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第十四話 ゲイリー=アークライト

 星々が煌めく広大な宇宙空間。

 宇宙艦隊アークライト隊旗艦グングニルは、無数のバクテリアの様な生命体バグと相対していた。


「ディスティナ少佐。バグ共の防壁はどうか?」


 グングニルブリッジ。

 齢三十八歳という若さで現場の最高位にまで上り詰めた男。

 宇宙艦隊最強の士官ゲイリー=アークライトは爪を噛んでいた。


「アークライト大佐。バグの総数、全体の八十三パーセントを撃破。ただし当方の白痴兵の特攻部隊も四十パーセントの損失。しかもバグ側は毎秒〇・一パーセントで増殖中。長期戦になればこちらが不利です」


 淡々と報告する副官マリナ=ディスティナ。

 彼女は二十七歳という若さで高級士官になった秀才。

 その燃えるような真っ赤な髪と瞳に似合わない冷静さを持ち、

 その艶やかな唇はいつも事実しか語らない。


 現在、バグに対して有効打を与えられるのは白痴兵による自爆特攻のみ。

 グングニルから放たれる惑星をも破壊する主砲オーディンスピアもバグの再生能力の前には焼け石に水。

 副官の事務的な声に、ゲイリーは神経質そうな金髪を軽く掻きながら、厳つい顔の眉間に刻まれたしわを深めた。

 彼女の言葉はゲイリーに決断を迫っていた。

 撤退か。それとも……


「白痴兵特攻部隊全艦突入!敵損耗が九十パーセントを越えた段階でグングニルを全速前進!」


 ゲイリーが下した答えは外宇宙への前進。

 その決断にマリナは首を傾げた。


「大佐。本当に宜しいのですか?白痴兵特攻部隊を失えば我々は未踏の地で孤立する事になります。食料、燃料は百日分ほどしかありません。補給が期待できない地への進軍はあまりにも無謀かと」


 ゲイリーは副官の諫言に首を振った。


「先ほど、グングニルの星間レーダーがバグの発生源と思われる惑星を探知した。補給部隊をすぐ後方に待機させておき、我々は物資が枯渇する前にバグの本拠地を叩く。それで万事解決だ。それに……」


 ゲイリーは黒を基調とした軍服の胸元に仕舞ったロケットペンダントを開く。

 そこには幼い少年と少女の写真。


(周藤……すまん。お前の忘れ形見。守ってやる事ができなかった。せめて杏ちゃんだけでも……)


 彼を突き動かした感情の正体は後悔だったのかもしれない。

 彼は友の墓前での誓いを果たせなかった。


 だからせめて……


「外宇宙進出は全人類の悲願!多少の犠牲を払ってでも為し得なくてはならない!」


 ゲイリー=アークライトは全艦隊に突撃を命じる。


「了解しました。全艦、突撃」


 ため息を押し殺しながら、命令に従う副官。

 そんな彼女を一瞥しながらゲイリーは思った。

 自分にとってこれは弔い合戦。

 自分の原動力は友の息子……周藤嶺を冥界に送ったバグに対する怒りなのだと……

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