エンゼルモンスター
天界
巨大な椅子に座る巨大な老獪、部屋は石造りの城のような部屋
「ごめん、もう一回言って」
「自分の旦那さまは自分で探しに行くのじゃぁ!」
巨大な老獪は足元の小さな子どもの言葉に、頭を抱えていた
「パパンが止めても私行くんじゃからね!」
「マジで外界にいくの?」
「うん!もう200歳じゃしな私!」
「…パパ寂しいやん」
日本
だらしない着かたをした学生服の少年が、寂しそうにスマホを見ながら路地を歩いていた
「はぁ…」
『学校 やだな』
スマホの画面にはSNSレインの画面には『葉山って近寄りづらい』 『潤之介って見た目の割にビビリってホント?』『あたし見たもん反町からお金取られるとこ』
『女の子ってみんなこんななのかな…やだな…』
「あぁーチクリ女は死ねばいいのに」
独り言が漏れる。そんな彼の目の前にダンボール箱が現れ張り紙を見て思わずつぶやいてしまう。
「お前も一人か」
『漫画みたいだな…』
ため息をつき 箱を開けるとそこにはギチギチに詰まった少女が居た
「お!お主が旦那さ」
フタをして真顔で足早に歩き出す少年の背後から、ダンボールが勢い良く飛んで来きた。ダンボール上部から少女の頭部がでて叫ぶ
「こらぁぁ!!!わしをひろえぇぇぇ!!!!!」
その光景に思わず少年は恐怖を感じて叫ぶ
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!!くんなーーーーー!!!!」
数分後 路地裏
お互い息切れしながら、相手を見つめていたが少年が口を開いた
「お前なんなんだよ」
小学生くらいの少女はダンボールから手足を生やした状態で、ドヤ顔で答えた
「わしはお前の妻となる女ユリエルルだ!」
「はぁ?」
少女の発言に混乱し、思わず口が開いてしまうが、状況を整理すると少年は答えた
「あのさ遊びなら同級生相手にやってくれるかな、おれ忙しいし」
「お、おい!またぬか!」
ダンボールを取りながら必死に止めようとするが、少年はその場を立ち去っていく。
「こらー!潤之介!!!待てー!止まれー」
突然名前を呼ばれ足を止め、少女の方に振り向く少年
「なんでおれの名前」
「ふん!それくらい知っとる!なんせわしの夫なんじゃからなお前は」
気味が悪くなったが、相手は所詮は子供だったので無視して潤之介が帰ろうとしたその時潤之介は突然背後から殴られ、その場に倒れた
「おい潤之介!大丈夫か!!!」
「誰…だ」
潤之介が振り向くと、背後にはガタイのいい男と見るからに男の子分のような小柄なチャラい格好をした男の二人が立っていた。
「おう、ジュンちゃん元気してたか?」
「反町…先輩」
「ヒャハハハ おうジュンよぉ反町先輩にその口の聞き方はヴァット(Bat)だろぉ?」
「ホラーマン」
「その言い方はやめろや!」
「だあぁまれ骨木」
「へ、へい…」
反町という大柄な男の一声で、骨木と呼ばれる小柄な男は静かになった。
「実はさっきゲーセン行ったら小遣いなくなってさぁ」
「…はい」
潤之介が財布を出そうとしたとき
「やめんかーい!!!」
倒れている潤之介の真上をダンボール箱が飛んでいく。
「ごはぁ!」
「わしの夫に何をする貴様ら!」
突然飛んできた物に当たり、ぶっ飛ぶ反町
「お前…」
「わしの旦那である潤之介にてを出そうものなら妻であるワシ ユリエルル が許さぬぞ!」
「なんだ?ガキ!」
「だ、ダンナって!?」
ユリエルルが名乗りを上げているとき、骨木は ダンナ という単語に反応した
「ハハハ!プッ夫? なんだ夫婦ごっこしてんのかよ」
「どういうことだJお前…そういう趣味あったのか」
「違う違う!!! 勝手に言ってるだけ…です」
「こら!ワシがまだ話しとるじゃろうが!」
「うるせぇ!ガキは帰ってモンストでもしときやがれ」
「ぐぁ!」
反町は潤之介を蹴り飛ばし、怒声を放った。
「お前もこうなるぞ…あ?」
その瞬間一瞬で反町の腹にアッパーをキメる。反町は情けない声を上げながら、空に消えていった。 一同唖然としている
「へ?」
「鉄拳制裁というやつじゃな!次はヒョロヒョロ お前か?」
「ひぃぃ!すいませんでしたぁ!!!」
骨木は、まともに歩くこともできず逃げていった。潤之介は恐怖を感じつつも、近寄ってくるユリエルルに対してどうすることもできずにいると
「さ、家に帰るぞ潤之介」
「え、あ、は?」
とてつもない力でユリエルルにお姫様抱っこされ、飛び上がりどこかに連れ去られていく
「ちょっと!ま、うあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
