第五幕 献上品
「陛下!勇者ハロルドが戻りました。報告があるそうです!」
「誰それ?…あ、思い出した!あのコウモリでくたばって、わしの晩御飯を質素にしたやつか?!」
「確かにその者でございます…お会いになられますか…?」
「分かった…会おう…」
王の内心は、「はぁ、やだやだ…」という疲労感と、また新たなトラブルが起こるのではないかという警戒心でいっぱいだった。
謁見の間で、ハロルドは再び王の前に立つ。
「勇者ハロルドよ!活躍は聞いておるぞ!この度は何か報告があるそうじゃな?」
ハロルドは何も言わずに頷く。
「なるほど!あの大ザルを倒したのか!素晴らしい成長じゃ!何?!献上品もあるじゃと?」
王は内心「やるじゃないか、コイツ!」と喜びと驚きが入り混じっていた。
ハロルドは荷物の中から大ザルの首を取り出し、王に献上した。
「お、おお…成長の成果じゃな。大臣!褒美を取らせ!」
王は、今度こそ良い褒美を渡すことで、勇者のモチベーションを上げようと考えた。
大臣は王に目配せし、王もそれに気づく。
「勇者ハロルドよ、これが褒美だ!」
褒美を受け取ったハロルドは、謁見の間を後にした。
「行ったか…?」
「そのようですな…」
「…ところで、いくら渡した?」
「300ゴールドほど。」
「うむ、その程度なら何とかなるだろう…ところで大臣…」
「は!」
「この大ザルの首、どうする?お前いるか?」
「さすがに、ちょっと…」
「そっちの兵士は?」
兵士は視線を逸らした。
「だよな…どうするんだよ、これ…兵士、ちょっと捨ててきてくれないか?」
「かしこまりました。」
「献上品ならもうちょっと考えてくれ!大ザルの首なんか貰っても嬉しくもなんともない!何に使えるんだよ!処分費用がかかるだけじゃないか?!」
王の怒りを、大臣がなだめる。
「陛下、落ち着いてください。」
「…すまん、わしとしたことが、取り乱してしまった。ところで大臣…分かっておるな…?」
大臣は、王の苦悩と疲労を、食事の面でも支えようとした。
「晩御飯は質素なものを用意いたします。」
「うむ。お前のような賢い者が臣下にいて、わしは助かる。」