とあるOLのモノローグ
私がこの世に生を受けて20年。
そして、人並みには信心深い方だと思ってるんだけどね。
そう。運命の神は邪神に違いない! って思うくらいには、信心深い。
神が慈愛に満ちているなんて、絶対に嘘だ。
だからと言って、私は虚弱体質じゃないし、病気がちと言うわけでもない。
そしてスリーサイズは人並みにはあると思う。
トップ78、アンダーは64だ。そしてウエストは58でヒップは84。
うん、周りのヒト族に比べてもワンサイズは上なのは間違いない。
でも、それだけでは、足りない。
20歳の女性として、致命的に足りない。
いくらドワーフ族は小柄だとはいえ、これはあんまりだ。
身長が136って…… これでは小学生──いや、10歳児と変わらない。
そして、この10年と言うもの、1センチも背が伸びていないのだ。
育ったのは胸と腰回りだけ。
──神よ、永遠に呪われてしまえ。
高校に上がる頃になると、そろそろ結婚を前提にしたカップルも出て来る。
それはシオカのような農村都市では、ごく普通のこと。
でも、私に声をかけてくる男子は──誰もいない。
こんなアンバランスな身体を抱えた私は、ひたすら神に願い……
そしてアンバランスな身体を抱えた私は、神を呪った。
そして、いつしか私は恋に対して無関心になってしまった。
恋する事に夢を見る事に飽きてしまった…… いや、諦めてしまった。
就職するころには、干物女でいるのも悪くはないかな。
そう思う事に、何の疑問も持たなくなっていた。
そんな私の運命を大きく変えてくれた彼に出会うまでは。
最初の出会いは病院だった。こんなちんちくりんでも、来るものは来る。
あの日に限って、とんでもなく重いお客さんが来て。
職場のお局様に総合病院に連れていってもらったんだけど……
そこで一人のヒト族の少年を見た。
彼に寄り添っている30代後半くらいの女性は彼の母親だろうか。
ちらっと、少年は私の方を見たけど。彼は全てに絶望をしている、誰もが信じられなくなった目をしていた。
彼の姿を見ているうちに、心の奥底にくすぶっていた何かが目覚めた。
なんとかしてあげたい。
彼の抱えた問題を解決してあげたい。
心を癒してあげたい。
でも、決して束縛してはいけない。
彼の方から私の方を向いてもらわなくては。
だから彼を絶対に堕とす。
なぜなら、生まれて初めて、心の奥底から付き合いたいと思った男の子だもの。
この想いは恋… というよりも保護欲… いや、愛情かな。
そうだ、初恋ならぬ初愛だ!
白馬に乗った王子様は、いつまで待っても迎えになんか来やしない。
理想の推しがいないなら、自ら育てるのみ!
育成ゲームで培った感覚と社畜生活の経験を活かして、彼をドッロドロに溶かして、私無しではいられなくしてしまえばいい。
ヒト族の子供が、心療内科にかかっているなんて、あまり例の無いことだ。
彼のパーソナルデータ―は──住んでいる所までもすぐに分かった。
芹沢 伊織、13歳。ドゥーラの中学校に入ってすぐに心に大きな傷を負って。
そのために1学期の途中でシオカの中学校に転校したという。
それからの私は頑張った。
それまで仕事が終わるまで残業をしていた私は、定時に退勤するようになった。
仕事は確実にこなしているから、上司にも誰にも文句は言わせない。
そして、回りくどい根回しを済ませた私は、彼の家を訪ねた。
毎日のように、彼に話しかけた。最初は部屋のドア越しに。
そして、いつしか部屋の中で一緒にご飯を食べるようになって。
初めて会ってから1か月くらいが過ぎたころだろうか。
私は思い切って、彼を『お出かけ』に誘ってみた。
──ねえ、ドゥーラの航空祭に連れていってくれない?
はっきり言って彼に断られてしまうと思っていた。
心に深い傷を負っている彼にとって、部屋の外は異界なのだから。
だから、私は彼を誘ったけど、同時に誘った事を後悔していた。
てっきり断られると思っていた。
それどころか反発されて──拒絶されるかも知れない……
そう思っていたのに。
「それ、僕が言おうと思っていたのに」
はにかんだような彼の笑顔は──
なにこれ… あまりにも尊過ぎる!
私は生暖かいものに気が付いて、咄嗟に鼻を押さえた。
やば、鼻血が出てきたかも……
私は本当の気持ちに気が付いてしまった。
彼を私に依存させて離れられなくするつもりだったのに。
気が付いたら、離れられなくなっているのは私のほうだ。
これが…… 恋… ?
私はプラウティン。
敬虔なヤルヤラ教徒です。
ヤルヤラ神は、とっても古い神様なのです。
作中世界では天津神系の頂点クラスかと。




