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魔王の夜伽

作者: 守 秀斗
掲載日:2019/01/23

 私は魔王だ。

 この世界を支配している。


 部下から報告があった。

 最近、やたら山賊が出没しているらしい。

 私が支配している世界で山賊行為とはけしからん。

 部下に討伐させてもいいのだが、久々に私自ら行くか。

 魔王の恐ろしさを思い知らせてやる。

 ハッハッハ。


 私は瞬間移動して、村を襲っている山賊のところへ行く。

 相手は十人。

 簡単に瞬殺した。

 村人から感謝される。

 魔王とは名乗るわけにはいかんな。

 魔王が善い事するのは、ちと恥ずかしい。

「たまたま通りかかった者です」と言い残し、去る。


 次の場所だ。

 相手は三十人。

 あっさりと瞬殺した。

 また村人から感謝される。

「たまたまですよ」と言い残し、さっさと去る。


 その次の場所だ。

 相手は五十人。

 さっと瞬殺した。

 また村人から感謝される。

「たまたまだ」と言い残して去る。


 その後、同様に同じことをいろんな場所で続けた。

 相手は一人から千人くらいかな。

 全員瞬殺。

 全然手応えがない。

 つまらん。

 かえって、疲れてきた。


 気がつくと、ド田舎まで来てしまった。

 その村でも山賊退治。

 相手は五人。

 当然のごとく、瞬殺。

 

 さて、これくらいでいいかと村から去ろうとすると、声をかけられた。

「もしかして、あなたは正義の味方、タマタマ・マン様ですか」と言われた。

 何だそりゃ。

 もっとカッコイイ名前をつけろよ。

「キンタマン」と呼ぶガキもいた。  

 瞬殺してやろうかと思ったが、疲れているからやめた。


「山賊を退治していただいてありがとうございます。今宵は、この村で歓待しとうございます」と村の長老から申し出があった。

 疲れていたので受けることにした。


 夕食をいただく。

 ド田舎の郷土料理。

 意外にも美味しいぞ。

 すっかり満足した。


 さて、お待ちかねの夜だ。

 私は魔法でさっと寝袋を出現させる。

 最近はすっかり、寝袋で眠ることが気に入ってしまった。

 蓑虫状態。

 楽しいな。


 ご機嫌で寝室に行く。

 部屋に入ると、豪華な布団が敷いてある。

 わざわざ用意してくれたのか。

 ありがとさん。

 まあ、寝袋で寝るけどね。


 気がつくと、若い娘が正座して三つ指をたてて、こちらに頭を下げている。

 この娘さんが布団を用意したのか。

 ご苦労さん。

 戻っていいよ。


 よくみると、娘の体が震えていて、顔が赤い。

 どうしたんだ。

 インフルエンザにでも罹ったのか。

 それともリンゴ病か。


「今宵は、わたくしが夜伽をするよう、仰せつかっております」と娘が言った。

 何のこっちゃ。

 夜伽歓待か。

 田舎は大変だな。

 しかし、悪いけど私は疲れている。

 

 下がっていいよと言った。

 私は早く寝袋に入って蓑虫になりたいんだよ。

 しかし、娘はちょっと戸惑っている。

 すぐに戻ったら、お客人に失礼にあたるようだな。

 やれやれ。


 じゃあ、君はそっちの豪華な布団で眠りなさい。

 私は寝袋で寝るから。

 しかし、まだ娘は何だかモジモジしている。

 どうやら生娘らしい。

 なるほどね。


 私は魔法で赤ワインの瓶を一本取り寄せる。

 それを明日の朝、布団の上にこぼして、ごまかしちゃえばいいんでないの。

 そのワインを娘にあげた。

 コンビニで買った安物ワインだから惜しくも何ともない。


 娘は豪華な布団、私は寝袋。

 二人並んで寝る。

 少しお喋りをする。 

 キンタマンとか名乗っているから、どんな目に会うのかビクビクしていたらしい。

 名乗ってねーよ。


 あと、自分には恋人がいるとのこと。

 今夜の夜伽には反対されたらしい。

 もしかしたら、別れることになったかも。

 ありがとうございますとお礼を言われた。

 ふーん。

 まあ、どうでもええわ。


 娘はすっかり安心して眠っている。

 よく見ると、なかなか可愛い顔した娘だな。

 けど、さっさと寝るよ、私は。

 もう寝袋の中で寝ている方が楽しいよ。

 最近の色ボケ勇者なら、即行でこの娘に襲いかかっただろうけどな。


 ん? 「魔王の夜伽」って題名で期待してたら、そのていたらくは何だよって?

 題名詐欺で訴えるぞ! と言いたいのかね?

 どうやら、エッチな話を期待していた御仁もいるらしいな。

 残念だったな。

 ハッハッハ。


 あと、「夜伽」って必ずしも女が男の世話することじゃないぞ。

 夜の間、退屈を慰めるための話し相手みたいな意味らしい。

 まあ、最近、私も知ったのだがな。

 

 つーか、何だか疲れているんだよ。

 一日の一番の楽しみは寝袋で一人で寝ることだ。

 それに、はっきり言ってED気味なんだな。

 ハッハッハ。

 って笑っている場合じゃないか。 


 ああ、ホントの話、私は妙に疲れている。

 やる気が出ない。

 もう寝るよ。


 翌朝、村人総出で見送られる。

 瞬間移動してもいいのだが、せっかく見送ってくれるので、私はしばらく歩いて帰る。

 村人が手を振っている。

 後ろを振り返り、私も笑顔で手を振った。

 あの娘もいる。

 隣の若者が恋人か。

 二人で手を握り合っている。

 まあ、お幸せに。


 ん? すっかり英雄気取りだなって? お前は魔王だろって?

 つーかね、だいたい山賊退治とかこういうのをやるのは勇者だろ。

 だいたい、勇者になりたての頃くらいに、そういうイベントがあるよな。

 あいつらがハーレム遊びしてばっかりだから、私が仕方なくやってあげているんだ。

 感謝してもらいたいもんだな。


 それに、勇者だったら山賊退治のついでに夜伽も楽しんで、題名詐欺にならなかっただろ。

 文句ならボンクラ勇者に言ってくれよ。


(終)

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