天啓の恋
この世界は、生まれるときに、神様が相手を決める。
それで上手く行かないこともあるけど、それは、死別だったりすることが多いので、それをして上手く行かなかったというのは、可笑しいだろう。
縁と生き死にはどうやら管轄してる神様が違うらしいのでしかたないっぽい。
それはそれとして、私が生まれたとき、私の相手はまだ生まれていなかったけれど、ガナシャ家の次男だと決まっていた。
その時次男はまだお腹の中で、性別も分かっていなかったため、腹の中に居るのが次男と断定は出来なかったが、年が近くて良いと、母は、今妊娠している子が娘の結婚相手だと信じていた。
かくて、ガナシャ家の婦人が子供を産み落としたとき、天啓が降る。
「マーシア家長女」
誰もが愕然とした。
次男は、私の家の私の婿のはずだった。
それなのに、生まれた次男は、マーシア家長女と言われた。マーシア家は婚約者が居たが、事故で、次男が生まれる前に亡くなっていたため、どうなるのかとやきもきしていたらしい。
マーシア家の娘も、まだ五歳。人の生き死になどよく分かっていない年齢だ。今、婚約者が変わったところで、ほとんど記憶にも残っていないだろう。
そうして次男の相手が変更になったのだろうが、無くなったこちらとしてはたまったものではない。
だって、もう、ガナシャ家の次男は存在しないのだ。私に一生独身で居ろと言ったも同然。
ガナシャはもちろん、マーシアもたまったものではなかった。
人の婚約者を奪ったと後ろ指指される。それが天啓でいかんともしがたいものだったとしてもだ。
だって、家の、いや、私の相手はどうなるって事だ。
お陰で神殿側ももの凄い慌てているらしい。
いやだって、天啓だよ。縁結びの。それが剥奪されてる人が一人出来上がったわけだよ。既に天啓済みなのに。
ガナシャ家の次男が死にでもしない限り、私に次の相手は居ないわけで、いっそ殺すかって話も出たらしいけど、家の中だけで。
でも、次男に非はないわけで、だからと言って神様に文句言ったところで、もうどうにもならない。
既に私は天啓を受けているから。
じゃあ、どこかに養子に出して、ガナシャ家の次男という記録を抹消してみたらどうかって話も出たらしいんだが、天啓を受けたのはガナシャ家次男なわけで、これを変更して天罰がくだらないかって話になり、結果。
神殿の権威が大暴落した。
やっべえ、神様自殺願望あんのかな。
と、現在五歳になった私はそんなことを思った。
あ、転生者です。
いやあ、両親のもの凄い嘆きと、三家による喧々囂々の言い合いに気圧され、びっくりしたときに、うっかり前世の記憶を引っ張り出した。
二歳児の前でやるもんでは無かったんだろうね。
それとも、神様がこの言い合いなんとかしてって思ったのかもしんないけど。そんなの私の知ったこっちゃない。
だいたい、結果的に一番迷惑被ってる私が、どうして神様の事情を汲まねばならないのか。
別に結婚なんて、個人的にはしなくても良いけど、問題は、神様の天啓が被ったせいで、三家がやり玉に挙げられ、どこも良い思いをしていないってこと。
それは私の所為でも、マーシアの長女の所為でも、生まれてきたガナシャの次男の所為でもない。強いてというか、絶対というか。悪いのは、天啓降ろした人だ。人ってか、神なのか、天使なのか、役人なのかは知らないけど。
神様が縁組みしてるくらいだから、前世の記憶とか、転生者とか、ざらに居るらしいので、私が記憶を引き出しちゃったのを言ったとしても、大して、驚かれはしないっぽい。
ただ、今のとこ、それを申告するタイミングがなくて、言ってないけど。
お陰で、和製英語とか、妙な言葉は浸透してて、うっかり使っちゃっても意味通じるのが大変助かる。
まあでも、礼儀作法のお稽古ごとが始まるときには申告しないとな。前世の常識が邪魔する可能性があるので、自己申告しとかないと、おバカのレッテルがっ。
まあ、レッテルなく、おバカである可能性は捨てきれないけど。
だって、転生とか信じられてて、言葉がある程度浸透してるってことはだよ。転生によるアドバンテージがないって事なんだよね。
怖い。算数怖い。数学か。算数までは行けるかっ。それより、歴史かなー。前から暗記物苦手だったんだよな。
