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彼女の命と億万の命  作者: 春夫
6/13

就寝

「はぁ、面倒ごと押し付けられたな。」


院長室を出たノアは自室に向かいながら、豪鬼から新たに指示された仕事に頭を悩ませた。

それは『アオバ、カエデ、イオリの教育』だった。

それにハンターとしての訓練はもちろん、社会でやっていけるよう都市での立場、世の常識、社会知識の向上も含まれていた。


ノアにとって正直それは問題ではなかったのだ。

この孤児院で働くとなればそれは当たり前になる仕事と理解していたから。


問題はその人の方にある。


「イオリとカエデならまだいい。なぜアオバも入れる?

仲は知っての通り最悪だろうに。」


ノアの中で題児の3人だった。

勿論、豪鬼にはやめたほうがいいとは伝えてあるが、彼は笑って「アオバはイオリと離しちゃいかんさ。」そう言って切り捨てられた。


「はぁ〜。」


絶対毎回揉めることになるんだろうと予測して、ノアは面倒に感じ始めた。

しかし彼のため息は彼がどうに解決しなければいけないもの。

誰もその声は聞こえはしなかった。


「・・・・〜〜っ///!」


ノアが渡り廊下を歩いていると、後ろからドタドタと全速力で走る足音が聞こえてきた。

誰だと後ろを振り向けば、そこには風呂上がりなのか、髪の毛を濡らし、腰にタオルを巻くイオリがいた。

割れた腹筋があらわになっている。


「あ!ノアさん!丁度良かったっ!」


イオリはノアの後ろに身を隠す。

そして、自分の走ってきた方向を一点に見つめていた。

ノアは彼が何に警戒しているのかわからなかったため、彼の見る方を見る。


「や〜っと、立ち止まった。なんで逃げるのよ?」


そこにはホットパンツに薄い一枚の半袖の白シャツという緩い服装をしたカエデがいた。

彼女の髪も少し湿っている。

頬も少し赤く火照っていた。


その彼女を見てやっと理解する。

これはこの孤児院で起こる毎日恒例のカエデのイオリへの襲撃だということを。


「怖いからだよ!

なんでいつも風呂出たら襲っくるのさ!

入ってくるのはまだいいよ!

でもマジな目で俺の手足を縛りに来んなっ!」


カエデの手には縄が一つ。

ジリジリとイオリへ忍び寄っていた。

近寄るたびにイオリのノアの服を掴む力は強くなっていった。


「いいじゃない。こんな美女に拘束されるなんてある種の変態にはご褒美よ?」


カエデはビシリ!と紐を張り、イオリの恐怖を煽る。

イオリはひぃィっ!と悲鳴を上げた。


「お、俺はその変態じゃない!」

「むっ、まるで私が変態みたいな言い方ね。」

「みたいじゃなくて実際に変態「何か言った?」ノアさん!助けて犯されるっ!」


半涙目で助けを求められる。

いくら拒否っても無駄なのだから、諦めて調教されたらいいのにと思ったのは口には出さなかった。

一応、年上としてカエデに注意する。


「こら、カエデ。一応ここは公共の場なんだぞ。

子供たちに刺激の強いものは見せないようにな。」

「そんな!ノアさんは常識を持っていると思ったのにっ!?」

「さっすが♪話がわかる先輩ね!

さて・・・もうこれで私を止める者はいないわよ♪」


二人はコントのように反応した。

イオリはショックを受けたように身体を強張らせ、カエデは見てわかるほどに発情する。

ノアは思う。

うちの孤児院にはおかしな子供しかいないのだろうか?と。


「オーケー!分かった!今度好きな服買ってあげる!好きなご飯も作ってあげる!

