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第2話 新しい日常の始まり

 朝日が差し込む窓の外を眺めながら、瑠花ルカはベッドからゆっくりと起き上がった。異世界に転生してから数日が経ち、彼は少しずつこの世界での生活に慣れ始めていた。とはいえ、毎朝目を覚ますたびに、この世界が本当に自分の現実だということに驚きを隠せない。


「これが、俺の日常か…」


 ルカは鏡を見つめながら、アニメで見慣れたルカの顔に軽く微笑みを浮かべた。心の中で何度も繰り返す「現実だ」という言葉が、徐々に確信に変わっていく。


 その日の授業も、特に大きな事件もなく過ぎていった。マリが隣に座っているだけで、ルカは心の中で歓喜していた。アニメで見たあのマリが、今や自分の隣にいて、微笑みかけてくれるのだ。まるで夢のような日常だが、それが現実なのだ。


「ねぇ、ルカ。今日も一緒に帰ろう?」


 放課後のチャイムが鳴ると同時に、マリが軽やかな声で言った。ルカは心臓が跳ねるのを感じながら、微笑んで頷いた。


「もちろん、喜んで!」


 二人は教室を出て、校門へと向かう。校舎を出た瞬間、ルカは一瞬立ち止まって深呼吸をした。アニメで何度も見たこの風景が、今、自分の目の前に広がっている。それだけで、彼は胸がいっぱいになった。


「すごい…本当にこの世界にいるんだ…」


 その時、背後から軽い声が聞こえた。


「お兄ちゃん、またマリ先輩と一緒なの?」


 振り返ると、そこには瑠花の義妹、彩音が立っていた。彼女はルカに小さく微笑みかけたが、その瞳の奥には少しばかりの寂しさが見て取れた。


「彩音、今日もお疲れ様」


 ルカは慌てて言葉を返し、少し戸惑いながら彼女に手を振った。彩音は軽く会釈し、ちらっとマリを見た後、「じゃあね、お兄ちゃん」と静かにその場を後にした。


「彩音ちゃん、なんだか寂しそうだったね」と、マリが心配そうに呟く。


「いや、彩音は大丈夫さ。俺がちゃんと気にかけるよ」


 ルカはそう言いながらも、心の中では義妹との関係に何か複雑なものを感じていた。しかし、今はそれよりも、目の前にいるマリとの時間を大切にしたかった。


「今日はどこに行こうか?」と、マリが問いかける。


「そうだな…」ルカは少し考えた後、アニメで彼らがよく訪れていたカフェのことを思い出した。「カフェ『星凪』に行ってみない?」


 マリの顔がぱっと明るくなり、彼女は軽く頷いた。「いいわね!あそこのケーキ、美味しいのよ!」


 二人は並んで歩き始め、学園の周りを軽く散策しながらカフェへ向かった。街並みもまた、アニメそのままだった。通りを歩く人々、商店街の賑わい、全てが懐かしく、そして新鮮だった。


 カフェに到着すると、二人はいつもの席に座った。マリはメニューを眺めながら、「やっぱり、いつものショートケーキにしようかな」と小さく呟いた。


「俺も同じのにしようかな。君がいつも食べてるの、気になってたんだ」


ルカの言葉に、マリは嬉しそうに微笑んだ。「ルカと一緒だと、なんだか安心するわ」


 彼女のその一言に、ルカの心は一層温かくなった。彼はただ、彼女の笑顔を守り続けたいという思いが強くなるばかりだった。


 食事を終えた後、二人は再び街を歩き始めた。ゆっくりとした時間が流れる中で、ルカは彼女との距離が少しずつ縮まっているのを感じていた。


「今日は楽しかったわ、ありがとう」と、マリがそっとつぶやいた。


 その言葉にルカは、「こっちこそありがとう」と返しながら、心の中でこれからの日々が楽しみで仕方がないと感じていた。


 だが、楽しい時間も束の間、突然の雨が二人を襲った。降り出した雨に驚き、二人は慌てて近くのバス停へ駆け込む。


「やっぱり天気予報をチェックすべきだったな…」ルカが少し照れくさそうに言うと、マリはくすっと笑った。


「そうね。でも、ルカと一緒だから大丈夫よ」


 雨音が静かに響く中、二人はバス停で肩を寄せ合い、しばらくの間雨宿りをしていた。ルカは、マリのそばにいるこの瞬間が永遠に続けばいいのに、と心から思った。


 そして、雨が小降りになったころ、マリがそっとルカの袖を掴んだ。彼女の唇が少し動き、何かを囁いたようだったが、雨音でその言葉は聞こえなかった。


「ごめん、なんて言ったの?」


ルカが尋ねると、マリは一瞬躊躇したが、すぐに柔らかく微笑んで首を振った。


「ううん、なんでもないわ。行きましょう」


 ルカは少し不安を感じつつも、彼女の手を取り、再び歩き始めた。帰り道での穏やかな時間が流れる中、彼は義妹の彩音や、マリとのこれからの日々について考えを巡らせた。


 この世界での新しい日常が、どんな未来を見せてくれるのか。それを知るために、彼は一歩ずつ進んでいくのだった。

小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やブックマークをお願いします。作者の励みになります\( 'ω')/


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