旅は道連れ世は情け
空は高く、空気は透き通ったここは確かに都会と比べると不便なところは多々あるが、それでもこの街にしかない良さがあった。
人の温かさを感じられる街。そんな情緒ある街に一つだけ残った大学。その食堂で僕はいま友人と二人、昼食を食べながら午後の講義について話していたのだが――
「――俺さ、革命的なアイデア思いついたんだよ」
「え、何?急にどうした」
「いや、この前な。サークルの友達と旅行に行く計画立ててたんだけどよぉ」
「おい、勝手に話を進めるなよ、課題は終わらせたのか?」
「旅行ってさ、予定たてたりしてる時は楽しいけど。いざその日になったら、すっごく行きたくなくなるじゃんか」
「僕と会話しろ」
「けど、急遽決まった遠出とかなら何の躊躇いもなく、そのままの勢いで靴を履けるだろ?そこで俺らは考えたんだよ」
「…はぁ」
「十一時に早めの昼ごはん食って、十二時に雷門見てって具合に、何時に何するかの予定と日程だけをあらかじめ決めといて、けど集合時間は決めないってのを思いついたんだよ」
「どういうこと?」
「何時に来ても良いようにしたんだよ。九時でも、十四時でもいつでも。予定は決まってるから、どの時間に来ても合流できるんだ」
「へぇ…でも何で、そんなこと」
「前々から決まっている集合時間があるから行きたくなくなるけど、いつ行ってもいいってなるなら、考えも変わるんじゃないかって思い付いたってわけよ」
「ふーん、面白そうだね。っで、その旅行は楽しかったの?」
「あぁ、楽しい一人旅だったぜ」
「そっ、か…」
◇
「それでこれ、浅草のお土産」
「あぁ、ありがとう」
「…」
「来週の土曜日空いてるんだけど、どっか行くか?」
「え、まじ!」
「9時集合――時間厳守でな」