第二幕 勇者死す
「え?勇者ハロルド?誰だっけ?」
「76人目の勇者でございます、我が王よ。」
「それで、その勇者ハロルドがどうしたのじゃ?」
「旅の途中で息絶えておりました…」
「え?!76人目ってついこないだじゃないか?」
「はい。コウモリの攻撃が死因のようです。」
王は自分の耳を疑った。期待をかけて送り出した勇者が、旅に出てわずか数日で息絶え、しかもその死因が最も弱い魔物の一つであるコウモリだと聞いて、彼は絶望的な気分になった。
運び込まれたハロルドの遺体を見て、王は驚きを隠せない。
「コウモリで死ぬのか?馬鹿なのか?!…で、これを蘇生しないとダメなのか?」
「はい…」
「…ちょっと教会の関係者を呼んで?」
教会関係者が到着する。彼は王の苦悩など気にも留めない様子で、遺体を検分し、商売じみた口調で告げた。
「この遺体の状況から見て、当教会に500ゴールドほどご寄付いただければ…」
「おい、兵士!コイツはいくら持ってた?」
「120ゴールドほどかと。」
「コイツの手持ちの半分を貰っても大赤字じゃないか?!大臣を呼べ!」
大臣が駆けつける。王は大臣に、国民の税金をこれ以上無駄にできないという切実な思いをぶつけた。
「大臣、何か勇者なんとかを蘇生しないといけないんだが…」
「は…国庫の問題でございますな?」
「そうだ!今、教会の人に聞いたら500ゴールドだって!」
「…臨時徴税を行えば、何とかなるかと!」
「臨時徴税はいかん!この前、63人目くらいの勇者の時にやってるから、国民の財布には頼れん!」
謁見の間に沈黙が流れる。王は自らの不甲斐なさと、どうにもならない現状に歯噛みする。
「教会の人、少し値下げできないか?」
教会関係者との値引き交渉は、王にとって屈辱的なものだった。国民の命を守るという崇高な使命が、たかが金の交渉に成り下がってしまったのだ。
「…かしこまりました。では、450ゴールドではいかがでしょうか?」
「もう一声!」
「400!」
王は大臣と顔を見合わせ、大臣が頷く。大臣は、王の苦悩を少しでも和らげようと、この金額で妥協すべきだと判断した。
「それでよろしく!」
「はは…」
教会関係者はハロルドの遺体を連れて謁見の間を後にした。
「行ったか…?」
「行ったようですな…ところで陛下、今晩の晩御飯のメニューでございますが…」
この状況で晩御飯の話をする大臣に、王は一瞬呆然としたが、大臣は王の心境を察し、少しでも気を紛らわせようとしているのだと悟った。
「なるべく質素なものにしてくれ!」
「かしこまりました…」




