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7 綾音の提案

 あれからまた、一週間ほど経ち。


 ――私はその間、四六時中ずっと、生きた心地がしなかった。


「……まだ観なきゃダメ?」


「はい。寝落ちしてもいいですから」


 しかしどういうわけか、綾音はとある提案を持ち掛けてきた。


 曰く、彼女が逐一記録していた"動画"。

 私がその映像を全て視聴すれば、それらを完全に消去してくれるとのことだった。


「……あ。この回は飛ばしていいですよ」


 ――夜中の二時過ぎ。


 私たちはいつものソファに座りながら、薄暗い部屋の中。

 プロジェクターで壁に映し出されたそれを眺めていた。


「……なんで」


「ちょっとこの回は……自分で言うのもなんですけど。

……トラウマになるかも。

とくに音、つーか"声"」


 ……まあその分、"使える"んですけどね、と。


「……もう充分、トラウマだっての」


 私は感情を込めずに吐き捨てた。


 冗談じゃない。笑えない。

 最近、何に笑うこともなくなった。

 何も面白くない。


「……はぁ」


 まだ、三回分。

 私はそれを観終える度、心臓の音が大きくなっていくのが分かった。

 このままだと、半分も行かない内に気を失ってしまうかもしれない。


 ――映像もさることながら、"音"がキツかった。


 何かのモーターの駆動音。

 何かの器具と器具とが擦れ合う音。

 ハンバーグのタネをコネているような肉音。


 ……自分のものとも思いたくないような声。


 自分が眠ったまま弄ばれるそれら全ての音を、ヘッドホンで聞かされていた。

 私はもう身体だけでなく、頭までおかしくなりそうで。


 そして一番嫌なのは、動画に呼応するように身体が反応していることだった。


「じゃあ……」


 綾音の忠告通り、件の回は飛ばし。


 プロジェクターに繋いだノートPCを操作し、次の動画を再生した。


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