天界
「潤之介!着いたぞ!」
「う、気持ち悪い…」
「しっかりせんか 情けないぞぉ」
「絶叫マシーンだ…」
潤之介が周りを見ると雲の中から荘厳華麗な城が見え周りには花畑が雲から見え隠れしていた。
「なんだ…ここ」
「ワシの庭じゃ」
「庭…」
「おっとうるさい迎えが来たぞ」
突然雲が開き中世的な顔立ちをした男がユリエルルの名前を叫びながら現れた。
「おっす!ジャンニュ 元気じゃったか?」
「おっす ではありません姫! 心配したんですよ!突然外界に婿を探しに一人で旅立つなどと」
『姫?この子が?』
「ここの男達はワシは好かん!それは説明したじゃろ」
「ですが」
「どいつもこいつも戦戦とうるさいのだ!」
「戦?」
潤之介が口を開く、するとジャンニュと呼ばれる男は一度目を合わせたが、すぐにユリエルルに向き直し小言を言い出した。
「あの戦ってなにか」
「しゃべるな人間 その汚らしい口を閉じろ 天界が汚れる」
「は、はい」
『天界って』
「こら!ワシのダンナになんじゃその口の聞き方は!」
「ですが姫…」
「ですがもクソがもない!潤之介はワシのダンナじゃ!そこを通せ。さ、潤之介行くぞ?」
「え、あぁ」
二人がその場を立ち去り城へと入っていくと、それを見届けたジャンニュは爪を噛みはじめた。
ジャンニュの後ろには場所似に使わない大柄な男が近づいてきた
城廊下
「あのさ」
「なんじゃ?どうしたお腹でも痛いか?」
「いや違うわ なんで…俺をここに連れてきたんだろうと思って」
「パパ上に会わせるためじゃ!」
「パパ?」
「うぬ!」
「待て待て!おれ結婚なんか考えてない!それに…女の子苦…嫌いだしさ…天界とかもまだ知らないし…いきなり言われても無理だって!」
するとユリエルルは潤之介の顔を自分の顔に無理やり近づけた
「ワシの目の色どうじゃ?キレイじゃろ?」
「…ちょっ!!」
「んーかぁいいのぉ!」
「やめてくれ…!」
ユリの目が怪しく光ったが潤之介は気づかなかった
どこかに走って行こうとする潤之介
『もうやだ!帰る!おかぁさん!』
「潤之介!待て!そこは」
潤之介の目の前に床下から槍が突き出てくる
「あ、ア、な、なんだこれ!!!」
「罠じゃ」
「見れば分かるわ!!!」
「勝手に動くと危ないぞ?」
『ひ、ひぇぇ』
「潤之介よ、話しだけでも聞いて行ってくれぬか?」
「はぁ…分かったよ聞くだけなら」
潤之介にユリは近寄ると、頭をなでた
「なにすんだよ!」
「おまじないじゃ、こうすると人は落ち着くんじゃろ?」
「好きな人から…されれば…そう…なる」
顔を赤くし答える潤之介
「よしよし」
「しつけぇよ!わかったから!」
「そうか?」
「ん!ではパパ上のとこへゆこうぞ!」
二人が話していると一際大きな扉に着いた
「でかぁー」
「こらー!パパ上!娘が帰ったぞ!!!」
扉の奥から声がした
「はっや!え?まじで!?もう見つけた?」
「当たり前じゃろう!ほら!開けてくれ!」
「んー…いいよ」
「今の?」
「うぬ!とても大きいぞ」
「へ、へぇ…」
『この子の父親ってことはここの王様だよな…どんな人なんだろ』
扉が開くと目の前に巨大な足が見えた
「でっかい像だなぁ」
「違うぞそれはパパ上の足じゃほれ」
ユリエルルが上を指差すと雲の中に人が隠れて見えないほど巨大な人だった。
「お、おぉぉぉぉぉうちかえりますぅ!!!!!!!!」
「落ち付け潤之介!大丈夫じゃわしのパパ上じゃ無駄な殺生はせぬ!」
「まさかでかいってサイズのこと??!!!!」
「そうじゃ!」
二人が話していると雲が晴れ巨人の顔が覗いた
「え、夫ってそいつ?」
「うぬ!我が夫潤之介だぞパパ上!」
「しょうもな!!!」
「しょうもないとはなんじゃ!!!パパ上でも許されぬぞ!」
「えーだって所詮ただの人間だよーしかも弱そうだしー天界に馴染めないってー」
「わしが馴染ませる!!!潤之介は弱くないぞ!」
「うーんそれに、これからのこの天界を人間に任せるってどうよーワシは楽しそうだからいいけどさぁー他の奴らは」
ユリエルルの父に驚き尻もちついたままの潤之介はユリエルルに質問した
「ま、まって!おれ王になんの!!?」
「え、そうじゃんだって姫の夫になるんでしょ」
「まだなるって言ってない!…です」
「大丈夫!ワシが助けるからな潤之介!」
「けどさぁ」
「潤之介の妻はワシじゃからな!」
潤之介の手をつなぐユリエルル
「ねー、パパの前でいちゃつくのやめてくんない?ママが恋しくなるやん」
「ごめんなさい!パパ上!」
「まぁいいけどー」
レイン!
