修業?えぇ修業です!
朝食を済ませ、後片付けを済ませるとシュリを含めた4人と別行動をとる事となった
シュリに教えてもらって書庫に来たのだが、書庫はあり得ないほど広かった。一体何冊所蔵されているのか数える気すらおきず探すだけで苦労しそうで気落ちしたのだが迷うことなく料理の本を見つけられた
なぜなら看板がつけられここには何の本があるかすぐにわかったからである
取り敢えず《食事、料理》と書かれた看板がある本棚のところに着き探し始めたのだか何冊かペラペラとめくって見てみたら《はじめての料理、初級編》と書かれた本を手に取ってみたらその本はアタリだった
とにかく事細かく、そして丁寧に説明が書かれ、さらには比較的作るのも簡単な料理を中心に書かれているのだった
(これを読めば取り敢えずなんとかなるな)
そう思い、改めての本の表紙を見て固まる。
そして猛ダッシュでみんなのところに向かい
そして
「こんなん書けるなら指導しろよ!!!」
《はじめての料理、初級編》著者シュリ
「あはは、私、戦闘の指導はそれなりだけど、そっち方面の指導はからきしなんだよね~」
悪びれもなく手を振りながら笑顔であっけらかんと告げてきた
一緒にいた3人はこちらに背を向けて関わらないようしていた。もう完全にオレに食事の事は任せたようだった
シュリの指導放棄と3人の態度に涙ながらに厨房に向かう事となった
厨房に着くとまずは何より昼食を何とかしなくてはと思った。そこで本の中に書かれている中で1番楽な物を探した
探した結果昼食は野菜炒めに決定した。野菜を切って焼いて味付けするだけなので簡単だろと、手始めとしてはナイスチョイスと思っていたのだが
結論
そんなに甘くなかった…
まず包丁がうまく扱えなかった
相手は刃物
いくら学校で習ったとはいえ普段使わないからうまく扱えず、手を切らないようにビビりながら野菜を切る事に…当然野菜は不揃い
それでもなんとかなったしと思っていたが炒めて味付けしたら野菜が不揃いで火が通っておらず半生状態のものと焼け焦げたところとまばらになってしまった
そして味付けも本のとうりやったつもりだか分量が違っていてかなりの薄味。まるで味がしなかった
結局お昼過ぎて少しみんなを待たせて野菜炒めは完成した。それでもなんとか味のついた食べられる物しか作れなかった。
しかし口には出さなかったがみんなの表情を見ればおいしくないのはマル分かりでかなり凹んでしまった
そのあとは悪戦苦闘して夕食を作りなんとか食べられる物が出来たが、品数が1品しか作れず不満そうな表情をみんなしていた
夕食後、食器を片付けて部屋に行く
(くそ…料理ってこんな難しいのかよ)
ある程度苦労する事はわかっていたが想像以上に苦労してしまい、翌日からオレはひたすら料理をした
本に書かれている品を片っ端から作った。失敗は多かったが食べられない事はなかったのでなんとかなった。ただみんなは相変わらず微妙な表情をしていたが文句は言わせなかった
そんなこんなで2週間ぶっ続けでやればまともな物も作れるようになっていて、初めの頃は一品しかなかった食事は今や複数の品が並ぶようになっていた。
味の方もはっきり不味いとは言えない感じでたまになら美味しいと思える物を作れるようになっていた。さすがにお金を取れるレベルにはならなかったが自分で食べる分には問題ないレベルだ
そんな風に料理に対してだいぶ自信がついていたのだったが
新たなる問題が発覚
それは朝食が出来てユズキを呼びに行ったさいにわかった。いつもどうり扉を叩いて起こそうとしたのだが返事がなく、まだ寝てると思って部屋に入った時にわかった
部屋に入るとユズキは丁度着替えをしていて全裸姿だった事が問題
……ではなく
部屋の中に溢れていたすでに着終えて汚れたままの服が散乱していた事だった
ちなみに部屋に突撃したオレはユズキのあられもない姿に見とれてしっかり凝視してしまった。それに対してユズキは少し固まったあと全裸を隠そうともせずオレに近づいて行き思いっきりぶん殴ってきてオレは気絶させられた
「洗濯しなきゃ…」
自分の部屋を見てため息をつく
そう、ユズキは散乱させていたが自分はそれなりに片付けていたしそんなに汚れなかったので同じ服ばかり着ていて気がつかなかったが、相当洗濯物が溜まっていた。
しかも誰1人洗濯していなかったので量も半端なかった。ちなみに服はクローゼットの中になん十着もありそれを好き勝手着ていたのだった。シュリもクローゼットの中の服は好きに着ていいと言っていたのでオレを含めみんなそうしていたようだった
洗濯をしなくてはならなくなったのだが、ユズキに、私の裸見たのだからお詫びにやってよ、と言われそれに続くように、ならついでだからとやってくれと頼まれたのだった
幸い洗濯機が存在していたのでなんとかなると思ったが……
大間違いだった
まず服の種類で分けて洗わないといけない事を知った。大量に洗濯物があったのでまとめて洗濯機にぶちこんで洗ってみたら色が移ってしまったのである
