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花火大会が行われるモディカの街は、見物客で既にごった返していた。花火が打ち上げられる海岸沿いに向かって、洪水のような人の波が出来ている。
十九時を過ぎ、薄暗くなった街の通りを色鮮やかなイルミネーションや屋台の灯りが美しく照らしていた。
子供達がアニメキャラクターを模したお面を被って、ユリの足元をすり抜けて行く。
民家の窓には小さな鐘が取り付けられており、吹き抜ける風に揺れて心地よい旋律を奏でている。
「——ユリ」
デイジーの声が背後から聞こえ、ユリは振り向いた。彼は手に持っていた小さな紙袋をユリに差し出す。紙袋は赤いリボンでラッピングされていた。
「あ、あの……これ。俺からユリへのプレゼント。その浴衣に似合うか
なと思ってさ……」
彼は頬を指でさすりながら、恥ずかしそうに言った。
「わあ、ありがとうデイジー。開けてもいいですか?」
デイジーが黙って頷く。ユリが袋を開けると、白く光るデイジーの花飾りが付いたヘアピンが入っていた。
「とても綺麗ですね。ちょっと待っていてください!」
ユリは屋台に置いてある鏡の前で、髪にヘアピンを付ける。
「どうですか?」
「う、うん。とても似合ってるよ」
「凄く嬉しい!私の宝物にしますね!」
ユリはデイジーの手を両手で握った。そして煌めくアンバーの瞳で、彼をじっと見つめながら微笑んだ。
デイジーは途端に胸が熱くなった。——まただ。彼女の笑顔を見ると堪らなく嬉しくなる。
そして、こう思う。〝女神さま〟いや、だが俺にとって彼女は比喩ではなく本当の意味での神なのかもしれない。
なにせ自分を描き、創造したのは彼女だからだ。だが、そうだとするとこの気持ちは一体なんなのだろう……?
彼女は以前リリーの祖母を具現化した時、俺に自分が描いて具現化し
た祖母は所詮、紛い物だと言った。
本物の祖母を模して創っただけだと。だとしたら、俺は何なんだ。何者なんだ。どうしてこんな感情が湧いてくる。
この感情すら彼女が、俺を描いた際にイメージした、ただの情報だというのか。何より俺はいつまで存在を保っていられるんだ。いつまで彼女の傍に居られる——?
「……イジー?」
ユリの声に彼は我に帰った。
「大丈夫ですか?何か難しい顔をしていましたが……」
彼女は心配げにデイジーの顔を覗き込んだ。
「いや……ごめん。ちょっと考え事してただけだよ」
デイジーは無理やり作り笑顔をしてみせる。
「何か悩み事があったら何でも私に相談してくださいね」