お願いだからハァハァ言いながら近寄って来ないで!」


イオリの命令も虚しく無視される。

その上、抵抗すればするほどカエデの加虐心は煽られているのだ。

つまりイオリには逃げるという選択肢しか残されていなかった。


「大丈夫大丈夫、最初は優しくしてあげるわ。

まぁ、その後優しく犯して心も体も染め上げてあげるけどね。」

「っ!死んでたまるかァァァぁぁぁーーーー!」


イオリとカエデは通り雨のように去っていく。

ノアはそんな二人の後ろ姿を眺め、疲れたようにため息をついた。

この騒がしさは慣れているのだが、彼の心労が重なっていたせいで、疲れは倍増していたのだ。


今日はもう寝よう。


ノアがそう思った途端、もう一つの通り雨は来てしまった。


「兄ちゃんたち、あっち行った!」

「追え追え〜!イオリお兄ちゃんを捕まえたら、カエデお姉ちゃんが甘味くれるって!」

「走れ走れぇ〜♪」


それが10歳にも満たない幼児たちだった。

彼らはまだ育ち盛りで元気がいい。

孤児院内を走り回るなど遊びと捉えていた。


「お〜い、なんで俺まで付き合わなきゃならねぇ〜んだよ。」 

「いいじゃん!アオバ兄ちゃんどうせ暇だろ!」

「アホ言え、寝ようとしてただろうが。」

「「(私)俺たちが起きてる限り寝れるなんて思うなよっ!」」


彼らの後ろには眠そうに目を細めているアオバもいる。

子供たちに手を引っ張られていた。

さっきまでの完全武装とは真逆のパジャマ。

なんとも子供らしく、さっきの戦闘の殺気が嘘のよう。


「はぁ〜、やるならさっさと終わらせるぞ。」

「「「そうこなくっちゃ、アオバ(お)兄ちゃん!」」」


そして探索時の身勝手さも嘘のよう。

今では素っ気ないけど優しい兄になっていた。

ノアは駆けていく子どもたちの背中を見て、仮管理人と仕事をした。


「お前ら転けないようにな!捕まえたら、ちゃんと寝ろよ!」

「「「はぁ〜〜〜い!」」」


子どもたちは元気に返事をした。

ノアがここで仕事をしている理由としては子どもたちのこの愛らしさがあるのが大きい。

それは問題児の3人も同じこと。


結局、ノアは子どもたちの成長を見守るのが好きだった。

元気に遊ぶ姿も彼は好きなのだ。


めんどくさいとサボってしまうのはそれは自分の趣味に反する事になる。

ノアは頭をかく。


「・・・訓練メニュー考えるか。」


ノアはそう言いながら自室の扉をバタリと閉めた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【追いかけっ子】編〜


「フッフッフッ♪もう逃げれないわよ♪」


イオリの自室、畳の上に置かれた布団の上。

イオリはカエデに押し倒されていた。

イオリの両手は上にあげられ縄で縛られていた。


「な〜にが逃げれないだ!

追うの止めたと思ったら、気配消してなに押し入れの中に隠れてんのさ!

卑怯!ズルい!セ・コ・い!」


イオリは大声を出して、カエデに抵抗する。

時間帯はもう子供な寝静まった時間。

月光と星光が彼の部屋を照らしていた。


「し・・・静かにしなさい。」


カエデは口前に人差し指を置き、イオリを黙らせる。

イオリはカエデの圧に蹴落され、口を閉じた。

月光に白髪が輝き、夜風にサラリと揺らされる。

甘い花のような匂いにイオリの心はドキっと脈うった。


「いい子・・・少し大人しくしてね。」


カエデは右手で、イオリの顎をクイっと上げる。

近づいてくる美女の顔。

そのうえ抵抗できない現状況。


イオリは恥ずかしさに耐えられず、瞳を閉じた。


すると、柔らかい感触が自分の唇に当たる。

そして甘い味が口内に流れ込んできた。

同時に何かの物体が、自分の体内に侵食してくる。

痺れるような感覚が全身に流れてきた。


貪られているような激しいが優しく、甘くて柔らかい数多の感覚。

彼はその全てが快楽に変換されてしまった。


1分かそれとも5分か。


イオリにとっては体感が長すぎて、終わるまでまともに頭が働いているかの心配をするので精一杯だった。


チュポンと音を立てて、流れ込んでくる快楽は終わりを告げる。


イオリは入りにくい力でなんとか瞼を上げる。

イオリの目には馬乗りになり、自分の頬を撫でるカエデが写った。

彼女の手が太ももに置かれる。


「・・・///。」


イオリは先程の快楽のせいで現状を理解しようとする事しかできなかった。

故にされるがまま、五感の中で触感だけを集中してしまう。

くすぐりたいのか太ももで円を何度も書かれ始める。

イオリはカエデが舌なめずりをするのを見た。

せめてもの抵抗。

全身に力を入れ硬直させる。


カエデはそんな見て、くすりと笑う。

イオリに、快楽を耐えるほどの力を全身に入れてもらう。

それがカエデの目的だった。


「・・・。」

「痛っ!!??」


カエデはイオリの膝を強く押す。

普通はあまり痛みの感じない場所。

なのにイオリの悲鳴は我慢しているような、こもっている声だった。


「やっぱり我慢してたんだ。イオリ。」

「・・・。」


カエデの目が鋭くなる。

怒っているのだとイオリは理解した。


「狼の撃退。後半、無理な態勢で動いたわね?」

「・・・。」

「その上での足の酷使。後でダメージがでかくなるのはわかってたでしょ?」

「・・・。」


イオリは変なところで頑固だった。

いくら誰かのためになろうとも、自分で行動した代償で他人に迷惑をかけることを良しとしなかったのだ。

己の問題は己で解決する。

自分で決めた人生においてのルールは絶対に破らない。

その一つがこれだった。


イオリは何も言いたくなくて、いくら痛むところを刺激されようと顔を反らす。


「言っとくけど、私、怒ってるのよ。

あの勝負はもっとよく考えれば逃げることは十分にできた。」

「・・・。」


今度は肩を押し、刺激する。

イオリは噛み締めながらそれに耐える。


「最後、楽しくなっちゃってたの、アオバも気づいてたからね?」


次は足首を握った。

このときの痛みには流石のイオリも耐えられず、唸ってしまった。


「・・・で、私の怒りを鎮めるにはイオリの痛みがなくならないといけないわけだけど・・・。」


イオリは横目でカエデを見る。

その目にもう怒りはなかった。

優しく包み込む、母のような目。

イオリは観念して、顔を正面に戻す。

そしてゆっくりと、コクリと頷いた。


「よろしい。」


カエデはイオリの頭を優しく撫でる。

大人しく目を瞑った彼を見て苦笑した。

こうしていれば普通の子供。

自分の体の何倍もある化け物を好き好んで退治する戦闘好きの子に見えなかったのだ。

でもそのギャップにこそ愛着が湧く。


カエデはイオリのおでこに人差し指をおいた。

するとイオリは穏やかな寝息をたてる。

まるでカエデの思い通りに現実を進ませているようだった。


「・・・お休みなさい。」


誰もいない部屋の中。

二人の影は重なった。

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