「あーちょっとまって…うわー仕事やーんだるいわー」
「巨人がSNSを使いこなしている スマホ…でか」
「すごいじゃろ!ワシにはさっぱりわからぬ!」
「中学生みたいな見た目したお前に言われても…」
「うん…え、マジ卍じゃん…うん…えー分かった」
ピッ
「なんかーワシ行かないといけないからさあと任せるわぁ 適当にやってくれ人間」
「は?」
「あ、ちげ潤之介だっけか 娘を頼むぞ 泣かせたらワシ お前をぶち…うんじゃいくわ」
「おい!!!最後!ぶち殺すって言おうとしたよね!ねぇ!」
ユリエルルの父(天界の王)は雲に乗ってどこかに行ってしまった。
「はぁ…なんかいいのかなこんな簡単に決めても」
「パパ上がいいと言ったんじゃ!大丈夫じゃ」
「いや、おれまだ王になるっていってないからね!」
「わ、わ」
「ん?」
「わしのことをフるというのか!」
「え、あのちが」
「他に女でもいるのか!!!」
「違うから!!!まて落ち着け!」
「潤之介の浮気者!!!」
壁に大穴が開く
ユリエルルは潤之介を外に連れ出しお忍びで天界の散歩に連れ出した
「痛い…」
「ワシの早とちりですまない!」
「もう、いいよ何回言うんだよ」
「ここ見たら帰らせてな」
「わしさびしぃ…」
「帰る!」
「ちぇっ…仕方ないのじゃまた会いにゆくからな!」
「はいはい」
『いつまでもこんなとこ居たくないし…』
潤之介の前に 天界一番街 と書かれた看板が現れたそこには人や人外っぽい見た目の者までいろんな見た目の生物がいた
「商店街…」
「うむ!パパ上の考えじゃ」
「へぇ、人間っぽいのから怪物みたいなのまでいるな」
「神っぽいやつじゃな全員」
「へ、へぇ…」
『神っぽいってなんだ…神のなり損ないみたいなものかな』
「あ、あれ」
キレイなショーケースには神具が飾られていた
「教科書で見た」
「ヤサカニの那賀勾玉じゃな」
「へぇ良くわかんないけど」
『みんな楽しそうだな…なんでだろう』
「おい!潤之介!こっちじゃ!」
ユリエルルは路地の目の前で潤之介に向かって手を振っていた
「なに?」
「ショッピングモールビオンへの近道だぞ!早くゆこうぞ!!!」
目をキラキラさせながら潤之介を見ているユリエルル
「全然天界に来た感がないけど…何買うの?映画を見に行こう!」
「うんいいけどどんなえ…」
壁に上映中の映画のチラシが貼られている「後後後世」
「大丈夫…なのかこれ…」
二人は人通りが少ない路地に入った瞬間、目の前が真っ暗になり気を失った。
なにもないくらいばしょ
「ん…ふぁぁ…あれ…映画館…じゃない」
周りは薄暗く 頭上には月のような物があった
「どこだよここ…」
「ジュンちゃんよぉ起きたか?」
大柄な男の影が近づいてくる、声に反応したが、体が思うように動かない
「う、動けない…」
「おう人間界で言う催涙スプレーみたいなもんだ効果も使い方も全然違うけどな」
ようやく聞き覚えのある声の方へ向けるとそこには反町が立っていた。
「先輩…なんで」
「おれ呼ばれちまったんだよ…お前は…どやら別件らしいな」
「呼ばれた?」
「あぁ天界の尖兵ってやつだな」
「知らない…」
「のほほんとしてやがったもんなぁ!知るわきゃねぇはずだ」
『どうして先輩がここに それに天界の尖兵?聞いたこと無い』
反町が突然潤之介に蹴りを入れる
「がっ!」
「んなことどうでもいいんだよ おれはお前を好きなだけぶっ飛ばせる どうせ金もってんだろ? ほらついでに全部置いてけよ」
『潤之介はワシの夫じゃ!』『大丈夫!ワシがなんとかしてやる!』『潤之介は弱くない!』
「…だ。」
「あん?」
「い、嫌だ!!!絶対!おれはもうひとりじゃない!ユリエルルに恥ずかしいとこみせたくないんだ!」
「この野郎…んじゃ死ね」
「ぐっ…」
鈍い音がした潤之介が目を開けるとユリエルルの正拳突きが反町の腹部にめり込んでいた。
