表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/60

持てる者は、持たざる者

 僕はラガッツァ。偉大なる神、ヤルヤラ様の祝福を受けたエルフ族の一員だよ。

 残念なのは、父親がここヤポネスに住むヒト族だと言う事かな。

 でも心配しないでくれたまえ。僕はとても母に似ているからね。

 こうして君たちに愛を分け与える事が出来るのも、そのお陰なのさ。


 うんうん、みんな今日も可愛いねぇ。

 君は… 鶯宿(おうしゅ)さん。初めましてで良いのかな?

 ハグで良い? うんうん、ぎゅーっとしてあげよう。

 おやおや大丈夫かな。僕のポケットティッシュを使いたまえ。


 今日の龍峡(りゅうきょう)さんと白加賀(しらかが)さんはユニホーム姿が凛々しいねぇ。練習試合なのか…… シオカ高校の射撃部も国体の常連校だから強敵だね。昔から勝負は時の運とも言うから、無理だけは禁物だよ。

 優勝したらデート? うん、いいとも。


 さあさあ、すまないがそろそろバスに乗せてくれたまえ。

 名残惜しいが、僕も学院に行かなくてはならないんだ。なにしろ、むこうでは星崎君が僕を待っているだろうからね。

 愛する彼に寂しい思いをさせる訳にはいかないよ。


 うん、それではまた。


 ぶおおおおお……


 僕を乗せた路線バスはディーゼル・ハイブリッドエンジンを響かせながら、坂道を駆けのぼる。今でこそ新しい街道を走っているが、この新道が出来るまでは大変な苦労をしたらしい。


 旧道──江戸時代以前から使われてきた街道は、バスが1台通れるほどの幅しか無い上に、とても勾配がきついのだ。

 自転車に乗って、この坂を上りきるのは運動部員くらいではないだろうか。

 この坂を上り切った先にあるのが学院なのだ。


 バスに乗り込んだラガッツァは、一緒に乗り込んできた少年に背中をどやしつけられた。


「よう、無節操モテ男。今日も精が出るじゃねぇかよ」

「いやだなぁ、彼女たちに精なんか出していないよ」

「へえへえ、そうかよ」


 ドゥーラ駅からバスに揺られる事20分。ドゥーラ城を望む大通りを抜けて、北に向かって台地を上り詰めた先にある停車場は、ちょっとした拠点でもある。

 なぜなら、ここから西に向かえばクバツに向かう街道が、まっすぐ進めばシオカに通じる街道への分岐点だからだ。


 停車場では乗客の半分以上が降りる事になる。

 そのうちの大半は、クバツ方面に──歩いてもさほど時間のかからない所にある工科高校の生徒たち。残りは学院の生徒だ。


 まだ夜も明けきらぬ早朝の始発バスに乗って学院に向かうのは、進学予備課程か、はたまた運動部か。そうでなかったら、よほど奇特な者と言う事になる。

 2年生のラガッツァは後者と言う事になるが。


「そう言えばクマヨさんに告白したと聞いたけど。結果を教えてくれたまえよ」

「……聞かないでくれ」


 サラサラと砂になりかけながら、あっさり断られたと言う親友は、乾いた笑みを浮かべていた。さすがに2高の生徒は身持ちが固い。

 かの高校は良家の子女が集う女子高なだけあって、男を見る目も肥えている。


 彼らにとって、単に学院の生徒と言うだけでは駄目なのだ。

 そして家柄──華族とか士族──というだけでも駄目だ。

 そう言う中でも、常に人気投票でのツートップのひとりがラガッツァだ。

 不動の1位になる事が出来ないのは、ひとえに懐の広さだという。


 とにかく彼は美を好む。そして守備範囲はとてつもなく広いのだ。

 美女でも美男でも──性別は関係ない。

 年齢も幼女からアラフィーまで、なんでもござれだ。

 そして、それを象徴するかのように可愛い女子に囲まれている。


 だがしかし、だ。


 彼は孤独だった。


 彼が良しとしたパートナーがいたとしても、周囲がそれを許さない。

 それが天陽(てんよう)の君──宵闇の君と並び立つ者の不幸とも言えよう。

 だが、彼はひとりではなかった。


 ──愛があれば、性別なんて。


 彼を取り巻く女性たちから、異を唱える者は……


 ……誰も、いない。

ラガッツァ君は、誰が何と言おうと絶世の美少年なのです。

ある意味、星崎君とは対極の位置にいる…… のかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