プロローグ
俺の名前は星崎 疾風。
どこにでもいる、何の変哲もない16歳の学徒──男子高校生だ。
そして、俺は軽い引きこもりって事になるか。
外に出るのが怖いとか、妄想の世界で2次元嫁と楽しく暮らしたいなんて理由で引きこもっているんじゃない。
ぶっちゃけるとさ、何もかもが、こう……
何もかもが、さ。どーでも良くなっちまったんだよね。
でもなぁ、俺の事を責めないでくれよ。
あれだけの体験をすれば、誰だって引きこもりになると思うよ。
それ以外の点については健全な…… 健全だよな、俺。
2次元嫁なんか興味は無いし、俺はデブでもなければ臭くもないから……
だから、その話題はこっちに置いておこう。
たしかに引きこもりって聞くと、ちょっとおかしい奴という印象があるかも知れないけれど、俺はそんなのじゃないから。
別に他の人と違った所なんか…… いや、あると言えば、あるか……
だいたい2世代くらいの間隔で異能者が生まれる家系に生まれたって事かな。
おい、ちょっと待て。異能者って言っても、オカルトとかそっち系じゃない。
人間なら誰でも──ヒトもエルフもドワーフも関係なく──生まれつき持っている能力の一部が、ちょっとだけ発達しているだけだ。
本当に──ただそれだけの事なんだ。
だって目覚める異能はひとつだけだし、異能に目覚める能力もさまざまだ。
たとえば手先が器用だとか、妖怪とのコミニュケーションが上手だとか。
あるいは習字が上手だとか、謡いや舞いが上手に出来るとかだな。
何を言いたいかと言うと、ガチャ引くまでは分からないってこった。
そうだなあ、身近なところでは爺ちゃんが異能者なんだけどさ。
能力は千里眼ぽい何かだって言ってたぞ。
「なに、ちょっと目が良いだけの事じゃろ。だっはっはっ」
そう言って笑う爺ちゃんだが…… 実は凄い人なのかもね。
世界戦争… 歴史の授業で習ったから知ってるだろ。
全てを終わらせるって言われたあの戦争だよ。
あのとき召集令状に従って、新大陸に出征した爺ちゃんは神業的な射撃術を持つ超A級の狙撃兵として恐れられていたらしい。
あの戦争では、新大陸の西半分くらいはヤポネス連邦──大日本帝国を盟主とする巨大な海洋国家──の版図になったかも知れない。
でも時の帝が戦線拡大と長期戦をお望みにならなかったから、適当なところでイビムと手打ちをして今に至る。
21世紀になった今では、当時敵だった人とも仲良くやっているようだ。国際郵便で爺ちゃん宛てに手紙が来てるのは、たぶんそう言う事なんだろうね。
昔の人も言っていただろ。仲よき事は美しき哉ってさ。
俺もそれが一番いい事だと思ってる。
そもそも、今は地球人同士でいがみ合っている場合じゃないからな。
だって空を見ろよ。ところどころに浮かんでいる不気味な色をしている雲。
あれを見れば、そんな場合じゃないってのは嫌でも分かるってもんだろ?
だから何だと言われても困るけどな。
じゃあ、異能者の事について、最後にひとつだけ言っておこうか。
俺たちの世代…… つまり異能者が出る世代となんだが。
幸か不幸か、俺が異能に目覚める事は無かった…… と思うんだよね。
爺ちゃんに言わせると、志帆…… 俺の2歳年下の妹は異能に目覚めたらしいんだ。
「だっはっはっ…… 志帆が目覚めた異能は知力だ。初代様と同じとはなあ」
「初代様と同じって?」
初代様がした事は…… あれだな、時々ラノベで出てくる内政チートとかってやつだ。応仁の乱で里を守り切ったのは良いけれど……
「初代様の考え方に、だんだん周りの人間が付いて行けなくなったんじゃな。
初代様のおかげで人々の暮らしは格段に良くなったというのにのう」
混乱が静まった途端に、いわゆる「手のひら」って奴をくらってさ。
そのため、初代様は故郷を捨てて甲斐で暮らすようになった…… らしい。
でも、今はそんな事はどーだっていい。
ただひとつ言えるのは志帆が異能に目覚めたって事だ。
そして、俺は…… 異能者じゃないと思う。
ごく普通の、どこにでもいる高校生… ちょっと引きこもり気味だけどな!
でも、それだけの事に過ぎないと思うんだ。
異能者って、何だか分からないけど凄い能力の持ち主っぽい人物?
何となく、そんな気がしたりしなかったり。




