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学校狂い。  作者: ゆゆ
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ア ナ タ ハ 体 験 シ タ コ ト ガ ア リ マ ス カ ? 



 コ ノ 、 有 リ 得 ナ イ 日 常 。


   




























  学 校 狂 い 。


























おかしい。


思い返せば、全てがおかしかったのだ。

何もかも、自分の周りも全ておかしかった。


それでいて、自分さえも見失うほどに闇に囚われていた。




もう誰も信じられない。

信じられるのは、自分だけ。



自分の考えだけ。


























「それじゃあ気をつけて帰ってくださいね」


自分たちの前に立つ、少し年をとった女性がそう言うと、

ガタガタと慌てるようにそれぞれが席を立ち始めた。


いつもの終わりの会だった。

このクラスはいつも終わるのが遅めで、それはきっと目の前の女性がおっとりした性格だからかもしれない。

だからいつもは騒がしくてうるさいこのクラスも、終わりの会だけは静かに早く終わるように、

が暗黙の了解となっている。


先生はそんな生徒の心情もつゆ知らず、その言葉を告げると一番最初に教室を出て行く。

誰よりも早く、だ。



「おい、帰ろうぜ!」

「おう!」


「ねえ、今日は部活行くでしょ?」

「行くよー!」


ざわ、と空気が一転して、放課後。

煩いクラスに戻るのもいつものことで、

すぐに荷物を持って帰ろうとするものもいれば、宿題をやって帰るものもいる。



「有希、帰ろ?」

「うん」


若菜有希わかなゆきもこのクラスのうちの一人だった。

鞄に荷物を詰め込んで、チャックを閉める。

傍に駆け寄ってきた安佐香織あさかおりはバスケ部員だが、

今日は部長ミーティングで練習がないらしい。

お蔭様でもう一人の友人――植橋和歌うえはしわかは部長だから一緒に帰れないのであるが。



「…おい、矢野。なんだよそんなところで突っ立って」


鞄を持って立ち上がった時だった。

何時もは大きな音を立てて、勢いよく開くはずの教室の扉の前で、

クラスメイトがごった返している。


有希と香織は顔を見合わせて近寄ってみると、

そこには扉の前で立ち止まっている矢野の背中があった。


終わりの会が終わると同時に立ち上がり、風のような速さで帰っていく彼。

いつもと違うその光景に声を掛けた男子も少々戸惑っているようだ。

そんな彼の背中に、「早くどけよ!」「帰らせろー!」という文句が投げかけられるが、

矢野は見向きもしない。


矢野は大人しい人間ではない。

どちらかというとクラスの中では騒がしい方で、後ろから口々に言われ、黙ってるわけがない。

有希は不振に思い、少し背伸びをする。


どうやら矢野のすぐ後ろに居るのは泉だ。

彼は和歌と同じくバスケ部の部長で、背が高い。

そして彼も矢野の様子に違和感を感じたようで顔を顰めている。



「……が、開かない」

「は?」

「待てよ。どうした、矢野」


だんだんとイライラして来たのだろう。

傍にいる男子が矢野に当たり始め、舌打ちをする。

扉の前で、額を扉に引っ付けている矢野がどかなければ、帰れないのだ。


教室の扉は前と後ろ、両方ある。

しかし後ろは先日油がないのか、滑らずに開かずの扉となってしまっていた。

だから、教室から出るには前の扉からでないといけない。


ボソリ、と何かを零した矢野の肩を、泉は叩く。


「…矢野?」


その肩は、震えていた。


































「ドアが、開かないんだよ!!!!」


































そう、それがこの……。


学校狂いの始まりだった。









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