いっそ、神様のせいにして、貴族辞めるか。
平民として生きられる程度の知識と、援助が貰えればワンチャン行けるのではっ。
いや、実家と繋がってると、誘拐されて殺されるな。そんな未来しか見えないわ。
何でも良いから、落ちが付いてくれないだろうか。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
鬱々とした五歳から、礼儀作法が始まり、数年。十歳になりました。
家族にはカミングアウトして、転生してました。実は二歳からって話をして、頭痛そうにされたけど、概ね好意的に受け入れられた。
兄たちは、そんなこったろうと思ったと言っていた。
「トリシャ口が悪かったもん」
そうか。私の口の悪さは、転生を疑うほどだったのか。そんな罵詈雑言吐いてたかな。
自分では分からないものだ。
そして、十。あの衝撃の事件から十年。
未だ、三家は、どうしたもんかと、問題の子供三人一緒に集めては、言い合いをしている。いい加減出尽くしたのではないかと思うが、世間は、十年程度では忘れないというか、私たち以外のブッキングを起こしていない。
お陰で私たちの事が全く風化せず、定期的にやり玉に挙げられているのだ。良い迷惑。
ここに来て、私は、もしかして、マーシア家の長女が死んだりするんじゃ無かろうかとか、ちょっと心配してる。
「ねーねー。リッタ。リッタ死んじゃったりしないよね」
と、無邪気に聞ける年でもなし。まして聞かれたマーシア家長女が居たたまれないだろう。
たまに青い顔してるの見ると、自分でも、もしかしたら。なんて思っているのかも。
いやでも、まて。
私、別に結婚しなくても良いけど、結婚してもいいわけで。
「お母様。リッタのお家に、マークがお婿に行って、ガナシャ家に私がお嫁入りすれば良いんじゃないかな」
詭弁である。
むっちゃ詭弁であるが、これしか思い浮かばなかった。
リッタは長女で家を継げる。マークは次男で、婿に入れる。そして、私は長女であるが、末っ子なので、嫁に行けるのだ。
そして、私、別にマークのことをなんとも思っていないんだが、どうやら、リッタはマークが好きで、マークは、どうなんだろ。どっちでも良いんじゃないかな。
て、考えると、マークが婿に入って、リッタと結婚し、マーシア家に入り、私は、ガナシャ家の次男に嫁入りする。
まあ、ガナシャ家次男居なくなってるけどね。ガナシャ家次男って言う概念と私が結婚すればいいだけだ。
だって、私が天啓を受けたときに、ガナシャ家次男は概念でしか存在していなかったんだから。
「トリシャ、お母様、トリシャの言ってることがよく分からないんだけれど」
まあ、困惑するよね。
でも、そろそろマーシア家長女、リッタは結婚するかしないかを決めないとまずいだろう。
だって、もう十五だ。
だからこその苦肉の策。
「えっと、リッタのお家に、マークがお婿に行くでしょ。これで、マーシア家長女とマークの天啓は良いよね」
大人は皆神妙な顔で頷く。
「ても、ガナシャ家に次男が居たって言う事実はなくならないよね」
その言葉に、何だか嫌な予感を私の両親は感じるものの、マーシア家とガナシャ家は気が付かないようで、まだ、神妙な顔で頷いている。
「なので、その、ガナシャ家次男というものに、私がお嫁入りすれば、天啓には背いてないでしょ。だって、私が天啓を受けたときは、マークはまだお腹の中に居て、次男になるか分からなかったんだから、私は、ガナシャ家次男って言うものと結婚すれば良いのよ」
得意満面でそう言ったが、全部聞いた瞬間、皆、なにか苦いものを噛み潰したような顔になった。
「トリシャ。途中までは分かったけど、最後がよく分からないわ」
代表で母が言う。まあ、母が一番付き合い長いから、私の言葉に耐性があるだけなんだけど。
本当に理解不能と頭痛そうにされ、私は、言葉を尽くして説明することにする。
「んー。私が天啓を受けたときは、まだ、マークは生まれてなかったよね」
「そうね」
母が肯定し、周りは頷く。
よし、ここまでは平気。まあ、ここで躓かれると、さすがに私も困るんだけど。
「でも、ガナシャ家の次男が結婚相手だって言われた」
