こ、これが魔王か!
「ウソだぁぁぁぁぁ!!!!」
仮転生直後、絶叫した
しかも現在魔王城、玉座の間にいるのだった
当然魔王もこちらを見てきていたが 魔王はこちらを振り向きながらカップラーメンを食べていた。口からメンが出ていて、食べている途中で大声に驚きこちらを見たようだ
そしてよくよく辺りを見てみると明らかに日本家屋の作り。魔王は畳に正座して白黒テレビを見ながら食事をしていたようだ
そのままズルズルっとメンを口に入れ
「なんじゃ?お主は?」
「あ~、え~と……」
「もしや!?神託を受けた勇者じゃな!?」
そそくさと残りも食べ終えて急ぎ構える魔王
が!?
そんな魔王の姿は幼女
しかもかなり可愛らしい。角とかは生えていたが銀髪でツインテール。真っ赤な瞳。かなり露出があり極端に布が少なくおへそとかも出ていた。しかし、イヤらしさはまったくなかった。むしろ魔王の容姿と相まってとてつもなく可愛らしかった
そんな魔王。こちらを睨んでいるがそれも可愛らしかった
「ふふふ、まだ完全覚醒していないがちょ……」
ぐぅ~~
「コホン。よくきたな勇………」
ぐぅ~~
話の途中で2回もお腹をならした魔王
ただでさえ可愛らしいのだか恥ずかしく赤面させている姿はさらに可愛らしかった
「あ~取り敢えず何かたべましょうか」
「う、うむ、そうだな…」
オレの提案で一時休戦が決定した
そして魔王の案内で台所に向かう事となった。台所に着くと置いてあった冷蔵庫を開け中を確認すると何もなかった
「え~と、ご飯ちゃんと食べてる?」
「ふ、ふん。魔王はそんな意地汚い者ではないからな」
かなり強がりを言っているが3度目のお腹の音がしたので説得力は皆無だった。すねるように顔を背けてはいるが耳まで赤かった
しかし正直どうしようか悩んだ。料理しようにも食材がない。何かあればよかったのにと思っていたがあることに気がついた
そして
「あ~魔王さん。今から料理するからさっきの場所で待っててくれないかな?」
「む?我は意地汚くはないぞ、だが馳走してくれるなら貰わんわけでもないんだが…」
「なら是非食べていただきたいです」
「そこまで言うなら仕方がない」
魔王はやれやれと言った感じの雰囲気を出していたが、今にもスキップとかしそうな浮かれた感じで台所を後にしたのだった。そんな魔王を見送って
「さて、やりますか」
気合いを入れ直し腕捲りをして手を構え、そして
スキル《食材召喚》発動
瞬く間に台所にあった机の上には、肉、野菜、魚、小麦粉、米、等々たくさんの食材が出現した。初めてスキルを使ってみたがどうやらきちんと発動したようだ
だが思っていた以上に食材が出てしまってどうしようかと思ったが足りないよりマシかと思い直した
そしてオレは己のすべてを出しきる感じで調理を開始した。魔王の好みがわからなかったので和洋中とあらゆる料理を作った
数十分後、ちゃぶ台の上には色とりどりの、多種多様な品が並んでいた。見た目もきれいで匂いだけでうまいのがわかるぐらいだった。オレ的にも自信作ばかりだった
そんな料理が目の前にあるのだ、たまらず魔王が
「なーなー、これ食べてもいいのか?なー?」
魔王はまるで待てをされている子犬のような感じで口調も年相応のそれこそ子供のような感じだった
「遠慮せずどうど」
「いっただっきま~す」
返事と共にすごい勢いで食べ始める魔王
「うおっ……うま!!………なにこれ!!………おいしぃ!!………さいこー!!」
魔王は終始天使のような笑顔で食事をしていてその姿は全く魔王には見えずただの子供にしか見えなかった
そしてかなりの量があったがきれいに平らげてしまった
「いや~こんなに美味しい食事ははじめてだよ」
「お粗末様でした」
満足した魔王。手を投げ出し畳の上に仰向けに寝ていた。そんな魔王を残し使い終わった食器を片付ける事に
