万が一にも。1
面白ければ幸いです。
読者2桁いれば次作投げます
「は〜い、それじゃあ龍城くん。お兄ちゃんに行ってきます言おっか?」
バスから顔を覗かせた幼稚園の先生。
「うん、お兄ちゃん!行ってきます!!」
俺の手を離してバスに乗って手をふりふりと振るその可愛らしい少年。
弟の梅津龍城、現在3歳
「おう、元気で行ってこい」
「うん!!」
元気に龍城は頷いた
プシューと音を立ててバスの扉が閉まり動きだす。
さて、俺も学校行かなきゃな。
後ろに子供を乗せる荷台が付いたママチャリをこいで、学校に向かう。
最初は皆の目を気にしていてしんどかったが、二ヶ月もたった7月ならもう慣れたもんだ。
もうすぐ期末テスト、そして夏休みだ。
勉強を頑張らないとなぁ。
そんな事を考えながらママチャリをこいでいると学校に着いた。
ママチャリを停め、鍵をかけて生徒用の玄関に向かう。
駐輪場は玄関を一度通り過ぎた奥にある。
その為、自転車を停めると徒歩で学校に来るやつと顔を合わせる
こんな感じにな
「あ、おはよう奏多。龍城くんを送るのお疲れさま」
幼馴染の与那嶺だ。
心無しか元気が無い気がする
「おう、おはよう真希。今日も俺の『青春に恋愛は無駄だ説』を聞きたいか?」
「そんなの毎日聞いてるし。気遣ってくれてありがとう。実は憂鬱なんだよね〜。今日の授業ってほらアレじゃん」
毎日語ってたっけか?いやそんなはずは……あるかもな
え〜っと今日はなんかあったっけ?
確か今日は……木曜日?
「あ、日本史と世界史が5、6時間目か。」
そうだった、俺まで憂鬱になってきた
「そうそう、やっぱ木曜日は嫌いかな」
世界史は無駄なつまらない雑談多いし、日本史は書く事多いから俺のクラスでは人気が低い。
ちなみに俺も授業は嫌いだ。自分で勉強してた方がよっぽど効率がいい。
それから俺はいつものように教室に入った。
「おっ、奏多」
入ってすぐに俺に声をかけてきたのは数少ない友達の前川隆久。
「うす、おはよう隆久」
「今日、木曜日だね…」
明らかに嫌そうな苦笑いをする隆久。
「…その話は朝に真希ともしたな」
少し冗談めかして笑うと
「本当に仲が良いよね二人って。いつになったら付き合うの?」
「へっ!?」
隆久が呆れ気味に言うと、それが運悪く真希に聞かれてたらしく少し離れた席にて驚いたような間の抜けた声が聞こえた。
「…まったくバカバカしいな。恋愛なんて俺は万が一にもしねえよ」
俺が得意げに言うと
「うん、知ってるよ。座右の銘は恋愛なんて万が一にもしない、で有名な奏多だしね」
「……っと、チャイム鳴るな。」
俺は用意を一通り済ませて席についた。
さて、一時間目は……物理か
▼▼▼▼▼▼▼
昼休みに、俺は職員室前に来ていた。
前回の中間テストで学年二位を取ったことで、先生に一流大学に推薦する事を決めたようで難題な問題が出されたプリントなどを学力の上昇を目的に渡される。
昼休みに貰う予定だったので職員室前に来ているといつもは他に人がいないはずなのに俺の他にもう一人の女子がいた。
しばらくして職員室から先生が出てきた。
「よし、奏多は来たな。……妃ノ瀬!こっちだぞ」
先生は妃ノ瀬と呼んだ女子を俺の横に立たせた。
「今回君たちを呼んだ理由は、二人がワンツーだからだ。」
はぁ、ワンツー…?
