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第二十話 ハンターについて

 ハンターギルド二階。

 ギルドマスターの執務室にて。


「すまねぇな。内緒話ができるのはここくらいしかなかったもんでな」


 厳つい顔のマスターが申し訳なさそうに頭を下げる。


「実はな……情けない話なんだがさっきのドッジ。ウチで一番の実力者だったんだが、どうにも手に負えなくてな。手を焼いていたところにあの騒動だろ。あんた達にはお礼とお詫びをしねぇとなって思ってよ。謝礼を渡して、はいそれまでってのも味気ねぇだろ」


 バツが悪そうに頭を掻くマスター。

 要するにこのまま何のお礼も無くレイ達を帰したらギルドの面子が立たないというわけだ。


「そういうわけだから、なんか俺にできる事はねぇか?」


 迫力のある笑みを浮かべながらレイに詰め寄るマスター。


「では、早々に魔石の換金とギルドへの登録をお願いします。そしてできればハンターギルドについて細かい説明をお願いします」


 淡々と要望を口にするレイ。


「おい、兄ちゃん。それは通常業務であってお礼では……」

「通常業務を最優先でやって頂く事は十分礼に含まれるかと」


 マスターは若干顔を引きつらせた。

 感情が見えない機械のような対応に怯んだのだろう。

 宇宙艦隊にいた時に身に着けたストレスに耐える為の処世術だ。

 尤もこれのせいで民間人によく不気味がられていたが……


 レイはよく言えば秩序を重んじ、悪く言えば融通が利かない。

 困り果てたマスターに、トワが無邪気な笑顔で助け舟を出す。


「じゃあ、紹介状を書いてくれる。アタシ達、訳あって大公閣下に会わないといけないの」

「大公閣下だって!」


 マスターは要求の大きさに目をひん剥く。


「あのなぁ……俺は一地方ギルドのマスターだぞ。流石に大公閣下相手じゃ……」

「じゃあ、首都のギルド宛にお願い。アタシらはそっちで交渉するから」

「まぁ……それくらいなら」

「はい、交渉成立!」


 パンッと手を打ちながらトワが満面の笑みを浮かべる。

 それとは対照的に頭を抱えるマスター。

 紹介状と一緒に今回の騒動の顛末も報告しないといけない事に頭を抱えているのだろう。


「ではハンターの説明をお願いします」


 そして無慈悲なレイの声が頭痛に悩むマスターに追撃。


「あぁ、分かったよ。どこから説明しようか……」


 頭痛を堪えながらマスターが語った内容を要約すると以下の通りである。


 ハンターとはモンスターがらみの便利屋の総称。

 モンスターを狩り、魔石を手に入れて生計を立てる者の他に、商人の護衛や遺跡の探索なども請け負っている。

 モンスターには寿命がない。

 放っておけば際限なく増え、人里にも被害を与える。

 その為、定期的に間引く必要がある。

 ルミナスにおいてハンターは治安とエネルギーの両面で、社会的に必要不可欠な職業なのだ。

(グラーフ族はこの役割を村の男達が担っている……トワ談)


 ハンターギルドとは、平たく言えばハンターの互助組合の事。

 ハンターは護衛や遺跡の探索で国境を超える事もある職業。

 ハンターが国境を越えても不便しない様に補助するのがハンターギルドの仕事である。


 ハンターギルドに入るとギルドカードというモノが発行され、それで報酬の精算や現金の引き出し、個人情報の管理など様々な事が行われる。

 身分証明書やパスポート、キャッシュカードの代わりとしても使える優れものだ。

(グラーフ草原は厳密にいえば国家ではないので基本的に国境の往来は自由。

 リシュタニア公国からユルゲン連邦に入る際には身分証明書が必須。

 リシュタニア公国からワルツブルク王国は冷戦中の為、往来不可)


「……とまぁ、こんな具合だ」


 疲れた表情のマスターが話を纏める。

 やり切ったという顔だ。

 細かい部分を根掘り葉掘り質問するレイにうんざりしている様子。


「ありがとうございました。とても参考になりました」

「どう致しまして……二度と来んなよ」


 机に突っ伏し、ひらひらと手を振りながら二人を追い出すマスター。

 これにはトワも可哀そうに思ったのか……マスターに合掌。

 その後二人は魔石の報酬五千ユルグとギルドカードを受け取り、その場を後にした。

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