「そうね」
同じように母が言い、皆が頷く。
ここも大丈夫。まあ、この辺りは事実確認だからね。
「もし、マークが女の子だったら、私の婚約者は、次に生まれてくる男の子だった可能性もあったよね」
「そうね」
母の言葉に次いで、皆頷いている。
よしよし、まだ理解されてるな。この辺りから、少しずつ可笑しくなっていくからな。
「マークが生まれても生まれてなくても、ガナシャ家次男ってものは存在するわけじゃない」
「そうね」
母も皆もまだ理解できているようでなにより。
そうなんだよ、マークと結婚しろとは言われてないんだよね。ここに抜け道があるって私思ってるの。
「で、私は末っ子だし、マークも次男だし、お家のために子供を作る必要は無いよね」
「まあ、そうとも言えるわね」
何だか母が渋い顔になっている。いや、別に子供産みたくないですって話じゃないよ。
私もマークも跡継ぎじゃないので、厳密には、子供が居なくても構わないって話。
そこの確認をして。
「なので、私は、ガナシャ家の次男という概念? 存在? もしくは、言葉? まあ、そう言うものに嫁入りすれば、私の天啓も片付くよね」
「そこで一気に理解できなくなるのだけれど」
母が沈痛な面持ちで言えば、周りもさっぱり理解できないって顔をしている。
あー。居ないものと結婚するって言うのが理解できないのか。
困ったな。概念とか、そう言う方向だと理解できないって事だよね。
あ、そうだ。
「ようは、結婚しましたって言う事実だけで、相手の居ない結婚をしたら良いかなって」
そうそう。私は結婚したって言う事実だけ残せば、天啓に背いてないって事になる。
「あー」
やっと、私の言葉に得心がいったという顔を皆がした。
紙の上だけの結婚であり、相手はマークでもない。ただ、ガナシャ家次男って言うものと紙の上だけの結婚をする。
まあ、相手が居ないから、白も黒もなく、子供も生まれない。産んだら、確実誰の子よって話になるわけだけど。
「トリシャはそれで良いの?」
「私、結婚しなくても良いかなって思ってたから、それで良いかなって」
私は別に、生涯お一人様でも良いのだ。旦那は戦死とか病死とか、事故死とかしたとでも思っておけばいい。
「でも、リッタはそうはいかないでしょ。しかも、リッタ、もう十五だよ。そろそろ結婚考えないとダメじゃない」
そう。リッタは私たちより五歳も上なんである。どう考えても、リッタのカウントダウンが始まっている。
だから、三家は焦っていたわけだ。
納得いかないけど、これが一番角が立たないのも確か。私が転生者だとカミングアウトしていたのも、功を奏した。
ようは、考え方が根本的に違うと思われている。ちょっとまって、もしかして私可笑しい子認定された。
いやまあ、皆が納得出来たんなら良いか。
結果、それで私が良いのであればと、満場一致で理解され、リッタとマークの婚約が決まった。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
そろそろ、紙の上だけの結婚をするかと思っていた頃。
ガナシャ家は、上を下への大騒ぎというか、旦那さんがつるし上げ食らっているというか。
「ここに来て、ガナシャ家次男が存在しただとっ」
マークは、お婿に行ったので、そろそろ私の結婚もなんて、両親と話していた時期だったんだよね。
「ご長男を妊娠中に、余所でおいたをしたらしいわ」
「あそこのご長男って、私の遥か年上でしたっけ?」
「いいえ」
そう。ガナシャ家、年子なんですよ。
ちょっと当主なにしてんのって、長男のお嫁様大激怒らしくて。
まあ、同じ女性として、この十七年、天啓が間違ってたって言われ続け、マーシア家にも、うちにも迷惑かけ続け、蓋を開ければ、婚外子居ました。
とか、うちも笑えない。
「私、今更それと結婚するんです?」
「そこも考え物よね」
一番迷惑被ったのは、私だと、胸を張って言える。
だいたい、ここまで黙ってたんなら、一生死ぬまで黙ってろって話。
「今更どうして、婚外子出てきちゃったんです?」
「それがね。母親を亡くして、天啓が分からなくなってしまったから、再確認したいって教会に行ったらしいのよね」
