表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/115

第十話 嶺VSイフリート

『ほれほれ!どうした!その程度か?』

「チッ!キリが無い‼」


 嶺は思わぬ苦戦を強いられていた。


『ほう、これを凌ぐか……ならばこれはどうだ‼』


 イフリートがその拳を振るう度に打ち出される人の頭ほどの火球。

 嶺は無数の火球に翻弄される。

 速度は大して速くない。

 熱量も恒星内部で数時間耐えられるパイロットスーツなら問題ないレベル。

 だが数が尋常ではない。

 そして何より……


『ほれほれ、そんな調子では祈祷師の娘が焼け死ぬぞ!』


 火球の起動はランダムで、その内のいくつかはトワに向けて放たれていた。

 嶺はパイロットスーツで守られているから問題ない。

 だがトワは生身。

 摂氏数千度はあろうかという灼熱の業火に耐えられるはずもない。


「四大精霊とやらは随分卑怯者なのだな。正々堂々一対一で戦ってみてはどうだ?」


 相手は魔素の群体とはいえ意思を持った生命体。

 苦し紛れに挑発してみたが……


『何をぬかすか?お主らは二人、我は一人。二対一ではないか?』


 イフリートは鼻で笑うばかり。


『さてはお主、何も知らされずにここに来たか?それともただの白痴か?』

「どういう意味だ?」


 嶺は火球を拳で振り払いながら、努めてポーカーフェイスで問いかける。

 それを小馬鹿にした様にイフリートが嘲笑う。


『本当に何も知らぬようだな。お主にはその娘がただ呆けている様に見えるであろう……』

「…………」

『その娘は戦っておる。少しでも早く我を制御下に置き、お主を助ける為にな』

「!!!」


 嶺は大きく目を見開いた。


『健気で良い娘ではないか?どこぞの何も知らぬ阿呆のせいで我と対峙する羽目になったにも関わらず、その阿呆を逃がす為に必死だ』

「自分の……せいなのか?」

『他にどう聞こえる?お主は火球の動きを不自然だとは思わなんだか?』

「それは……まさか!」

『ふん!今更気付いたか!』


 嶺は歯噛みした。

 こんなに自分に腹が立ったのは生まれて初めてだろう。


(AS03……打開策は?)

(魔素により構成された群体イフリートに物理的ダメージを与えればトワへの負担が軽減されると推測)


 イフリートの言葉……火球の動きの不自然が意味するところは……


(AS03。オーバーリミットモードの起動を申請)

(非推奨。重力下の惑星上では使用者への負担が大)


 火球の動きには三種類あった。

 嶺に向かうモノ。

 見当違いの方向に飛んでいくモノ。

 そしてトワに一直線に向かうモノ。

 もしイフリートが打ち出した火球が嶺だけを狙っていたのだとしたなら……


(AS03!やれ!)

(……承認。ただし使用時間は三十秒)


 トワは……嶺を守る為に火球をトワ自身の方向に向かわせていたのだ。


(充分だ!)


 パイロットスーツ全体が青白く眩い輝きを放つ。


『んっ!これは!』


 今まで笑っていたイフリートが初めて狼狽した。

 パイロットスーツから放たれる高エネルギーに本能的な恐れを抱いたのだろう。


「うおぉおおおおおおおおおおお!」


 嶺は光の弾丸となってイフリートに突っ込む。

 空気が重い。

 肺が潰され、酸素が一気に奪われる。

 地面を蹴った足の骨が砕ける。

 振るった右腕の関節が悲鳴を上げる。


『うわぁあああああああああああああああああ!』


 嶺の右拳がイフリートの胸を貫いた。

 そして……


『ふん!惜しかったな、小僧』


 イフリートは嶺の腕を胸に突き刺したまま笑った。


『〈イグニートフレイム〉!』


 鉄をも溶かす灼熱の火柱。

 地獄の業火が嶺を包み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