1位と2位、とゆうことか
「二人はこの進学校の私立来宮高校の中間テストでほぼ満点を叩き出した。…まあだからといって何かして欲しいとかじゃなくて、期末も頑張って欲しいって事だ。とりあえず顔合わせって事で、競い合って頑張ってくれよ」
それだけ言うと先生は職員室に戻っていった
「なんの為に呼ばれたんだか……。プリントは貰えないのかよ」
思わず言葉が漏れる。
横を向くと妃ノ瀬と呼ばれた女子は興味津々にこちらを見ていた。
「え〜と…何かありました?」
少し苦笑を交えて聞いてみると
「…あなたは梅津奏多クン、かしら?」
「なんで俺の名前を…?」
「座右の銘が万が一にも高校で恋愛などしない、で有名な奏多さん。と聞いていたから」
何!?隆久が言ってた事は本当だったのか
「ねえ、私はあなたに興味があるわ。本当に万が一にも恋愛をしないのかってゆう興味が。」
妖艶に微笑むその姿に、俺のアンチ恋愛反応が危険だ!と警告を告げる。
「あっ…まだ飯食って無いんだった」
めちゃくちゃ棒読みで言い、慌てて走って教室に戻った。
「ふふ、面白そうな人を見つけちゃったかもしれないわね」
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教室に戻って自作の弁当を食いながら一緒に食べてる隆久にあの妃ノ瀬とゆう女子について聞いていた。
「妃ノ瀬さんは話によると超お嬢様らしくてね?なんでもあの妃ノ瀬グループの令嬢なんだとか」
うわ、名前同じだからまさかとは思ったけどマジか。
妃ノ瀬グループは病院、自動車会社、大手ショッピングモールなど、幅広く日本の生活を支える企業だ。
その令嬢か…。
「でも珍しいね。女子に興味持つなんて」
「俺より順位が一個上なんだよ」
それを聞くと隆久はハァ!?と驚いた様な声を出す。
「確かに1位はすごいことだけどそんなに驚く事かよ?」
「違うよ!いや、1位はすごいけどね?でもあんなに美人で男子から人気がある彼女がまさか学年1位!?テスト問題は進学校だから難しいのに!」
「俺は8教科で797点だからそれを超えてる訳になるな。」
「つまり、ほぼ800満点取っている訳だよね?……才色兼備とはこの事だよ。確かスポーツも得意だって話も聞いたことあるから文武両道もついてくるのかな」
マジかよ。弱点無いじゃん
「絶対次の期末は勝ってやる…!」
俺は正直テスト受けた瞬間から1位は取れた気でいた。
結果を見たとき、俺の順位は2位だった。
名前は無く、生徒番号で書かれていたので1位の人の名前は知らなかった。
けれど相手が分かったからには本気で挑むしかない。
帰って用事を済ませたら勉強だ!!
……何時になるだろう
次は日本史か世界史だな。
寝ない様に頑張ろ
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全ての授業が終わり、時計を見ると3時半。
まだやれるな。
俺は即座に机に英語の参考書を広げてノートを開き、カリカリと勉強を開始する。
数分立つうちにみるみる人は帰っていき、今や俺一人。
ひたすら英語の参考書を睨み、文法を頭に叩き入れては練習問題を解いていく。
その作業をしていると
「……わっ!」
「うわっ!!!」
唐突に後ろから肩を叩かれると、俺は驚きのあまりビクン!と飛び跳ねる。
慌てて後ろを振り返ると…なぜかイタズラな笑顔を浮かべた妃ノ瀬がいた。
「ふ〜ん…付加疑問文ね〜。ん?これ間違ってるよ?」
俺の肩越しに顔を覗かせてノートを見る彼女に速くなる胸の鼓動を誤魔化しながら間違ってると言われた問題を見ると
「ふぅっ……」
「ひゃっ!!」
俺の耳が妃ノ瀬に近づくと、いきなり息を吹きかけてきた。
「邪魔するなら帰れーーって言いたいが、俺が帰る時間だ。何しに来たか知らないけどじゃあな」
用意を片付けてスクバを背負って帰ろうとすると
「……さっきの問題、wasじゃなくてisよ。そうゆう凡ミスを減らさないと私には勝てないわ」
「…それだけか?」
と聞くといきなり表情が変わり、職員室前で見せたあの妖艶な表情になった。
「君のその万が一にも…ってやつ。それって自分に言い聞かせるために言ってるんじゃないの?」
「…なんか知ってるのか?」
「いいえ、何となくそう思っただけよ。…あなたは本当に高校で恋愛をするつもりは無いの?」
「今まで、何人かの女子に告白されてきた」
「容姿が整っているものね」
「そうじゃなくて……俺が振るときは毎回こうやって断ってきたって話だ」
息を吸って、そして
「高校生活では万が一にも恋愛はしない。」
「…なら億が一ならどう?」
「……ッ…」
その言葉の返しが全く見つからなくて、俺は無言で彼女を置いて教室を出た。
さて、龍城を迎えに行くか
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