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お婿に行けなくなりそう

 最近、妹がおかしい。

 いや、今年の夏が暑すぎて脳が熔けたとかそんなんじゃないぞ。

 小さい時のように、事あるごとに『お兄ちゃん』ってね。

 いや別にそれはそれで悪い気はしないけどな。


 いったい志帆が…… まあいいか。今はそんな事を考えてる場合じゃない。

 実は俺、病院のベッドで寝ているんだよね。

 右を見ると看護婦さん。左を見れば医務室の先生。うん、両手に花……

 ……じゃない!


 両手両足をベッドに柱に縄でくくり付けられているんだからな。

 こうなったのは、ちょっと看護婦さんを怒らせちゃって、それでなんだが。

 で、両側から説教をくらっている最中だ。


「な・ん・で、キミは…… そんなモノを作る気になったのよっ!」

「疾風くんに元気があり余っている証拠だよ。ねえ瑞希、これは問題だねぇ?」


 いや、きっかけは大した事では無かったんだ。

 理科の課題を片付けていて、ふと思ったんだ。こいつ、学院の科学実験室なら作るのに必要なものは、全部揃っているんじゃないかって。

 それを医務室の先生に話したら、すぐに理科の先生に話をつけてくれたんだ。


「うんうん、朝倉先生に話をつけたのは私だとも。しかしねぇ。あんなものを、 それも、私の目の前で堂々と作るとは良い度胸じゃないか」


 作ろうと思ったのは、大したものじゃない。

 水耕栽培用の植物培養液──植物が成長するために必要な養分を吸収に適した濃度で水に溶かしたもの──クノープ液と言うんだが。

 こいつは中学校の理科室にある薬品でも作る事が出来る。


 ただ、趣にノってと言うか、つい、別のものも作っちゃったんだよね。作り方は至って簡単だ。〇酸と●酸の混合液に(けんえつ)を入れれば出来上がり。

 コツは、良く水洗いをする事… かな。

 惜しいことに日なたで水分を飛ばしていたら、駄目になっちゃったけどな。


 そして、もうひとつの実験。こっちが本命だった。でも、薬品を混ぜる時に、ちょっと手違いが起きて、薬品をまともに被っちゃったんだ。

 思わず、訳わからない事を叫びながら、水道で手を洗い始めたんだが……


「星崎! とにかく服を脱げ!」「えっ?」「え、じゃないっ! ぬげぇえ!」


 あっという間にすっぽんぽん…… いやん、お婿に行けない。


「馬鹿言ってないで、すぐにシャワーを浴びてきなさいっ!」


 そう言い捨てて、先生はどこかに行ったんだ。残された俺は、下手に廊下に出る訳にもいかずにぼーっとしていたんだが…… 夏休みでも部活はあるからな。

 グランドでは野球部と陸上、体育館はバスケ部。校舎の屋上からは楽器の音。

 つまり、確実にどこかに誰かがいるだろう。


 そんな所を、全裸で歩き回るのは、ちょっと拙くないか?

 そう思って実験室に飛び散った薬品の処理とかの片付けをしていたら、だ。

 バスタオルを片手に戻ってきた先生に、思いっきりどやされたんだ。


「何をしてるのよぉ! 早くシャワーで身体に付いた薬品を洗い流さないと……

 もういい! 病院に行くわよっ」


 そのまま、病院に担ぎ込まれて…… うん、いつもの病院にだ。

 事前に連絡が言っていたようで、看護婦さんが昏ぁい笑顔で待ち受けていたよ。

 すぐに、風呂場に放り込まれて身体を洗われた俺なんだが。

 看護婦さんの水着姿って…… うん、今年の流行はスカートっぽいやつか。


「ぅやかましいっ!」どばだばどばだば……


 考えが読まれていたのか、俺はホースで思いっきり水洗いされたんだが。なんで俺の考えているのがバレたんだろう。解せん。

 10分後、ブロアーで水分を拭き飛ばしてからベッドに連行。

 それもベッドの四隅に手首足首をバンザーイって姿でくくり付けられたんだ。


「武士の情けよ。手当てが終わったら何かかけてあげるからね」


 うわああん!

 泣くに泣けないというのは、この事だ。かたやボーイッシュな看護婦さん。

 かたやクール系の医務室の先生に両側から薬を塗られているんだ。

 それも、毛先の柔らかい刷毛を使って全身くまなく薬を塗られたんだが。


「ふむ、ここにも塗っておかないと」

「ちょっと待って、トング持ってくる。手袋ごしでも掴むのは……」


 医療用のトングって初めて見たけど、ハサミみたいな形して…… あふん。


 強力な酸を浴びた時の応急処置は、とにかく薬を水で洗い流す事だ。それから重炭酸ソーダの溶液で洗って、またそれを水で洗い流すんだ。

 ちなみに、服についた酸はまま放っておくと繊維がボロボロになるから、重炭酸ソーダを使って中和している最中だ。


 そんなこんなで、冒頭に戻るんだが……

 とにかくすごい勢いで怒られて、こってりと徹夜で絞られたんだが……


 2人とも回復魔法の使い方…… なんかおかしくない?

この話のネタは父の体験談に基づいています。

本人は、昭和時代の楽しい思い出だの、若気の至りだの言っていましたけどね。

ちなみに学生服(冬服)は一式残っていますが、夏ズボンは、残っていません。

酸を浴びた服って、ちゃんとケアをしなかったら確実にボロボロになるのです。

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