女子中学生たちの日常
私たちが中学校に入学してから、そろそろ1か月。
そう、私──百瀬 彩姫は、晴れて中学生になったので、あーる!
でも、それを喜んでいいのか悪いのか。
私の隣を歩いているしーちゃん…… 星崎さんを見ているとねぇ。
だって、あの子は去年は大検に合格しちゃったんだもん。もちろんその前に中検に合格──中学校の卒業資格を手に入れた──からチャレンジ出来たんだけど、それでもね。
逆に言えば、彼女はもう中学校や高校に通わなくても構わないって事なの。
だって大検っていうのは、正確には大学入学資格検定のことだもん。
これに合格したら高校卒業と同じ。つまり大学の受験資格があるってこと。
本人は飛び級制度をうまく利用しただけって言うけどさぁ……
でも、彼女は身体が丈夫な方じゃないと思う。何年か前までは、時々熱を出して寝込んではお兄さんが看病していたのを憶えているのよね。
だから大検合格は、しーちゃんの生命の蝋燭の灯が…… 燃え尽きる寸前に明るく輝いているとばかり思ってい…… ぐええ!
「あ・や・め、ちゃぁん?」
春の陽だまりのような笑顔を浮かべて──私の首に腕を回しているのが、いま話した体の弱いコ……
「私は心身ともに健康ですが、なにか?」」
うそつけ! あんた小さい時は、よく熱を出して寝込んでいたじゃないのよ。
毎度毎度、お兄さんに看病してもらってたでしょ?
みんなは憶えてないかも知れないけど、私は昨日のように憶えてるのよっ。
だって羨ましいじゃない。
宵闇の君をひとり占めするなんて、いくら妹でもやって良い事と悪いこ……
ふげえぇえ?
ぎゅうぅうう……
「はぐぐぐ…… ギブギブ!」
急所を微妙に外したところに絡みついている腕を外してもらおうと、タップして…… だから腕に力を入れるんじゃなあい!
後ろに体重をかけないでよおぉお!
「……人を勝手に殺さないでよねぇ? それから、お兄ちゃんは私のもの」
「ごめぇん…… 悪かったから、タスケテ?」
気配もなく近づいたかと思うと、いきなりこう…… だもん。身体が弱いなんて絶対にウソに決まってるわよ。そうじゃなかったら体力測定で50メートルを6秒50フラットで走りきるなんて筈がない。
体育の先生が陸上部に誘っていたけど、あの目は本気だったと思う。
「うんにゃ。今日という今日はあーちゃんにお仕置きしておこうかなぁ」
視界の隅で誰かが近づいて…… よかった、早見さん──すーちゃんだ。
タスケ…… うひゃあぁ?
「あやちゃん、今度は何をやらかしたのぉ」
あんたもイイ笑顔をしてなにをしゅる…… だーかーら、胸をもむな、胸を!
「こうして刺激すれば、いずれ大きくなるかも」「やめてえぇえ!」
私の胸に乱暴狼藉を働いているこいつは、早見 すみれ。
こいつは星崎さんとは別の意味でヤバい奴だ。
エルフの慣習か何か知らないけど、隙があれば抱きつくし、胸が… その……
あの胸のせいで、筋トレは欠かせないらしい。わたしゃ付き合わないからね?
だって背筋80越えって、男子並みの数字をひねり出しておきながら、腹筋が割れている訳じゃないし、どこに筋肉ついてるの? ってくらいに腕も細い。
それでさぁ、しーちゃん。そろそろ首から腕を外してくれないかなぁ。
……って、あんたまで一緒になって胸をいじるなぁあ!
いつも言っているでしょ! 私は平均値でいーんだ、それで充分!
それなのに、それなのに……
「いい、加減に…… しろおぉお!」
いつの間にか身についた技は、柔術道場で日々磨きをかけた成果なのよねっ。
次にやったら、投げ飛ばした後で追撃かけるから、憶えておいて?
それにしても…… 私たちの日常は、こんな感じ。
ねえねえ、この2人って、なんとなく変な奴だと思わない?
でも、これが幼稚園に入る前からの腐れ縁… いやいや、そうじゃない。
私たちは、誰もがうらやむ仲良し3人組なのさっ。
百瀬さんは苦労人。なまじノーマルなだけに、苦労も絶えないんだねぇ。
でも、なんかなぁ…… うん、ご婦人方にはこれ以上多くは語らなくて良いよね。
こらぁ、そこの殿方! 妙な『創造』をしないように!




