トイレットペーパー
私はトイレットペーパーを交換しない不届き者を今後一生許さない。
突然何の話だと思われたかもしれないが、まぁまずは芯だけが残されたトイレットペーパーホルダーを見詰める、私の考えを聞いて欲しい。
『なぜ、使い切ったトイレットペーパーを交換しない』
百歩譲って替えが近くになかった等の理由があるのならば理解できる。
それでも一段落ついた後で探しにいくだとか、無いことをあらかじめ張り紙でも何でも良いから伝えておけよとは思うけれど――だとしても理解できる。
しかし、そういった理由もなく。
後ろに予備のトイレットペーパーが存在しているのにも拘らず『面倒だから』と、怠惰で交換しないような…そんな不届き者とは許す、許さない以前に分かり合えないだろう。
次にトイレを使用する人のことすら考えられず。自分本意で自分勝手に生きる人間を…己が使用したトイレットペーパーを誰が交換してくれたのか、それすら考えようともしない。自分のけつも拭けないような奴とは分かり合いたくもない。
ましてやこちら側からトイレットペーパーの位置をずらそうだとか、交換せ ずに伝言や言伝だけでも良いから――なんて譲歩するのも願い下げだ。
そうやって優しく甘やかしてきたツケがこれなのだから。
他者を思いやる心も根性も芯も育っていないズボラな人間を作りあげたのは 両親と周囲の環境だ。優しく育てたからといって周囲に優しい人間に育つ訳 でもなし、甘やかして育てたからと言って他者に甘い人間が育つ訳でない。
出来上がるのは自分に優しく、自分に甘い人間だけ。
そんな奴の所為で割を食うのは私みたいな人間だ。
「まったく憐れでならない…これならトイレットペーパーの擬人化と会話してい た方がまだ、建設的な会話と健全な関係を築けるだろうな――だってトイレット ペーパーには芯があるからね!」
「おい!私語を慎め、960番」
「す、すみません」
『…あ~あ、価値観の合う掃除好きの彼女できないかなぁ』
罰則としてトイレ掃除を行う私は、綺麗な女神様よりも家庭的な彼女を願う。