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王様の憂鬱  作者: MEI
3/8

第三幕 勇者復活

「え?勇者ハロルド?誰だっけ?」

「76人目の勇者でございます、我が王よ。」

「それで、その勇者ハロルドがどうしたのじゃ?」

「旅の途中で息絶えておりました…」

「え?!76人目ってついこないだじゃないか?」

「はい。コウモリの攻撃が死因のようです。」


王は自分の耳を疑った。期待をかけて送り出した勇者が、旅に出てわずか数日で息絶え、しかもその死因が最も弱い魔物の一つであるコウモリだと聞いて、彼は絶望的な気分になった。


運び込まれたハロルドの遺体を見て、王は驚きを隠せない。


「コウモリで死ぬのか?馬鹿なのか?!…で、これを蘇生しないとダメなのか?」

「はい…」

「…ちょっと教会の関係者を呼んで?」


教会関係者が到着する。彼は王の苦悩など気にも留めない様子で、遺体を検分し、商売じみた口調で告げた。


「この遺体の状況から見て、当教会に500ゴールドほどご寄付いただければ…」

「おい、兵士!コイツはいくら持ってた?」

「120ゴールドほどかと。」

「コイツの手持ちの半分を貰っても大赤字じゃないか?!大臣を呼べ!」


大臣が駆けつける。王は大臣に、国民の税金をこれ以上無駄にできないという切実な思いをぶつけた。


「大臣、何か勇者なんとかを蘇生しないといけないんだが…」

「は…国庫の問題でございますな?」

「そうだ!今、教会の人に聞いたら500ゴールドだって!」

「…臨時徴税を行えば、何とかなるかと!」

「臨時徴税はいかん!この前、63人目くらいの勇者の時にやってるから、国民の財布には頼れん!」


謁見の間に沈黙が流れる。王は自らの不甲斐なさと、どうにもならない現状に歯噛みする。


「教会の人、少し値下げできないか?」


教会関係者との値引き交渉は、王にとって屈辱的なものだった。国民の命を守るという崇高な使命が、たかが金の交渉に成り下がってしまったのだ。


「…かしこまりました。では、450ゴールドではいかがでしょうか?」

「もう一声!」

「400!」


王は大臣と顔を見合わせ、大臣が頷く。大臣は、王の苦悩を少しでも和らげようと、この金額で妥協すべきだと判断した。


「それでよろしく!」

「はは…」


教会関係者はハロルドの遺体を連れて謁見の間を後にした。


「行ったか…?」

「行ったようですな…ところで陛下、今晩の晩御飯のメニューでございますが…」


この状況で晩御飯の話をする大臣に、王は一瞬呆然としたが、大臣は王の心境を察し、少しでも気を紛らわせようとしているのだと悟った。


「なるべく質素なものにしてくれ!」

「かしこまりました…」


第三幕 勇者復活

蘇生したハロルドは、再び謁見の間にいた。


「おぉ…勇者ハロルドよ!死んでしまうとは情けない…」


王は表向きは勇者を励ます言葉をかけるが、内心は「何やったらコウモリ相手に死ぬんだよ!レベル上げしてから戦えよ!」と毒づいていた。それは、国の未来を担う勇者が、自身の期待を大きく下回る存在だったことへの失望だった。


「勇者よ!何とか魔王を倒してくれ!そなただけが頼りなのだ!」


ハロルドが謁見の間を辞去すると、王は兵士に尋ねた。


「行ったか…?」

「はい。」

「ちょっと、あいつに兵士の戦闘マニュアル的なものをあげといてくれ。」

「は!」


このマニュアルは、王が長年培ってきた経験と知恵の結晶だった。それを勇者に渡すことで、二度と同じ過ちを繰り返さないでほしいという、王の切なる願いが込められていた。


「ところで、コウモリなんて、ぶっちゃけお前でも余裕だろう?」

「…余裕というか、相手にもならないというか、国民でも素手でなんとかなりますな。」

「…頭が痛くなってきた…あいつ大丈夫なのか?城下町でゴロツキに絡まれてボコボコにされちゃうレベルなんじゃないのか?」

「報告によると、3日前に既にボコボコにされ、宿屋で寝込んだそうです。」


再び、沈黙が訪れる。王の心は、絶望の淵に沈んでいった。


「お前、あの勇者なんとかの代わりに魔王を倒してきてくれないか?」


この言葉は、王の最後の望みだった。しかし、兵士の返答は王の現実を突きつけた。


「陛下!私が行ってしまったら、誰が御身をお守りするのです?!」

「そ、そうじゃな。わしとしたことが取り乱してしまった。すまん。」

「大臣を呼んでくれ!」

「はは!」


大臣が現れる。


「国王陛下!お呼びでございましょうか?」

「忙しいところすまんが、さっきの勇者なんとかが武器防具屋の前を通りかかった時に、値引きセールをするように店主に言っておいてくれ!」

「妙計でございますな!手配いたします!」


大臣は、この小さな計略が、王の心をどれほど救うかを知っていた。


「これでコウモリにはやられまい…」


王は小さく呟いた。

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