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第二十三話 遺跡探索その一

(報告、北東50キロの位置に超伝導体と思しき鉱物の反応在り)


 救星の旅四日目。

 脳内に響くAS03の機械音声。

 久しぶりにベッドで眠って清々しい朝を迎えるはずだったレイの予定は無粋な報告でぶち壊しになった。


(そういえば、レーダーの広域探索モードをオンにしたままだったな)


 レイは眠気眼でそんな事を考えながら、パイロットスーツのヘルメットを展開。

 ディスプレイに映し出されるデータを確認する。

 どうやらお目当ての超伝導体は山岳地帯の建物(おそらく遺跡)の内部にあるようだ。


(首都セイレーンへの道からは少し外れるか……)


 レイはヘルメットをパイロットスーツに格納し、ホログラフでグラーフ族の衣装に偽装しながら部屋を出た。


「あっ!お兄さん!こっちこっち!」


 どこか東南アジアのようなエキゾチックさを感じさせる宿屋の食堂。

 扉をくぐった途端に響く元気なトワの声。

 彼女の目の前には平べったいパン、野菜とひき肉の炒め物、薄切りの玉ねぎが入ったスープが並んでいた。

 ほのかに漂うスパイスの香りがレイの空腹を刺激する。


「おはようトワ。早起きなんだな」

「そう?お腹空いちゃったからね。ご飯は向こうで貰えるよ」


 笑顔のトワがひき肉を乗せたパンを頬張る。

 視線は食事の方を向いたまま、指先だけがカウンターの方を指し示す。

 レイは彼女の指示に従い、カウンターに食事を取りに行く。


 そして待つことしばし……


「トワ……なんで君がここにいる?」


 レイの後ろにトワがちゃっかりついて来る。


「なんでって?おかわり」


 空になったトレイを抱えながら悪びれもせず笑顔で返すトワ。

 どうやら成長期の少女にはボリュームが足りなかったようだ。


「……はぁ、仕方がない。ちゃんと食べられるのなら止めはしない」

「うん!分かってるって!」


 満面の笑みでトワが頷く。

 レイはため息を一つ。


 今現在、二人の旅費はレイが管理している。

 理由は簡単……トワの買い食いが酷いからだ。

 彼女はかなりの健啖家で且つ計画性皆無だ。

 彼女に自由なお金を与えると全て食べ物に変わる。

 珍しい食べ物を見ればとりあえず買ってみる。

 その結果買い過ぎて食べ残す。


 食べ残しの行く先は勿論レイ……彼は生真面目な性格ゆえに食品ロスを絶対に許さない。

 そして昨日の串焼きによる胸やけの恨みも決して忘れない。

 そんな恨み節を込めた一言だったのだが、トワにはノーダメージ。


「ところでトワ、今日の予定だが……」


 食事を受け取りテーブルに着いたレイが神妙な顔つきで話を切り出す。

 アツアツのオニオンスープにご機嫌な様子で息を吹きかけていたトワが首を傾げる。


「どうしたの?お兄さん。改まっちゃって?」

「実は少し予定を変更したいのだが」

「別にいいけど、どうして?」


 レイはAS03が手に入れた情報をトワと共有。


「…………よく分からないけど、そこに行けばお兄さんが強くなるって事だよね」

「まぁ……そうだな」


 トワは首を傾げながら同意。

 おそらく彼女が完全に理解していない事についてはスルー。


「うん、分かった。急ぐ旅ではあるけど、お兄さんのパワーアップも重要だからね」


 笑顔で頷いた後、オニオンスープを飲み干すトワ。

 レイもホッとしながら食事を一口。

 香ばしいパンとスパイシーなひき肉の相性は抜群だった。



 それから一時間後。

 彼らが訪れたのはハンターギルド。


「マスター。ちょっといい?」

「なんだ……藪から棒に」


 厳つい顔のマスターにトワが笑顔で問いかける。

 挨拶も無しにいきなり用件を切り出す無作法にマスターが渋面を浮かべる。


「これから首都に向かうんだけど、なんか依頼は無い?それから途中に遺跡があると思うんだけど情報があれば教えて」

「……依頼はねぇな。それから遺跡の情報については情報料として五ユルグ貰うがいいか?」

「えっ!お金取るの!」

「こっちはそういう商売だ」

「まけてくれたりは?」

「しねぇな。嫌なら帰りな」


 駄々をこねるトワに渋面のマスターはため息を一つ。


「お願いします」

「毎度あり」


 コトンと硬貨をテーブルに置く音。

 マスターの目の前にレイが手を伸ばす。

 厳つい顔のマスターは渋面を緩ませ、硬貨を受け取る。


「北東50キロの遺跡だったな。あそこはもう探索が済んでいて、特に旨味が無い場所だ。奥はモンスターの根城になっている事もあって危険度はそこそこだが、あんた達なら問題ないだろう。情報は以上だ」

「エッ!たったそれだけの情報で五ユルグも取ったの⁉」

「おいおい、今から行く場所のリスクとリターンを教えてやったんだぜ。情報としては十分だろう」


 トワが頬を膨らませて抗議するが、マスターは涼しい顔。


「他に特徴は?できれば探索の報告書などがあれば見せて頂きたいのですが……」

「報告書なんてねぇよ。ただ、遺跡の奥にこんくらいの黒くて四角い光沢のある箱が壁に埋まっていて、持ち出しできなかったらしい。まぁ、値打ちものじゃなかったから放置だったんだがな」


 レイの問いにマスターは両手を広げながら黒い箱の形状を説明。

 大きさは横幅二メートル、縦幅一・二メートルと言ったところか。

 埃っぽいはずの遺跡なのに光沢が残っているのも興味深い。


「ありがとうございます。参考になりました」

「おう、気を付けてな」


 丁寧に頭を下げるレイにマスターが気さくに手を振る。

 生意気なガキにはぞんざいな態度だが、礼儀正しい青年への対応は親切。

 扱いの違いに頬を膨らませるトワを引きずりながら、レイはその場を後にした。

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