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ヤポネスの夏、熱射病の夏

 うっふっふ~

 このたび私、早見すみれは、マジックアイテムを手に入れたので、あーる。

 でもこれマジックアイテムというかインテリジェンスアイテムというか……

 何か普通じゃないような気がしないでもない。


 普通一般に言うマジックアイテム──魔道具というのは、魔法の力をまとった道具の事らしい。空飛ぶ絨毯とか、魔法の呪文を、封じ込めた指輪とか。


 でも、このマジックアイテムは私に懐いて──私がうっかり名前を付けたのがいけなかったらしい──離れようとしない。時々甘えるような仕草をするのが可愛いかったりしてね。


 元々はクバツに住んでいるエルフの大長老様が冗談で作ったモノのひとつだそうだけど…… まあ、それは後でもいいかな。

 問題は、目の前で死んだタコの目をしている早瀬さん。

 いったい何があったのかしら。


「ふぅむ…… また佳次郎さんに視てもらうしかないかなぁ」


 そう言えば、学校のプール開放日だったからみんなで一緒に行ったんだけど、その後くらいから… かな。おかしくなったのは……

 また何かに憑かれて── なにしろしーちゃんには前科があるからね。

 たしか、この前はもったいないお化けだったような。


「コルダ君、やっちゃって!」


 しゅるりと襟元から身を躍らせたコルダ君は、あっという間に星崎さんをくるぐる巻きに縛り上げたこれこそが百瀬さんから譲ってもらった魔法のロープ(マジックアイテム)のコルダ君。


「ちょ、すーちゃん……」「台山寺に着いたらほどいてあげるわよ」


 身体中に巻き付いたコルダ君は手足の動きをアシストするようにして、星崎さんを歩かせている。この子だんだん器用になっていくわね。

 お寺にでは佳次郎さんが、お出かけの準備中だったので、とりあえず……


「またお前かよ…… なにも憑いていねーって!」


 山門からポ-イってされた私たちは、仕方なく病院に行く事にしたのよね。

 でも、今日は休院日… そりゃそうよね。さすがにお盆ともなると、どこでも行事を抱えているものだ。そう言えば佳次郎さんも珍しく袈裟を着ていたっけ。

 彼もこれから檀家さん回り──仏壇の前でお経をあげに行くのかも。


「それにしても暑いわねぇ……」


 そろそろお盆も近づいて夏の暑さも盛りというところ。

 去年は、あっちこっちでセミの大合唱が聞こえたものだけど、今年は静か。

 時々聞こえるのは富士宇宙港を出発したスペースシャトルのエンジンの音くらいかなぁ。


 じ、じじじ……


 この夏の暑さに耐えかねたのだろう。近くの枝にとまったカラスに驚いたのか、セミが飛んで逃げようとして、ぽとりと地面に落ちた。放っておくのも可愛そうだから、どこかの木にくっつけてあげましょうかね。


 病院の前で涼しい風に吹かれているというのに、眩暈がしそうに、暑い。

 いや、心地の良い風で世の中がゆらゆら、ゆーらゆら… ゆらぁ……


「あなたたち、そんな所で何してるのよ!」「うにゃっ!?」


 病院の前にあるベンチでダレていた私たちを見つけたのは、瑞希さん──病院の看護婦さんだ。それと一緒にぶわっとに消毒液の匂いがあたりに広がる。


「盲腸の手術が2人前。もうひとりは院長先生がやってるけど……」


 瑞希さんは2度ある事は3度というけど…… と、何か遠い目をしているけど。

 よっぽど疲れているんだろうか。


「とにかく中に入りなさい。このままだと拙い事になるわよっ!」


 で、病院に入れてもらった私たちは、有無を言わさずに服を脱がされると水の入った樽の中に押し込められたんだけど……


「瑞希さぁん…… これ酷くないですかぁ」「お・だ・ま・り!」


 頭から、水をかけ…… かけるなら、ざばーっといっちゃってくださいよぅ。

 わざわざシャンプーハットつけて、ぽたーりぽたーり水を落とすなんて。

 これじゃまるで拷問じゃないのよぅ…… こんな時に限ってコルダ君は私が身動きひとつ出来ないように身体に巻き付いているし。


「あなたがいけないのよ。汗が出なくなるまで水分を摂らないなんて」

「んがげぐ? ぐエ……」


 瑞希さんにスポーツドリンクの入った哺乳瓶を無理矢に理咥えさせられた。

 なんか吸い口の部分、かなり大きいんですけど……

 いいえ、何でもないです、ハイ。


 結局、私が病院を後にしたのは、夕方にほどちかくなった時間だった。

 星崎さんと一緒に、ヒグラシの大合唱を聞きながら……

今から6年くらい前になりますが。

盲腸なのに胃腸炎と診断されて、薬を処方してもらって。結果として患者は生死の境をさまよう事になったという事件が新聞やテレビを賑わせた事があります。

あの時のやぶ医者様、今でも医者を続けているのでしょうか……

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