「あー。そこで、私との天啓がばれたと。それ絶対家に入れちゃだめなヤローですね」
どう考えても、貴族に取り入って楽したいヤローですよ。
「トリシャちゃん、言葉が悪いわ」
「すみません。感情が高ぶりました」
反省はしてないけど、一応殊勝な言葉を言っておく。
分かっているようで、母は、少々渋い顔だ。
「初めから独身で居ると宣言していたし、それに向けて、商売とか、はじめてたでしょ。で、そこそこうまくいってるじゃない。しかも、庶民向けでしょ」
「あ、商会ばれて、婿入り希望ですか。死ねばいいのに」
「流れるように罵倒をしてはダメよ」
「すみません。嫌悪が立ちすぎて」
もう、どう考えても、自分が楽したいとしか思えない。
いや、もしかしたらいい人なのかも知れない。知れないけど、それを覆す要素が何一つない。
あと、会ってから気に入ったりするのも、心底気持ち悪い。
気に入ったりする自分を嫌悪しそう。
「もういっそ、闇討ちとかしちゃダメでしょうかね」
「トリシャちゃん」
ガナシャ家次男とか、概念だけで十分です。
とはいえ、天啓。
無視するわけにも行かなくて、結局顔合わせすることになった。
「僕のせいで一生をふいにする子が居るなんて、可哀相だって思ったんだ」
よし、何一つときめかない上に、心底キモい。
「まあ、お気にかけていただきありがとうございます。申し訳ありませんが、このまま教会に一緒にいって頂けますか?」
とかなんとか言って、教会まで連れてきた。
このまま結婚かなとかわくわくしている男を従え、教会の聖堂に飾ってある、神様に向かって、私は、心の丈を叫ぶ。
「私、十七年、天啓が間違ってたって言われ続けて。でも、マークもリッタも好きだし、二人にはせめて幸せになって欲しいし、私、結婚良いかなって思ってたから、これもありだろって思ったんですよ。
この十七年、私は、神様だけは罵りましたが、両親も、三家の誰も恨んではいないんですよ。
十七年、私頑張りましたよね。そのご褒美がこれとか、心底軽蔑する。心底軽蔑するわ。神様。
信仰捨てて良いですかっ」
と言うか、既に私の信仰値マイナスいってるけどなっ。
でも、マイナスってことは、まだ信仰してるって事だよ。
神様はいるっては思ってるけど、これが天啓だって言うなら、私はもう、天啓を出してるものを神とは思わない。
何だろう、結婚コンサルタントアナウンス? まあ、出来の悪いアナウンスだよね。
としか思えなくなるし、もし、こいつと結婚して、子供が生まれたら、まず、あんな天啓嘘だしって子供に言い聞かせる。
私の十七年、記憶戻ってからは、十五年だけども、それを無駄にしくさった天啓など、信用するに値しないって言うか、ガナシャ家次男が婚外子だったら、最初っから婚外子って言えってんだ。
そうしたら、こんなド阿呆になる前に、性格矯正できたかも知れないのに。
片手落ち天啓降ろして、十七年不意にさせといて、これが天啓だとか、片腹痛いってんだわ。
「なんとか言ったらどうですか、神様っ」
頭ゆだるかと思うほどの罵詈雑言は、心の中でだけ発しといて、どうしてくれるんだと、叫べば。
「ナガル家長女の天啓を反故にする」
「ガナシャ家婚外子次男の天啓を反故にします」
やっとこ天啓が降りた。
「やった。勝ったー」
こんなド阿呆と結婚しなくてすむ。
お一人様万歳。
こんな不良債権と結婚するくらいだったら、一人が良いわ。
と言うか、天啓反故に出来るなら、出来るって言って欲しい。
絶対私みたいにお一人様良いなって思ってる人居るって。
教会もその辺りちゃんと整備して欲しい。結婚だけが幸せをもたらすわけじゃないんだから。
天啓降りたら、結婚しなきゃって言う風潮がいかんのだと思うよ。
私の後ろで私の罵詈雑言を聞いていた男は、天啓の反故を聞いて、あんぐりと口を開けたまま固まっているけど、もう完全に赤の他人だし、気にしない気にしない。
なんか、教会内では、天啓の反故とか初めてだとか言ってるようだけど、そんなのきっと嘘だよ。今までだってあったよ。
男でも、女でも阿呆は居るもの。托卵とかされてたらどうするの。そんなの血筋に入れて良いと思ってるの。
許されないよね。