すべての洗い物が終え、またちゃぶ台があった部屋に戻ると、座り直して腕組みをして頭を傾げ悩んでいる魔王。そうとう悩んでいるのか時折独り言をボソボソつぶやいていた
しばらく悩んだ末なにかを決めてこちらを見る魔王。その表情は真剣でなにかを決意した顔だった
「な~お主、我の討伐なぞやめて、我の伴侶にならぬか?」
いきなりのプロポーズ
さすがにこれには驚き返す言葉がないが、気にす事なく魔王は話をすすめた
「伴侶となって我に料理を振る舞え、その代わり我の体を好きにしてくれて構わん、もちろんお主が求めるならいくらでも夫婦の営みをしてくれて構わないぞ」
魔王の真剣な表情におそらく本気で言っているのが伝わってきた。正直魔王はとてつもなく美少女でそんな女の子と………
と、思ったがどうしても引っ掛かることがあった
「つまり魔王は食事の心配をしなくなると」
「そ、そんなことはないぞ」
明らかに動揺していた
首がギギギと音がしそうな感じで横を向きならが返事をしていたのでどうやら核心だったようだ
魔王の態度に正直どうしようか考えてしまった。考えていたら魔王が少し怯えた感じで上目遣いで言ってきた
「もしかして我はお主の好みのおなごではなかったのか?」
そんな態度でそんな事を言われればはっきりそうだとか言える男はおらず、しかも相手はかなりかわいい、というか美少女だ。即答で断れる奴なんかいるはずもなかった
なので自分の気持ちと自分が置かれた状況を説明する事にした
「実はオレ……」
自分はきちんとした転生者ではなく、この世界に転生するには魔王を倒さなければならない。だから魔王とは夫婦になれない。そして自分は魔王と夫婦になってもいいかもしれないとは思っていると
「そうか…ならばお主、未来永劫、我と夫婦になる気はあるか?」
「なんだそれ?」
「実は我が死にお主が転生したあと改めて夫婦になる方法があるのだ」
「そんな方法が…」
「《魂の契り》と呼ばれる一種の呪いのような術式があってな、これはお互いの魂を未来永劫縛りつけて引き寄せる魔法なんだが、我が死にお主が転生したらそのそばに我が転生出来るのじゃ、しかも記憶と思いも継承してな」
「ならそれでいいじゃないか?」
「未来永劫、つまりお主が転生してまた死に、生まれ変わってもまた我と夫婦になるのじゃぞ、来世も夫婦、その次もその次も、何度生まれ変わっても一緒になるのじゃぞ」
それこそ呪いだと思ってしまった
「むしろオレが聞きたい。魔王はそこまでしていいと考えているのか?」
「あ……いや……その……我は今までな……人に親切にされたことがないのじゃ……それでその………えぇい!!ここまで言えばわかるじゃろ!?」
最後まで言えず耳まで真っ赤になった魔王。そしてオレは魔王の気持ちがわかり、自分に好意が向けられているのだと自覚した
それならばと
「ま~先の事はわからないし、取り敢えずいいんじゃないか」
「よいのか?ホントによいのか?」
「ああ、構わないさ」
オレの返事に驚いた表情になると今度はゆでダコのように真っ赤になった魔王。そしてコホンと咳払いをして気を取り直すと魔王は指示を出し、お互い向き合ってたっていた
そしてお互い右手の親指に少し傷を作り血を出す
そのまま親指の傷同士をあわせる。すると足元に魔方陣が描かれた
「今ここに我と汝の魂の繋がりを、未来永劫互いを結ぶ契りを、いかなる場合も呼応する思いを、忘れぬ誓いを、我が魂は汝のために、汝の魂は我のために、交じり合う魂を、ここに宣言する、我と汝に魂の契りを」
呪文をいい終えたとたんに重ねた親指の間から衝撃波みたいなものが飛び出し、足下の魔方陣は淡くひかり出すとそのまま消えた。
そしてなんだか胸が締め付けられたような感覚があった。しかしそれは決して嫌なものではなくむしろ暖かな感じさえした
「うむ、どうやら無事に完了したようだな、旦那様」
急に旦那様とか言われ驚く、しかもすごい笑顔だったのだ。むしろこっちが動揺して恥ずかしくなってしまった
「そ、そうか、それは良かったな魔王」
