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相手のせりふを投げ返しただけなのに、怒られるのは何故なのだ!?

作者: こぴぼう

授業の合間の休み時間に、他のクラスに行く理由ってなんだった?


教科書を借りに行ったり、辞書を借りに行ったり、貸したジュース代を取り立てに行ったり。自分はそれしか目的がなかったから、休み時間に結構な頻度でウチのクラスへ来てる男子を見て

「あいつ教科書忘れ過ぎじゃね?しょっちゅうウチのクラスに教科書借りに来てるよな」


と感想を述べた俺は間違ってないと思う。親友にデカイ溜息を吐かれたが、その理由が分からない。


「お前さぁ…んな訳ないだろ!あれどう見ても彼女に会いに来てんじゃん!

お前って、どうもズレてんだよな…」

あぁ、そういう事か。いや、俺がズレてるってのには賛成しかねるところだが。


その(くだん)の女子が他クラスの彼氏の事で女子集団に取り囲まれている。俺が教室に残っていたにもかかわらず始まってしまったのはいい迷惑だ。まぁ、向こう(女子集団)も俺に残られて迷惑だと思ってるだろうが。


「あのさ、こんな事言いたくないんだけど、井川君と釣り合ってないと思うんだけど。よく付き合ってられるね。ていうか、別れてよ」

言いたくないなら言わなくてもいい内容だな、おい…

「そうだよ、佐原さんてさぁ言ってもまぁ…普通じゃん?イケメンの井川君と付き合ってて釣り合わないなって思わない?」

相手の佐原に口を挟む隙も与えず、女子の集団は口々に攻めたてる。


ぎゃいぎゃいと煩い集団に、(ようや)く佐原が返した一言はキッパリとした「別れません」だった。

やるじゃないか、佐原。佐原のこの一言に興味深く感じて、つい疑問を口にしてしまった。


「あのさ、釣り合わない釣り合わないって言ってるけど、佐原が井川と別れたら自分が付き合いたいって思ってるんじゃないの?でも、佐原を、普通だから釣り合わない別れろって言うなら、自分たちだって付き合えなくない?」

突然話しかけた俺をバッとみた女子集団は一瞬驚いた様だったが、目を釣り上げて怒りだした。


「なによそれ!私達がブスだっての?つか、あんた何なのよ!すごい失礼なんだけど!」

彼女らの言葉に、驚きしかない。


「え、ブスとは言ってないよね。俺、普通っていったけど?さっき佐原の事、普通普通って言ってたのに自分が言われたらそんなに怒る言葉なの?だったらあんたらも佐原にすごい失礼なんじゃないの?」

心底不思議である。


一瞬怯んだ女子集団だったが、そんな事では激情の炎は消えないらしい。

「女の子に対して、そういう事いうあんたが失礼なんだけど!」

「えぇ!?佐原だって女の子だよ?だったら自分たちが失礼な事言ってるんじゃないの?」

心底不思議である。


一瞬黙ったものの、三度(みたび)息を吹き返す女子集団。

「私達は良いのよ!女子だから。男子が言うのが失礼だ、って言ってんの」ドヤ顔された。

「女子が女子に言うなら何を言っても失礼にはならないって事?そういう暗黙のルールがあるって事か!それは分からなかったな、不勉強ですまん」

俺の返しに顔を引きつらせてる女子集団。再び彼女らが口を開く前に自分の疑問をぶつけてみよう。

「でもさ、井川の気持ちはどうなんの?あいつが佐原に振り向いて欲しくて努力して、価値が上がった途端に彼女を自由に選べなくなるの?それって井川が可哀想じゃない?」


「あ、あ、アンタに関係ないでしょっっ!!」

「そうなんだけど、それを言うならアンタたちも二人の事に関係ないでしょ?

それにすっごく気になるんだけど、大事な彼女に嫌がらせして、別れさせられて、悲しい思いさせられた井川が元凶のアンタらと次に付き合うって本気で思ってるの?」

とにかく心の底から不思議しかない。それに俺は彼女らが発した言葉を投げ返しただけなんだけど、自分が言われたらそんなに怒る様な事言っちゃダメだろ。あ、女子が女子に言うなら良いんだっけ?


「佐原っ!!大丈夫!?」

その時勢い良く教室に入って来たのは他でもない井川だった。皆は突然登場した井川に釘付けだったが、俺はその後ろにニヤニヤした親友の姿を見つけた。もしかして、部活中の井川を呼びに行ってくれたのか。当人達で話せばいい、と親友と教室を後にした。


「委員会終わるの遅えよ」

「悪りぃ、実は廊下で笑いながら聞いてた。お前が悪気なく女子をぶった切ってるのを最後まで堪能したいのを途中で諦めて、井川を呼びに行ったんだぞ」

「お前もたまには役に立つな。でも、知らなかったなー、女子が女子に言うなら何言っても失礼にならない暗黙のルールがあるんだって、知ってた?それでよく喧嘩にならないよなぁ、女子ってすげぇな」

ぶっはぁぁ!!!と親友が盛大に吹いた。汚えな!!


「おまっ、マジか!信じて…たのか、嘘に…決まってんじゃん…!」親友は笑い過ぎで途切れ途切れにしか喋れないらしい。

「そうなの!?嘘かよ、教えてくれてありがとう」

「ブフゥ!お前の…そのたまに律儀なのは…何…?」


翌日、いつも通りウチの教室に来た井川は、いつもと違って俺のところへ来た。

「昨日はありがとう。あの後女子達に話しをして、俺は佐原がずっと好きだったから漸く付き合えてすごく嬉しいし、別れるつもりはない。もし振られても他の女の子の事は好きにならないし、その後もずっと佐原が好きって言ったよ。女子達ちょっと引いてた(笑)」


井川はそれだけ報告して愛する彼女のもとへ行った。


その時親友が小学生の時に、初めて俺と話した事を思い出していたとは思いもしなかった。

「お前の事、皆迷惑なんだよ!びんぼ…」「え!?俺は特に迷惑じゃないけど!皆って全員の事だろ?俺は違うから皆じゃないよ!」

井川は数年前まで太って成績もイマイチでした。当時たまたま主人公と雑談した時に好きな子がいるから、努力する!と言ったのを主人公が覚えていました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の鈍感力。すげぇ。鈍感っていうより真に受ける朴訥力? こういうメンタルには憧れるけど、なりたくはない(;^ω^) [一言] 彼女と継続交際おめでとう!!
[一言] アボリジニもびっくりのブーメランの名手ですな
[一言] 先々のこと考えなくていいならこんな風に言ってやりたいなーと思いつつ。 現実ではそんな勇気もないので、この作品の中だけでも主人公にはいい意味で貫いてほしいと思う。
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