「よく言ったぞ潤之介」
「あ、がぁ」
反町はその場にゆっくりと倒れ込んだ
「ユ、ユリ!大丈夫だったか!?」
「当たり前じゃ 人はやはり出会った人物によって変われるのじゃな」
「どういう」
「もういいです」
モヤがかかっていた場所からワープホールのような穴が出現しジャンニュが現れた
「まったく…早く終わらせろと言ったのに」
「ジャンニュ!」
「人間なんてこの程度ですよ姫」
「なんじゃと?」
「弱くて汚く自己中心的、承認欲求の塊 そんなモノより私の夫になったほうが楽にそして素晴らしい世界を築けるのに なぜ理解しない!」
「だまれ下衆めお前に潤之介の人間の何が分かる」
「私こそユリの夫にふさわしいんですよ。人間ごときたまたま見つけた人間がこんな小さな人間とは王家も廃れるわけだ。ユリもなぜこんな…こんなやつを!…」
ジャンニュは潤之介に目掛けて何かを投げつけるそれは先端が尖った小型の刃物
「しねばいい」
ブシュ
「がっ…」
「ハハハ終わりだ人間!!!」
「…ん?」
「あれ?生きてる」
「な、なんでだ!!!」
「ジャンニュ」
ユリがウインクする
「ま、まさか!既に契りを交わししたと!?」
「血白い!!なにこれー!!」
「ワシの愛の力じゃ潤之介」
「愛!?」
「馬鹿な!そんな!いつの間に!」
「ワシの目を見てワシを拒むと契は交わされる もう既にやっておるじゃろ?潤之介」
「あ、」
『んーかぁいいのぉ』『やめてくれ!』
「あのときか!」
「潤之介、ワシの正式な夫にはもう既になっておるんじゃなぁ」
「こいつ…きたねぇ」
『女なんて嫌いだぁ!』
「ということじゃ!ジャンニュ!貴様も終わりじゃ」
「クソっ、反町!」
ジャンニュは反町を起こすと何かを飲ませた。すると反町はジャンニュに取り込まれ跡形もなくなった。
「くはははは!どうだユリ人間はこう使うんだ!所詮ただのコマなんだよ!」
「潤之介、ワシらもあれをするぞ」
「けどあれ先輩が消えたぞ」
「潤之介 ワシを信じてくれるなら 右手を握るだけでいい そうすれば奴をぶっ飛ばせることを誓う」
「…わかったユリ」
「名前で呼ばれるのは嬉しいものじゃな」
「いいから!」
「ふふっ ゆくぞ」
二人は手をつなぐと、温かい光が二人を包んだそこに突風も巻き起こりジャンニュは立っていられなくなる。光が消えるとユリエルルの背が高くなり大人っぽくなっていた。
「さぁ、仕置が必要な童はお前か?」
「くっユリ…お、ま、え、」
「児戯じゃな」
ビンタでどこかに吹き飛んでゆくジャンニュ ため息をこぼすと二人は再び別れ潤之介は気を失った。
「訓練が必要じゃな潤之介…じゃがかっこよかったぞ」
外界 潤之介宅
「ん…あれ家だ 日曜日…ははっ…くだらな…」
潤之介は自分の布団から出ようとすると何かに気づく
「いい匂い…今日はシチューかな」
潤之介が扉を開けようとするとバタバタと騒がしい足音が聞こえてくる
「潤之介!」
「おあぁぁ!!!」
倒れ込む潤之介
「何しとるんじゃ?」
「ユリだ」
「そうじゃよ?いま潤之介の母上と一緒に潤之介の好物を作っておるからな! どうした?潤之介?」
「なんでもない!」
「そうか?怖い夢でも見たのか?
「そんな子供じゃないわ!」
下から母の声とともにシチューのいい香りがしてくる
「早く降りてきなさーい! ユリちゃんが作ってくれたシチュー冷めるでしょ!」
「なんで普通に受け入れてるんだ」
「家がないと言ったら」
『ウチで良ければいくらでも泊まっていきなさいね』
「というわけじゃ」
「というわけ じゃねぇ!」
『かぁさんのお人好しも大概だよ…ほんと』
「ソレより潤之介!ワシも学校いってもよいか!」
「駄目」
「なんで!よいじゃろ?」
「駄目」
「そこをなんとか!」
『おれもお人好しだし甘いな…女の子も悪いものじゃないかもしれないな』
「潤之介ぇ」
「しつこいと怒るぞユリ」
「ごめんなさい」