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漫画家は馬を煮込む

 お兄ちゃんはちょっと不思議なところがある。


 私がまだ小さいころに、お兄ちゃんが自動車に轢かれた事があった…らしい。

 スプラッタなお兄ちゃんを手当てしてくれた病院の先生は、明日には名前が変わっているかも知れないって言っていたんだけど……

 お兄ちゃんはその日の夕方には叔父さんと焼肉定食を食べに行ってた。


 ちなみに、次の日に近くのお寺の──台山寺って言うんだけど──境内にマタタビの粉を撒いたのは私の仕業だ。

 それは、お兄ちゃんがスプラッタになっちゃった事を聞いた、住職さんがいつもと違う袈裟とか準備を始めたって聞いたから。


 情報源は佳次郎(けいじろう)さん──住職さんの息子さん──だから間違いない。

 うちは代々、神道なの。だからお兄ちゃんには戒名なんて要らないの。

 それに、私のお兄ちゃんを勝手に殺さないでよね。

 そんな事をする住職さんには、とびっきりのオシオキが必要だ。


 くくくく…… 猫が大の苦手な住職さんには、やっぱりコレでしょ。

 野良猫もあれだけびっしり境内に集まると、ちょっとしたホラーだもんね。

 あれを見た住職さんはハイビートで木魚を叩きながらお経をあげていたそう。

 いひひひひ。ザマーミロ。


 と、まあ…… これが私が小学校に入学する前の話。

 小学校に上がって分かった事は、お兄ちゃんは女子に人気があるってこと。

 事故の後、あまり運動しなくなった──お母さん過保護過ぎ!──ので、図書室に籠っている事が多くなったからかな。


 せっかく大きな害虫を追い払ったかと思ったら、今度は小蠅がいっぱいだ。

 お兄ちゃんの髪はきれいだ。女の人なら誰もが夢に見る烏の濡れ羽色。

 そして、いつも学生服の襟は閉めているから、パッと目には真っ黒に見える。

 でも、それが良いんだって。


 お兄ちゃんの事を宵闇の君とか呼んでいるみたい。そのお兄ちゃんは、毎年お彼岸とかバレンタインに、お菓子を貰ってくる。

 私も甘いものは大好きだから受け取るけど、手作りのお菓子だけはどんなに豪華に見えても、ゴミ箱にぽーい!


 だって、かなりの確率で髪の毛とか混ざってるんだもん。

 お母さんが言ってたもん。『お料理を作る時は清潔に。ちゃんと三角巾をしなくちゃ駄目よ』って。食べ物に髪の毛が入っていたら、ちょっと嫌だよね。

 もちろん勉強も頑張ったんだよ。私たちのお仕事は、勉強をする事だもん。


 大人になってから、どんなお仕事をするにも馬鹿じゃ務まらない。

 ちゃんと勉強をして立派な大人になって、世の中の役に立たなくちゃ。

 だから勉強、頑張ってます。飛び級を重ねて、中検には合格したから、あとは小学校を卒業するまでに大検の試験に合格する出来たらいいな… って。


 そのための勉強だけど…… 惑乱(わくらん)さんがお古の教科書を私に譲ってくれたし、分からないところも丁寧に教えてくれたのよ。

 ただ、いきなり『蝶を得るには馬を煮るのよおぉお!』とか、奇声をあげるのだけは勘弁してほしかった。


 蝶をつかまたいなら、花壇の手入れをすればいいのに。

 私が幼稚園に行っていたころには、大きな花壇いっぱいにに朝顔とか苦瓜を植えていたのは憶えているけど、最近は雑草だらけなのよね。


 結果? えっ、何の? ああ、大検ね。無事に合格できたわよ。

 惑乱さんは私の勉強を見てくれる合間に、お兄ちゃんの部屋に忍び込もうとしていたから、質問する事をいっぱい考えるのに手間がかかったけど。


 でも合格証書をゲットしたから、とりあえずは良しとしましょ。

 次は大学の合格証書をゲットしなくちゃ。

 そして、これは私からお兄ちゃんへのサプライズ!

 だからさ、みんな。お兄ちゃんには、ぜーったい内緒にしておいてよね。


 でも、こればっかりは惑乱さんでも手に負えなそう。

 だとしたら…… 頼れるのは病院の看護婦さん… かな。

 あの人はただの看護婦じゃない。1億人にひとり出るか出ないかという珍しい病気に罹ったけど、奇蹟的に回復した人なのよ。


 そんな経験をしたからだと思うんだけど…… あの人は、お医者さんの資格を持っている。つまり大学を出ているってこと。

 そうじゃなかったら、試験を受けられない。


 だったら、相談してみてもいいんじゃないかな。

 あの人はとっても優しいから、きっと相談に乗ってくれると思うの。

 うふふふー ガンバルゾ。

さあ、惑乱さん。頑張って馬を煮込むんだ!

キミなら出来る…… かも知れない。

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