2 薄暗い部屋の中
※性描写あり。
郊外に位置するそのマンションの一室は、私には少し広すぎた。
一人暮らしなので、帰ってきても部屋は暗いまま。
ペットもいないので、誰も迎えてはくれない。
「先輩が悪いんですよ」
ただその寂しい住処も、彼女といると少しだけ楽しかった。
私はこれも一人では持て余すサイズのソファに仰向けで倒れ込み、
床に膝を着いた綾音が顔を覗き込んでいる。
「こんな美人なのに一度も彼氏作らないって……。
そりゃあのクソ女が……大宮が目付けますよ」
私同様、綾音は一人暮らしだ。
だから帰りがどれだけ遅くなろうと、誰に何を言われることもない。
――たとえ、泊まっていこうとも。
「……先輩ホント"ここ"好きですよね」
「……別に……好きじゃない……」
明かりも点けず、薄暗い部屋の中。
ムードを出すためというより、単に私が恥ずかしいから。
「いや、なんで嘘吐くんですか。
めっちゃ反応してるじゃないですか」
誤魔化せると思ってるんですか、と。
そのまま、後輩の綾音にされるがまま。
抵抗もしない。
……私は別に、この子のことが好きなわけでもない。
何なら、彼女を含め"同性愛者"を嫌悪してすらいる。
「……言わなくて、いい……から……」
「……顔背けないでくださいよ。
こっち向かないと止めますよ」
綾音はピタッと動きを止め、苛立った様子で私を睨みつけた。
「こっち向けっつってんだろ」
私はいつも、"受ける"側。
年齢も力関係も、学力も身長も、何もかも私より下のはずの彼女が。
いつも、"この時"だけは明らかに上になる。
――正直言って、私はその"状況"が結構好きだった。
彼女に、ではなく。
そういうシチュエーションに、自分が置かれていることに。
自分がその当事者で、今まさに辱められているという事実に。
自分でも信じられないほど、どうしようもないほど興奮してしまう。
綾音はそれを知ってか知らずか、いつしかその本性を隠さなくなり。
「そうそう。私と目合わせたまま……。
はい、良いですよ。声出して」
――嫌なのに。抗えばいいのに。
私は襲い来る"それ"に身体を大きく震わせた。
後輩の手で、指で、情けない声を上げながら。
薄暗いとは言え、何も見えないわけではない。
カーテンは閉じてはいるが、外の明かりは仄かに射し込んでいて。
つまり、顔も身体も。
この子に全部見られている。
私は息を荒げ、しばらく放心状態でソファに横たわり。
綾音はそんな私を、どこか満足気に眺めていた。
◇
「目だけじゃなくて……"こっち"も合わせます?」
やっと呼吸が落ち着いてから、冗談めいた口調で綾音が訊いてきた。
「……シャワー浴びる」
本当は帰宅してすぐ浴びたかったのだが……。
綾音は待ってくれなかった。
「すっかり"ぐっしょぐしょ"ですもんね~……イッた!」
私は思い切り彼女の肩を殴り。
「次。指折るわよ」
「それは困りますね……先輩の可愛い声聞けなくなっちゃう」
私は薄ら笑いを浮かべる彼女を睨んでから、未だフラついた足で浴室へ向かった。