これにはイリスが色が移った事に号泣していた
また適当にぶちこんだので痛みやすい物があったらしくシワになったりほつれたりした物あったのだ
これにもイリスが号泣した
そして、最も重要な問題
それはなんと3人とも下着も普通に洗濯してと渡してきたのだ
これには土下座で勘弁してくれと、下着だけは自分達で洗ってくれと懇願してなんとか自分達で洗濯してもらうようになった
「ホントは嬉しいくせに」
そんな感じでシュリがからかってきた時は本気で殴りたくなった
確かに健全な男の子ですからちょっと、ホントにちょっとだけ役得と思ったが良心と自分はそんな変態ではないと思い直したのである
そんな訳で下着以外はオレが洗濯をする事となった。しかもちゃんと干したらたたんでそれぞれの籠に入れて置いておくのだ
そして料理、洗濯とやれば当然掃除もしなくてはと思う
洗濯をするようになって、すでにここに来て3週間がたちそれなりにほこりが溜まっていたし、ユズキの部屋はひどい有り様だった
イリスの部屋は物が多いと言った感じで、逆にノアは何もないと言った感じの部屋だった
ちなみに女性陣の部屋には色々物があったがすべてシュリがどことなく持ってきていたのである。言えば持ってきてくれるといった感じである。しかしオレが頼むとイヤとか無理とか言って一切聞いてくれない
そしてその事に不満をもち何でオレだけ拒否るのと聞いてみたら
「いや、女の子は色々要りようだから」
さも当たり前のように言ってきたのである。そんな差別に納得など出来なかったがいくら言っても無駄だったので早々に諦めてしまった
そして女性陣の部屋の掃除だが、みんながきちんと出掛けたのを確認して部屋に向かい、さらに部屋に入るときは慎重になって入って掃除するのだ。これはまた気づかぬうちに部屋に戻っていて着替え中とかに遭遇しないためだ
また殴られるのはイヤだからな…
やることが増えて世話しなく料理、洗濯、掃除とすれば気がつけばここに来て1ヶ月ぐらい過ぎていた
そんなある時不意にシュリが
「お、タケル君、称号とジョブ獲得してるね」
ニヤニヤしながら笑いを堪えている感じでそんな事を言ってきたのだ
正直、何の事やらと言った感じでだった
「取り敢えず確認してみなよ」
「どうやって確認すればいいんですか?」
「こう、なんと言うか、ゲームとかでメニューを出す感じ」
訳がわからないが想像でやってみることにした。すると目の前にコマンドウインドが現れて、そのまま手で触れようとするがすり抜けた
「あ~頭の中で操作するんだよ」
相変わらず笑いを堪えた様子で説明してきて言われたとうり想像で動かしてみるとカーソルが動いた
なので取り敢えずステータス画面を開き獲得した物を確認して見ることにしたのだったのだが
称号《忠実なる使用人》
(は?なんだこれ?)
獲得ジョブ《専業主夫》
「なんだこれぇぇぇぇ!?!?」
あまりの事に絶叫した。
シュリは我慢出来なかったのか大爆笑していた
「あははは、ひーお腹いたい、そりゃここに来て家事しかしてないんだもん。そりゃそうなるよ」
確かにここに来てやったことと言えば家事しかしていない。しかしそれは仕方がなかった事で全くもって不本意である。そしてある意味頑張ったから獲得したのだからそんな笑わなくてもいいのではと泣きたくなった
「まっ、気長に色々頑張ろ」
シュリの慰めてきたが、このままではいけないと思った
しかし戦闘の修業をすれば料理、洗濯、掃除と家事がおろそかになってしまう事は目に見えていた。
それはさすがに不味いと思いどうするべきか考え、そして決意とともに行動に出た
時はたちここに来てすでに2ヶ月過ぎた頃
「そろそろいいだろ…」
オレは自分のステータスを確認した
ジョブ《専業主夫》レベル3
あれからとてつもなく家事をこなした。料理はもうすでに本を見なくても何品作れるようになっていたし、洗濯はきちんと分けて洗えるようになっていた。掃除は多少不安があるがそこまで文句が言われないレベルだった
その結果ある程度1日の中で時間が取れるようになっていた
と言うか空き時間を作った
それは当然戦闘のスキルを獲得するためである。そもそもそのためにここにいるのだから
「ホント、頑張ったねタケル君」
シュリが本心で誉めてくれている。
「ではシュリさん、こっちの修業をお願いします」
意気込みシュリに頼み、いよいよオレの戦闘の修業が始まった
そしてオレは期待した
家事が2ヶ月ちょいでそれなりに出来たのだ。きっと戦闘の方もそれなりに上達するだろうと。それこそ頑張り次第で無双が出来るほど強くなれるのではと
さらには指導役のシュリも家事とかはうまく指導できないけど戦闘の指導は任せろ的な感じでますます期待した
教わる側も教える側も気合い十分。さらには時間もたんまりある状態。自分で強くならないといけないのは少し不満があったが今はそんなことはもうどうでもいい感じになっていた
そしてここからオレの真の物語が始まったのだと確信したのだった