シーズン1 始まり
「ねぇ、貴方をもらってもいい?」
満点の夜空の下、ある少年少女が向き合っていた。
少女が少年を膝枕する甘い甘いシチュレーション。
傍から見れば、さながら恋人のようだった
「・・・なんの意味が?」
少年は彼女の風に靡く白髪を優しく撫でる。
少女は少年の仏頂面を見てか、それとも少年の言葉を聞いてか、とても美しく微笑んだ。
少年はその笑顔を見て、その笑顔に魅了されて、顔をそらす。
「意味なんてないわね。
・・・ただ、それが私の幸せってだけよ。それで私は満たされる。
私のそばに貴方がいるという事実。私がそれだけで充分なの。」
自分の手を胸の上に置き、少女はそう言った。
その目はダイヤモンドのように透き通っていて、少年を真っ直ぐ捉えている。
少年は直感で理解した。
その言葉が嘘でないことを。
目を逸らしても気恥ずかしさを拭えなくなってくる。
とうとう耐えられず言葉が出た。
「何をくれるの?対価は?」
必死の抵抗だった。
今まで少女が主導権を握ったまま物事が進むのが日常だった。
少年にとってそれは正直どうでも良かったのだが、今はそうとも行かない。
少女が提示する未来の不安要素が大きすぎて無視できないのだ。
しかし少年は少女が優しいことを知っている。
少しでも自分が幸福になれる決定権が少女にある条件を求めた。
決して照れ隠しというわけではない。
瞳を腕で隠すが、照れ隠しではない。
「素直じゃないなぁ〜。・・・でも、そうかぁ〜。対価かぁ〜。」
少女は少年の頬が赤く染まっているのを見て可笑しそうに笑う。
そして悩むかのように顎に手を当て考える。
少女は気づいていない。
その仕草一つ一つが、景色も相まってとても美しくなっていることを。
少年は不思議だった。
なぜこんな美女が冴えない自分を欲するのか。
・・・何度も考えた。けどどれも答えを見つけ出すことはなかった。
だってその答えは過去、少女自身が包み隠さず言ったのだから。
『恋に理屈なんてない。』
だから少年はその理由を導き出そうとはしなかった。
しかしたまに、本当にたまに・・・ふとその疑問が強くなることがある。
今も同じ。彼の中にはその疑問が膨らんでいた。
「私が愛してあげることかな。身も心もすべて愛してあげる。
足の指先から髪の毛一本まで、全部全部愛しきってあげる。」
少女は少年の視界を隠す両手をガシッと掴む。
そして押し倒すかのように、馬乗りになる。
逃さない。少女の目はそう訴えており、少年は恥ずかしいなら目を閉じればいいものの、その目に魅せられて閉じれずにいた。
十数秒、やっとの抵抗で顔を反らすことができる。
「・・・それでは流石に条件が良過ぎる。俺のほうが得してる。」
少年は特別が欲しかった。
誰かの特別になるでもいい。
親の愛を感じれなかった少年にとって、少女はとても必要な存在だ。
故にこの取引もとても都合の良いものだった。
けど・・・少年は自分を過小評価している。
都合のいいことなんてないと信じている。
だから少年は少女に自分のするべきことを求めた。
少女は一瞬キョトンとし・・・嬉しそうに頬を綻ばせる。
「なら、私を求めていて。
何時までも、何処までも私が欲しいと願って。」
恐らく二人の頬は赤く染まっていることだろう。
トロンと少女の表情が柔らかくなってから、少年は言葉を発さなくなった。
ただひたすらに、羞恥心に耐えながら光を失わないその目を眺める。
少女は少年のクリっとした目を見るため、彼の前髪をかき分ける。
そして程よく日焼けしている頬をなでた。
どんどん二人の顔は近づいていく。
今の二人に言葉は必要なかった。
だってもう少年少女の気持ちは通じていたからだ。
その上、世界は祝福するかのように月の光を向ける。
誰もいない夜空の下の荒野。
少年少女以外にあるのは数多くの化け物の死体。
常人ではありえない環境。
しかしこの現代では、彼らを取り巻く現実では普通のこと。
二人は自分たちの世界が出来上がっていたおかげで、気に留めることもなかった。
彼らを邪魔するものもいなかった。
そしてついに・・・・
二人の影は重なった。