しかし、良い仕事したな。ちゃんと婚外子って言うようになったわ。
これで、女性も男性も浮気は即バレだ。
「トリシャちゃん」
遅れて追いかけてきた家族に、私は満面の笑みを向ける。
「お母様。私、勝ち取りましたっ」
正にやりきったという顔をして母を見れば。
「凄いわね。でも、言葉が悪いわ。マナーをきっちりやり直しましょうね」
「……はい」
母が言い切った。怖い。いったいどれだけ絞られるんだろう。
「まあ、トリシャは頑張ったよ」
父は、慰めにならないことを言う。いや、今じゃない。私が欲しいのは、今じゃないんですよ。母の、母のお怒りを収める言葉を。
しかし、父は、にっこりと笑って私の視線から逃げる。そうですか。父も無理ですか。分かってた。
「良い仕事したよ。トリシャ」
それどっちの意味ですかね。やさぐれますよ。大兄。
「まあ、トリシャだしね」
相変わらず。相変わらず軽い。小兄。
そんな全く母の言葉に対する援護射撃のないまま、大わらわになっている教会を我々家族は悠然とあとにした。
いやだって、天啓降ればもう私関係ないですしね。
というか、教会、過去を蓄積させてんだろうから、被ったときに婚外子の可能性をほのめかせただろうって思ってるので、いい気味。
いや、株が大暴落してたのも、いい気味って思ったけどね。
おそらく母も思ってるんだろう。実に清々しい笑みで颯爽と歩いている。
とりあえず、これで、この騒動は一段落だね。
まあ、帰ったら地獄が待ってるけど。母は、有言実行の人なので。
それから半年ほどみっちりと、マナーを矯正された。
でも、どうしても、前世の口の悪さは直らず。時折飛び出すのは、ご愛敬って事で一つ。と、土下座して、許して貰った。
父も、兄たちも苦笑いしてたよね。
でも、仕方ないんだ。口の悪さは、一度転生したくらいじゃ直らなかったんだ。
いや、二度目も分かんないな。
次、転生して、記憶が戻ることがあったら、私に演技力を是非。取り繕えるものを装備して欲しい。
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇
その後。
今回の騒動を受け、天啓が変わった。
予想通り、婚外子がいることが即バレ、修羅場一直線が勃発。
まあ、知らん間に、托卵されてたり、余所のお腹に居たりしたら、困っちゃうよね。
お役所は、色んな部署で阿鼻叫喚が繰り広げられているらしい。
家庭内は、血の雨降る一歩手前まで行くこともあるようだ。
さらに、天啓だからどうしたって結婚すんだろってたかを括って、花を渡り歩くおバカが、そこそこ反故にされたりしているらしい。
やっぱり、婚約とか取り仕切ってるところが頭抱えているらしい。
まあ、今までむっちゃ暇だったはずだもんね。がんばれ。増員されるだろうきっと。
個人的には、結婚は自由にしたほうがいいんじゃないかとも思う。
でも、天啓で幸せになってる人も居るし、天啓のお陰で、家を気にせず結婚できるのは、良いことだとも思っているので、これはこれで良いんじゃないかな。
バカは淘汰されれば良いだけだしな。
そんな風に思っていた私に、再度天啓が降りるとか、まあ、困ったもんだ。
「子育てすれば良いんでしょうか。お母様」
「その感覚はお捨てなさいな」
一応婿候補であるし、子育ては正しくないんだけど。
孤児、ゼロ歳児を教会から恭しく渡され、途方に暮れる私に、母は、とりあえず突っ込んでくれた。
本当、この子どうすんだろ。
あ、捨て子は、天啓が分からなくなっているので、強制的に、再度天啓を確認するんだよ。
で、私がぶち当たっちゃったわけだ。
まあ、子供は嫌いじゃないし、兄嫁も母も手伝ってくれるだろうから、いっちょ子育て頑張ってみますか。
まあ、なるようになるだろうし、いやなら反故にすれば良いんだよ。
相性なんて、きっと育てば変わるんだろうしね。
今回は、意外と名前が出てきました。
主人公視点なので、自分ちの家の名前が出て来なくて、このまま出て来なくなるのかって思ったら、最後の最後で出ました。
ちなみに、愛称のつもりだったけど、リッタの名前が思いつかなかったので、これが名前です。
いや、なんか、うまく落ちてない気もしますが、これ以上無理だった。