「む、もう夫婦なのだから名前で呼んだらどうじゃ」
「それもそうか……って、そういえばお互い名乗ってなかったような?」
「んっ、そういえばそうじゃったな、と言うかお互い名も知らぬ者と夫婦になるとか滑稽じゃな」
「あはは、そうだね、うん、オレはタケルだ」
「我は魔王、リリィシェル=ムーゲント=バルズ=ウィルスパ、リリィと呼んでくれ」
「あぁ、これからよろしくな、リリィ」
「こちらこそよろしく頼む、旦那様」
こうしてオレはリリィ魂の契りを交わし夫婦となった。リリィは笑顔だか顔を赤くして恥ずかしそうだったが、咳払いをして身を引き締めると
「さて、我はさっさと死ぬとしよう。イヤな事は先に済ませておかなければな。後回しにして死にづらくなってはかなわん」
「それも……そうか………」
「そう寂しそうにするでない旦那様、ささやかな別れ、すぐに会えるわ」
そう告げるとオレから距離をとりはじめるリリィ、しかしリリィも強がってはいるもののやはり寂しそうな顔をしていた
すると何かに気づきオレに近づくリリィ、そして手招きして
「なぁ、旦那様、少し顔を近づけてくれんか?」
一体どうしたのだろうとリリィに言われまだ何かあるのかとリリィに顔を近づけたとたん首に手をまわされそのまま口づけをされた
突然の事だったので何がおきたかわからなかったが離そうとしないリリィ。そのまま長い時間キスをしていたらゆっくり離れていくリリィ
「ふ、夫婦なのだから、ち、誓いの口づけぐらいしなくてはな…」
もう頭から湯気が出るぐらい顔を真っ赤にして耳まで赤かったリリィ。しかもモジモジしていてかなり可愛らしい。こっちとしてもいきなりの事でおそらく真っ赤になっていただろう
「コホン、それでは今度こそしばしのお別れだな」
咳払いをして、改めて距離をとるリリィ
そしてなにやら呪文を唱えた。唱え終えたとたんにリリィの姿がゆっくり消えていき半透明になったぐらいでいきなりパッと砕けたようにひかりの粒になって完全に消えた。消えるまで終始笑顔だったリリィの姿が心に刺さった
この瞬間、この世界から魔王は消滅した
「これでよかったのか?」
改めて思い直し考えた
すると
「お疲れ様」
突如神様登場
しかしかなり微妙な顔をしていた
「取り敢えず魔王は倒した。これでオレも転生出来るんだよな」
「あーそれなんだがちょっと事情が変わって転生出来なくなった」
「なっ!!てめぇ!!ふざけるな!!!!」
神様の胸ぐらを掴み殴りかかろうとした。事情はどうあれ少女1人を死なせて自分が転生するつもりが出来ない。それではリリィの死は無駄死にではないかと激怒した
「ま~待て、決して悪いだけではないんだよ」
「どういう意味だ?」
そこから神様が事情を説明してきた
まずこのままオレがこの世界に転生するとリリィもこの世界に転生する。するとリリィはまた魔王とした覚醒してしまう。これはリリィが何度生まれ変わっても変わらない
だが別の世界に転生すると魔王として覚醒しないと、この世界にとってリリィの魂は負の象徴らしい。そして今までリリィの魂はこの世界から移動させる事が出来なかったのだ
しかし今はオレと魂の契りを交わしているのでオレが別の世界に転生すればリリィもそちらに転生する
そうすればリリィは魔王ではなく1人の少女として転生するのだと。だからオレには別の世界に転生してもらいたいのだと
「くそっ、そんなんアリかよ…」
かなりなげやりになりあまりの理不尽さに納得できなかった。しかし言われたとうりリリィには普通の女の子とした転生してもらいたいと思ったオレはやり場のない怒りを覚えていた
「取り敢えず元の場所に移動させるけどいいかな」
「………あぁ、わかった」
(すまない、リリィ。もうしばらく転生は先になるから、それまで待っていてくれ。出来るだけ早くなんとかするから…)
リリィとすぐ会えると思っていたオレは心でリリィに謝罪をしてこの世界から去ったのだった