては」


 嫌そうな表情のトワが愚痴を零す。

 レイも内心トワに同意だが言っても始まらない。

 移動疲れもあるので無いよりマシだと自分に言い聞かせる。


 ここに来るまで徒歩で五十キロ。

 午前中にグランツを出発したのだが流石に距離が距離。

 むしろモンスターが行き交う山道を八時間足らずで踏破できたのだから上出来だろう。


「疲れたぁ。ねぇ、ご飯何にする?」

「そうだな……すぐに食べられる物なら携帯食(レーション)があるが……」

「えぇ~!ヤダ!美味しくないもん!」

「だろうな……自分も同感だ」


 山小屋の扉をくぐり、すぐさま足を投げ出し床に座り込むトワ。

 外観の割に部屋の中は清潔さが保たれているようだ。

 部屋の中央には囲炉裏。

 部屋の隅には鍋と薪と少し汚れた薄手の毛布。

 おそらく遺跡の探索隊が置いて行った物だろう。

 レイが薪を並べた所でトワが魔法で火をつける。


「相変わらず便利だな」

「それ何回目。お兄さんってホント魔法好きだよね」


 指先から小さな火を出しながら、トワがニカッと笑う。

 彼女はイフリートと契約したことにより火属性の魔法全般を使える様になっていた。

 表面上は分かりにくいがレイは自分が知らない未知の現象に興味津々。

 鍋に山登りの最中に取った山菜(AS03により食用である事は確認済み)と、グランツで買った干した豚肉と味噌と水を放り込み、夕餉の支度をする。

 くつくつと煮える具材と味噌の香りにレイの頬は僅かに緩む。


「アッ、いい匂い。何って料理?」

「豚汁だ」


 喜色満面のトワに湯気の立つお椀と箸を手渡しながら、口元を綻ばせるレイ。

 古代の日本ではごくありふれた食事だが、星歴を生きるレイにとってはご馳走。

 受け取った途端に豚肉を掻き込むトワ。

 その隣でレイはお椀の前で軽く手を合わせ、「頂きます」を唱えてから豚汁を口にする。

 豚肉と山菜のダシが効いたスープが空きっ腹に染み渡る。


 (AS03よりマスターに報告)


 不意にレイの耳元に機械音声。


「お兄さん。何してるの?」


 レイが箸を止めた事を不思議に思ったのだろう。

 トワが首を傾げながら問いかける。


「あぁ……少し遺跡内を解析していたのだが」

「れーだーっていう〈スキャン〉みたいな効果がある道具?」


 レイが右手の指で左手首当たりを触れながら、パイロットスーツの設定を操作。

 トワが首を傾げていると異変が起こった。


『支援AI、AS03の音声モードをスピーカーに変更。初めましてトワ』

「えっ!服が喋った!」


 部屋を満たす機械音声。

 トワはエメラルドの瞳をこれでもかと言うほど大きく見開く。


「先ほどAS03が遺跡内の解析が終わった所でな。どうせなら食事中に情報共有をしておこうと思ってな」

「服が……服が喋っ……」

『トワ……心拍と呼吸数に急激な上昇を確認。深呼吸をして精神を安定させる事を推奨』

「落ち着けトワ……これは……」


 慌てふためくトワに、レイが淡々とAS03の解説をする。


「なるほど……こっち風に言えば、お兄さんの魔法をサポートする精霊がその声の主えーえすぜろさんなのね」

「そんなところだ。理解が早くて助かる」


 なんとか落ち着きを取り戻したトワの様子に安堵しながら、レイが静かに口を開く。


「AS03、遺跡の内部構造は?」

『地上一階、地下二階の比較的小さな遺跡。最奥部に隠し通路あり。内部には複数のモンスターの反応あり。建物全体が石造りで構造的に脆い為、イフリートの召喚及びオーバーリミットモードの使用は不可』

「モンスターの種類は?」

『グレートボアの小型種とウルフ系のモンスターが複数。どれも現有戦力で対応可』

「隠し通路は未探索エリアか?」

『肯定』

「未探索エリアの内部構造は分かるか?」

『詳細は不明。超伝導体は未探索エリアにあり』

 AS03の報告を受けながら、レイはトワにも分かるように遺跡の内部構造を紙に落とし込む。


「凄い……見てもいないのに遺跡の様子が鮮明に……」


 両者の事務的なやり取りを目の前にトワはただただ目を丸くしていた。

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